魔都! そこは混沌が秩序を凌駕する街。 幻想が現実を食い散らし、 光が闇によって消えて失せる場所。 ただし―――確固たる秩序は、より明確で、単純な形で存在している。 天を摩る楼閣、摩天楼という。 なればそれは、天に近づかんとする意志であろう。 では、試みに問おう。 摩天楼の地下は―――光と闇、どちらに在ろうとする意志なのだろうか? 人を、命を疎外するがごとく掃き清められた薄暗い一室に、人型が、三つ。 二つの魂はこの世に生まれ、残る一つは、望まれ、作られた。 一人は肉。一人は鋼。一人は混じり物。二人は女、一人はどちらでもない。 「……ユニオンのご推薦とはいえ、アタシは賛成できませんよ、少佐」 「機械人形だから、とかそういう提案は却下な、コウタニ」 後ろに立つサイボーグが、椅子に座った女に話しかけている。 議題は、彼女らの眼前にある……黒塗りの甲冑について。 「魂魄甲冑」(ゴーストインザシェル)。 魂、精神、意識、思考パターン。呼び名が数ある「そういうもの」を直接機械の中に封じた飛び切りの兵器。 魂は肉体に沿ってありようを変え、肉体は魂の求めに応ずる。 そしてその魂に刻印された至上なる絶対命令――「勝利せよ」 霊と肉は婚姻し、無限に成長を続け、終には唯一者にすら並ぶだろう。 「制式化とか実戦配備は、私も考えていない。ただ……演習相手としちゃあ、もってこいだろ?」 「勘弁してくださいよ少佐。『魔都』での作戦行動、本気でやるつもりですか?」 「悪いかよコウタニ」 「本気ですか。何が起こっても知りませんよ」 女は、サイボーグの危惧に答えない。 「わかりました……調整はタカハシにやってもらいます」 「お、コウタニ。オトコ呼び出すとはやるね?このこの」 「少佐。本っ気で怒りますよ」 「はっはっは、照れるな。維持費の問題だが……何か意見はあるか、コウタニ」 「……手っ取り早く……裏試合でも開きますか。ジェリコ警備名義で」 「へえ?」 「ここの情報屋に色々流して、こいつと戦わせる。勝ったら『総軍』で雇う。『魂魄甲冑』の名はそれなりに知られてますから、スカウトが断られても名誉にゃなりますよ」 かくして、この物語は幕を開ける。 魔都物語 シナリオ「Big Fight!」 シナリオ概要:無限大の進化を繰り返す超兵器「魂魄甲冑」。 その実験場として地下闘技場「闘技墳墓」で開催された模擬戦闘大会「ビッグファイト」 古今東西。 あらゆる英雄譚に共通する要素。 それは、自らより巨大なものを倒すこと。 今宵、汝ら英雄となるべし―――。 魔都物語「BIG-FIGHT!」 状況を提示する。 あなた方はどこかの愚者がやらかした愚かな実験で巨大化した究極自律兵器「魂魄甲冑」を撃破しなくてはならない。 もし成し得なければ、魔都と成り果てた新宿はおろか、世界そのものが破滅するだろう。 健闘を祈る。 ■PC導入枠 導入枠1:「墳墓闘技場」参加者(目的のために複数枠可能か?) あなたは新宿で勢いを増している警備会社「ジェリコ警備」が開催した戦闘競技大会、「ビッグファイト」に参加した。 あなたにとって、この一戦は重要な戦いとなるはずだった。 しかし、その悲願は果たされることはなかった。あなたの闘いが始まる前に、いずこからともなくあの巨大な影が乱入したのだ。 そして、君の意識が遠のいていった。 導入枠2:「総軍」からの依頼 最近、新宿のあちこちが壊れ始めている。そんな中、あなたは一人の青年に出会う。 「総軍」術式武官、高橋と名乗る青年が現れる。 「倒していただきたいものがあります――」 導入枠3:迷い込んだ先 ふと、目が覚めると。君は見知らぬ場所にいた。いや――ここは。破壊された新宿だ。 そして。遠くには、さらに町を破壊する巨人の姿が見えた。 ■シーン:導入 基本的に、「PC導入枠」に書かれている内容の描写が主なものとなります。 魂魄甲冑によって、PCたちは次元の壁を越えるのです。 ■シーン:邂逅 PCが合流し、魂魄甲冑に関する情報収集その他を行います。 この時点において一度戦闘を行い、最強であるはずのPCですら一筋縄ではいかない、という演出を加えるのもよいでしょう。 ■シーン:狂演 最終決戦です。巨人を屠り、怪獣を打ち倒してください。 ■シーン:終幕 この物語を締めくくるに、相応しい一幕を。 ■作成者からGMへ ・このシナリオについて。 敵を倒すだけ、の練習用シナリオです。 GMが演出するべきは、「魂魄甲冑」の絶望的な巨大さと、無限の進化という絶望的な戦力です。 そして、それらを打破しうる魔都物語のPCの強さを認識させることです。 ・「破壊された新宿」について。 筆者は「『総軍』魔術武官・タカハシが、現実の新宿への影響を遮断するために構築した別位相の世界である」と想定しています。 ただし、これは基礎設定であって、本当に並行世界なのかもしれませんし、あるいは「すでに破壊されてしまった」新宿の未来なのかもしれません。運命・運切の材料として活用してください。 ・魂魄甲冑に関する指針 PCの作成と同じ手順で作成し、種族は「魂魄甲冑」とすること。 「種族:魂魄甲冑」は無限大の進化能力と武装の無限創出を内包しています。 ただし、同一演出による行動は見切りの対象となりやすいので注意が必要となります。 また、PCの攻撃をコピーして用いる(そのままではなく、能力値や)、見切り演出を頻発することでより説得力が増すでしょう。