(Ponko)   (Ponko) 【クー】「…ガラじゃあねェんだがなァ…」ヒュンヒュンと槍が空を切る音だけが響く。時折中空に赤いラインが刻まれ、無手ではないことが伺える。大公の森、言ってみれば治外法権の場。生温い空気と違い、殺伐とした獣の機が流れるここは、正直、居心地がいい。その気に当てられたか、珍しく訓練…というほどでもない、ただの身体ならしか。つまり寝てなかった。 (Ponko) トン…と眼前の大樹へと突立て、それを足掛かりに一際太い枝へと上り、背を預け。特に面白くもなさそうに遠方へと目をやる。 (Ponko) 別段疲れたわけでもない。ただ、ひとつ、いや二つか。気配を感じたため…一人の時間を邪魔されぬよう、やり過ごそうと考えただけかもしれない。 (Ponko) 樹にもたれ、目を閉じ… (Ponko) 【クー】「…チ、水を差されてしらけちまったぜ…。」別に続けてりゃいいようなものの… (Ponko) 数秒後には愚痴は、寝息へと姿を変えていた。 (Ponko)   (Ponko) やっぱり寝た。 (Ponko)   (Ponko) (わふーっ (tuka-neko) 【クロエ】「……」がさがさと下草を踏み分けながら森の中を歩むのは、一人の小柄な少女。腰まで伸びた金髪はポニーテールに結い、黒のパーカーにスリムジーンズ、スニーカーという軽装で、後に大きなセントバーナード犬を続かせながら歩く。……森に用事がある、というわけではないのだが……これまでは気にならなかった人ごみがどうにも苦手、になってしまって、人がいない場所を探しての事、である、が……「わふっ……」「……どうか、したのか?クー」突如何かを知らせるように吠えた犬の視線を追って上を見上げれば……どこかで見たような姿を梢の間に発見してしまう。 (Ponko) 【クー】「…Zzz。」静かに寝息を立て、まるでその存在さえ目に入っていないかのように(現に目は閉じてるが)眠り込む。…ものの30秒前までは暴れていたというのに、のびたくんもびっくりである。 それでも犬の声が耳障りなのか、やや眉をひそめ… けど寝てた。 (tuka-neko) 【クロエ】「なんだ、クーじゃないか……珍しいな?てっきりあっちの方にいるのだと思っていたが」「……わふ?」多分寝ているだろうし返事が返ってくる、とは思ってはいなかったのだが、予想もしていなかったところから返事がきた。呼ばれたのだと勘違いした犬が、再び息を吐くような声で鳴いて…「……ああ、オマエじゃなくて、アイツの事だよ。アイツも……というよりは、オマエの名前はアイツから貰った、からな?」と、そう言いながらも……クー(人)の寝ているほぼ真下、樹に背を預けるように座り込む。そうすれば犬もその傍らに寄り添うように蹲り、主の脚を枕に眠り始めて。 (Ponko) 【クー】「チクワ娘の野郎…。…自分の目で確かめるまでは信じねえことにしておいてやったが…そうか、そうか俺様は犬か。犬だな、あァ、そこにいるのは明らかにまぎれもなく犬だ。」ふと気づけば頭上に気配はなく、それは眼前に。不機嫌そうな顔ではなく…この上なくその表情は、笑顔に満ちていた。やや、一部が引きつってるように見えるのは気のせいだろうか。 (tuka-neko) 【クロエ】「……おや、おはよう、クー……………………どうか、したのか?」普段クーが浮かべる類のものではない笑み、に……どこか不穏なモノを感じ取ってしまった。僅かに引きつったような声で問いかけは、するが……というか、チクワ娘?一体誰の事なのだろうか。目の前の男が怒っている、であろう理由に関しては……なんとなく判らないでもないのだが。……因みに犬の方はといえば、主の窮地だというのに、まるきりおきる気配はなかったりする。 (Ponko) 【クー】「いや…?ガキンチョ時代のお前が俺様にどれだけ入れ込んでたかの結晶体を見せてもらったようなモンだよなァ。」 やれやれと大仰に肩をすくめ 「…何の嫌がらせだあァコラ?」 犬呼ばわりか、そうか…ああ、そうですか。さらには関係ない時にまで呼ばれて音が鳴るんだぞ、これを一体どうしてくれる (tuka-neko) 【クロエ】「……嫌がらせのつもりは、ないぞ。母犬も兄弟も、皆難産で死んでしまったから……強くなって欲しいと願って、兄や私が一番好きだった英雄の名前を貰った、んじゃないか……むう、言っておくが今から名前を変えろ、というのはもう無理だからな?」緩やかに犬の頭を撫でながらも、クーをまっすぐ見上げてそう言う。まだ赤ん坊の頃なら、或いは生きていればまだしも。今のこの犬は……要するに夢が形を持って現れたものである。卓越した夢使い (tuka-neko) ならどうにかできる、かも知れないが、そんなのは到底無理。 (Ponko) 【クー】「…なんでよりによって犬だ。犬じゃなくても良いだろうが…なんで犬だ。」ぶつくさと文句は消えず 「俺様自身がそう呼ばれるのが好きじゃないってことくらい知ってるだろうが…そんなにお兄様もお前自身も好きだった…ならよ。」あえて過去形の言葉をそのまま使い 「…なんだかよくしらねえが…フっきれたか?」 (tuka-neko) 【クロエ】「……因みにこの子……に、名前をつけたのは、11年くらい前、なんだが、な……」と、かりこりと頬を掻きつつ、小さなため息を一つ。その後で小さく、聞こえないくらいに小さく未だにあこがれてるなんて本人の目の前で言えるか、などと呟いて「……ふっきれた、って何が、だ?」 (Ponko) 【クー】「はっ…」何に反応したのか、鼻で笑い…視線を下ろす。クロエに、そして順に犬へと目をやり 「ソレ。お前の過去の遺物なんだろ?過去から目を背け…てたわけじゃねえが、復讐一本しか見えてなかった奴が、過去を髣髴するもの連れ歩いてるってこたァ…乗り越えたか、そん位しか思いあたらねェ。んー推察ってほどのモンでもないな…見りゃわかることだしな。」 (tuka-neko) 【クロエ】「……まあ、な。ついこの間……本当に神出鬼没な奴、だったが……現れて、な。ユーキやヒカリ、セルヴィスの手を借りて……倒した。この子は……私の悪夢、になっていたんだよ。ずっと忘れてしまっていた。寂しがっていたんだ……だから……」そこでふと、言葉を途切れさせる。寂しかったのは、果たして犬のクーだけ、だったのだろうか?「……私も寂しかった。だから……態々、呼び出してしまったんだ……というか、余り見るな。着慣れてなくて恥ずかしいんだからっ」 (Ponko) 【クー】「あァ?今までが異常。平凡に戻ったんだろ?だったら…なんか恥ずかしがることあんのか?…そうかそうか自分の事をろくに話そうともしなかったのがねぇ…女になったって感じがするな。」 クク、と喉の奥で笑い「贅沢な女だチクワ娘にヒカリ?それにセルヴィスねぇ…他にもまだいそうだが…そんだけ大勢に囲まれて寂しい、ね。とな贅沢…や。欲張りになったもんだぜ。」 (tuka-neko) 【クロエ】「っ……うー……ズボンは身体のラインが出るしスカートは生地が薄いしで……うー」元々私服の一つも無く一年中修道衣で過ごしてきた、のだ。やっぱり違和感は拭えないし、その違和感が気恥ずかしさとして出てしまう「……欲張り……なのか?……ぅー……“大切”な家族だったんだっ……だから、一緒に暮らすことが出来なかった分まで、その……………………チクワ娘……って、もしかしてユーキの事なのか?」言い訳デモするように視線を彷徨 (tuka-neko) わせながら言葉を紡いで……ふと、何かを思い至ったように、首を傾げる。一体誰のことかと思えば……というか、そもそもチクワというものになじみが薄いせいで、何故そう言う渾名になっているのかが、わからない…… (Ponko) 【クー】「凹凸がない上に中が空洞で音が響くだろう。…笛、とでもいえばわかるか?ま…」 言葉を切り「話そらすな。」切って捨てた「…わざわざ言うこともないだろうが…過去は取り戻せない。失った時間は失ったままだ。前にチクワに言ったが…転生した奴は確かにそいつの前世の記憶を持ってるだろうさ。意識も、業も。が…ソレはすでに生まれ変わった別の人間だ。その犬も、過去の亡霊だ、お前の執着から作られた、な。」 腕を組みなおし、「ま、俺様の (Ponko) 場合転生じゃなくてそのまま呼び出されたわけで俺様は俺様であって俺様な分けだ」、なんかアタイみたいになってきたぞ (tuka-neko) 【クロエ】「……余りと言えば余りな命名法だな……」と、流石にこう、こめかみに指を押し当てつつ「……わかっては、いる、んだがな……人間は……いや、私は、というべきか。そんなに、強くはない。思い出に縋って、思い出を術式に組み込んでしまう程に、な……オマエ、の様にこの子がそのままでいられるわけはない、そんな事くらいは……」次第に言い募る声はかすれて消えて。もふりとした手触りの良い毛並みを撫でる音にまでかき消されるほどになってしまう。 (Ponko) 【クー】「そのままでいる、いないじゃねぇよ…。悪い言い方すりゃあ、それは罪滅ぼしじゃなくてな、罪を重ねてるだけなんだ。今またお前の都合で…ってな。…はぁ、と肩を落として息をつき「前々から思ってたが…お前は説教くらいに俺様のところに来てんのか?いい趣味とは思えねぇぞ。」」 (tuka-neko) 【クロエ】「………………別に、そう言うつもりじゃ……今日は、その、人目を避けようとしたら偶々クーが寝ているところに行き遭っただけで…………我侭だ、と言うのも、わかって……ぅー……正確に言うならこの子は……私が生み出した、わけではなくもとの……ぅー」言い訳がましいと自分でも思っているのだろう。言葉の途中で口篭ってしまう。大きな声で叫びだしたくなってしまう、ものの……そんなことをすれば気持ちよさそうに寝入っている犬を起こしかねないわけで…… (Ponko) 【クー】「なんだァ…?言ってみろよ?自分がわがままってわかってんだろ…なら、我侭らしくぶつけてみな。」 (tuka-neko) 【クロエ】「っ……詳しい事はわからない。単なる人の受け売り、だがっ……この子は本物の……」一瞬口篭る、のは……やはり目の前の男への遠慮、ではある。あるのだが……他の言い方が結局思いつかず「犬のクーの……残留思念、なんだそうだ……」 (Ponko) 【クー】「幽霊とかの同類か?…成仏させてやりゃあいいようなモンによ…。…ああ。そうか…お前。」犬のそばにしゃがみこんだ 「死んでも傍にいるよ…とかそういう類のか。」急に怖くなったぞおい 「そんな事言うのにいちいち口ごもるんじゃねえよ。」 (tuka-neko) 【クロエ】「……寂しかったんだよ。今更言っても仕方がない事ではるが、私がしっかりしていれば、この子が誰もいなくなってしまった場所に取り残されてしまうことはなかった……寂しさの余り、魔に引き寄せられる事もなかった、だろうしな」話しかけられれば僅かに顔を上げクーの顔を覗きこむ犬の首筋を掻いてやりながらそう言って「……そんな事言ったって……言い辛いものは言い辛いんだ……が?」 (Ponko) 【クー】「ソレもお前の責任。残したのもそうなら、今更引っ張り出したのも、な。…どうせ周りの連中は散々甘やかしてるんだろうが…あげくに喧嘩なり、口論なりになる様が簡単に想像できるぜ。…ま、女にしてもらったんなら、より一層甘やかしてもらいな。」 (tuka-neko) 【クロエ】「……わかって……る……?……女に……と、言うのはどう言う、意味だ?」そっち方面には非常に、疎い、のだ。当然そう言う言い方では意味が判るはずも無く……くきりと首を傾げて問い直してしまう。女に、とは言っても、自分は生まれた時から女、なのだが……と、見当はずれなことを呟きながら。 (Ponko) 【クー】「あァ?マジでいってんのかお前は。」呆れたように首をかしげ…「抱かれたんだろ?男に。」 (tuka-neko) 【クロエ】「……は……?え、と…………ぇ?それは、ど……どういう、いみで……?」段々と、言葉の意味を理解し始めたのか白い肌が赤く染まり始める。……軽い意味、でなら……確かにそうとも言えるのだが。多分この場合は……意味がチガウ…… (Ponko) 【クー】「なんだ…そこまでお子様か…?」横目でじろりと見やり…「クロエ良い事を教えてやる。憧憬と恋愛感情ってのはな…似てるようでまるで違う。似てるようだからこそ変な誤解をするような連中も多いが。似てるようでそれは正反対のものだ、同一には…まずなりえない。9割9分、お前がガキの頃から描いてるのは前者だよ。…だからこそ幻滅しただろ?」ククっと意地悪げに笑い「ご本人様と対峙してよ。」クックっと何が面白いのか笑い続け…「なぁ?」つい、と犬の鼻の頭をつつき (tuka-neko) 【クロエ】「……そんな事は……判っている……っ恋愛感情がどう言うものかというのは、知らないがな……っ」思わずふい、とそっぽを向いてしまう。流石にその当たりを混同してしまうような事は、ない「……幻滅というか、ぅー……別に憧憬が消えうせたわけではないのだが……っ」そう、それは……恋愛感情ではありえない、はずだ。話に聞くようなドキドキとした感覚もないし話していて気恥ずかしくも無い……「……って、それじゃあまるで私がディルクに恋愛感情を持っている、みたいじゃないかっ!?」つい先日の一件を思い出して、その時の見事な自分のうろたえっぷりを思い出して、そう叫んでしまう。……主の狼狽はそっちのけで、犬はといえば鼻先をつつく指をべろりと舐めていたりする。 (Ponko) 【クー】「正直になっていいんじゃねぇか?なァ?犬、正直なご主人様が良いよなぁ?ま…どこまで入れ込むかは知らんがね。 うちのご主人様は…あれはあれで素直で困るんだが…まっすぐ過ぎるってのもな」 (tuka-neko) 【クロエ】「な、何が、正直だってっ……!?リディアはいい子じゃないかっ……ぁ、ぅ……そんな、こと、言ったって……わからないのに、ぅー……確かに、昨日、その、ぅー……」思わず首筋――以前は執拗に隠していた場所とは反対側――に触れながら、犬が頭を上げたのをいい事にじたばたと脚をばたつかせる「確かに、その、ぅー、他の誰かと話しているときみたいに落ち着いていられなかったし、抱きしめられたときも変なとこ触られたときも、その、いつもなら殴ってたのに動けなかったし、だからといって………………ぁ……」いつもの如くの盛大な自爆失言に気がついて……凍りつく。 (Ponko) 【クー】「確か…(ディルクと呼ばれた相手の名を辿る。…。…男の名前は覚えていなかった、残念。神の声が、手の速い男だといった、成る程成る程)…手の早い男なら、せいぜい他の女に目移りさせないようにするんだな。夫婦喧嘩はお前も食うなよー…腹壊すぞ。」ハハハ、と犬に話しかけ「ああ。良い娘だな。だからこそ汚れ役が要るだろ。」あっさりと言い捨てた  (tuka-neko) 【クロエ】「な、ぅ?!ど……どーせアイツはっ……誰にだって甘い言葉を囁いて……ぅ、ぅー!というか何が夫婦喧嘩だ?!ってクーがいつの間にかクーに懐いてるし?!」クーの台詞に……頬の赤みの意味合いが一瞬で塗り替えられる。浮かんできたのは、なんというか怒りとやるせなさ。明らかに嫉妬、であり……「っ……オマエもオマエで……過保護、だなっ……」元々人懐っこくはあったものの、あっさりとクーに懐いてしまった犬を見て……思わず、深々とため息をついてしまう (Ponko) 【クー】「一夫多妻制ってどこの国だっけか?」あっけらかんととんでもない事を口走りつつ 「別に未練はねぇが…あいつがいないと俺様はこっちに居れないんでね。それに…ま、ちょっと相手が悪い。」ぱ、と手を開き 「綺麗な手じゃねえと届かない言葉もあるってことさ。」 (tuka-neko) 【クロエ】「っ……そもそもアイツが住んでいたのは表界ではないっ!大元はスラブの辺りだろうがっ……!」妙にモヤモヤするキモチに振り回されつつもそう叫んで「……綺麗な手でないと届かない言葉、か……届けるべき相手、が……きちんと歪めずに受け取ってくれれば、良いのだがな……その時々の感情で、言葉と言うのは……簡単に歪むぞ」 (Ponko) 【クー】「はっ。」笑い捨て…「相手が歪んでますからこっちも歪みんで対抗します、じゃ意味がねえんだよ。そんなんじゃ取り戻したモンを素直に喜べねえだろ。過保護にするつもりはねえよ…それがうちのマスターの願いなら、それを叶えてやるだけだ」 (tuka-neko) 【クロエ】「……なんだかんだで似合いという事か、オマエとリディアは……」ふ、と、小さく息を吐く。一頻り叫んでしまえばいったん気は落ち着いたらしく、今は声の調子も随分と落ちつき頬の赤みも引き。不敵……というには聊か迫力の失せた笑みを浮かべて見せる (Ponko) 【クー】「さぁな。」ピン、と前髪を弾き 「覇気の抜けた面しやがって…良い表情になったんじゃないか…?強迫めいたモンはなくなってるしな。」こきこきと首を鳴らし…「じゃあ、昼寝の邪魔だ、そろそろいきな。」…ふ、ぁ…とまたひとつ大あくび (tuka-neko) 【クロエ】「気が抜けた……のは事実、だしな。というかこの時間はまだ人が多い……私も適当に時間をつぶして……ふぁ……っ!?」欠伸、というものは伝染するものかどうか。つられるようにこちらも小さな欠伸をし……さらには犬のクーまでもが、ふぁああっと大きな口を開けて欠伸をして…… (Ponko) 【クー】「…チ。好きにしろ。」樹の引っ掛かりを足場に、先ほどまでの樹上へと移動し… 3秒後、寝息を立てていた (tuka-neko) 【クロエ】「……………………ん……」もふ、とのしかかってくる犬の毛皮が暖かいせいか。こちらも……クーに遅れる事3秒。安らかな寝息を立て始める…… (tuka-neko)   (tuka-neko)