(tuka-neko)   (tuka-neko)   (tuka-neko) 眼の前にはいかにも病院らしい白い扉。その脇には三崎尚也と書かれた札。 (tuka-neko) その光景を睨み付け続けておよそ30分。そろそろ周囲の患者や看護士さんたちの視線が痛くなってきた頃合だ。 (tuka-neko) 無理も無い。さっさと用件を済ませてしまえば、単なる見舞い、の筈なのだ。 (tuka-neko) それなのに、それなのに。 (tuka-neko) 何度も何度もノックを躊躇っているのは、今の自分が見舞うべき相手にとって、ほぼ、限りなく初対面に近いからだ。以前クラスメートでありはしたものの、今の自分の姿は当時とはかけ離れ過ぎている。 (tuka-neko) 以前、夏休みに行われたバーベキューのときにちらと姿を見かけたような気はする、が。それにしたって女の子が一人見舞いに男の所に見舞いに来る、には根拠が薄弱すぎるだろう。 (tuka-neko) ……天宮が見舞いに行くときに頼んでついていけばよかったかも、と思ったところで今更今更後の祭り。 (tuka-neko) はて、さて……マジでそろそろ視線が痛く……いや一部じったり湿った生温い視線も混じり始めたことだし腹をくくるか、と。 (tuka-neko) ぐっと息を詰め渾身の気合を込めてノックをすべく扉に手を伸ばし…………。 (tuka-neko) (きゅー!) (rouge_) 【尚也】「………ん、よっ、ほっ、はっ。  ………あー、いかんな、こりゃ。 重い、やっべェ。」 ベッド脇に持ち込んだウェイトトレーニング用の器具。 なまった身体を取り戻すべく、軽く動かしてはいるのだが、あらゆるものが以前と比べて、若干重く感じる。 あまりよい兆候とはいえない…が、さっさと復帰しなければどうしようもない。  「…っと」  そんなところに聞こえてくるノックの音。  慌てて器具を脇へと仕舞いながら、答える。  「おきてるよ 、適当に入ってきてくれ。」  …とはいえ、誰だろう。  春奈……は今日仕事。  同僚も、ちらほらと着てくれたりはする。  (tuka-neko) 【彰】「っと、えーと、失礼しまーす」恐る恐るといった様子で扉を開け顔をのぞかせるのは、顔立ち体躯はどこからどう見ても中学生かそこらの、ただし身に纏っているのは高校の制服と言った姿の紅い目の女の子。案外元気そうな尚也の姿を見れば、どこかほっとした様な顔をして、ぺこんと頭を下げてから部屋の中に入ってきて。 (rouge_) 【尚也】「………ふむ?」  思わず首を傾げる。  んー……と、首を回して部屋を見回す。  見慣れた天井に見慣れた壁、目覚めてから増え始めた私物。  どう考えても、個室の病室だった。  隣に誰か眠っていてその人の見舞いかとも思ったのだが、そういうことではないようで…  「………ええと、どちらさま…かな? いや、ごめん、僕が忘れてるだけなのかもしれないけど。」  目の前の少女には、とんと覚えはないということだ。  言っておくが、記憶力はそう悪いほうではないはずだ。 綺麗な女の子ならなおさらに。 (tuka-neko) 【彰】「……やっぱわかんねェよなぁ……えーっと、同じクラスの芦谷彰っす」体躯に似合う何とも可愛らしい声とは裏腹の、何とも男っぽい口調で名乗られる名前は、確かに尚也のクラスメートのモノ。ただし、その名前を名乗るべきなのは、一体ナニを食べればそうなるのかといえるような大柄な体躯に赤く染めた髪の目つきの悪い青年だった筈、なのだが…… (rouge_) 【尚也】「ああ、彰かぁ。 そうそうよく来たね、いやあ退屈でさ。 病院だろ?  寝てるしかないんだよホント、さっきまで理夢…ああ、妹着てたんだけど、速攻で帰りやがってもうちょっと久しぶりの兄を構うべきだよなって………」  手を右から左。  おいといて、のポーズ。  「……ばかにするなぁ!? 性別まで偽ってつくうそにしちゃばれすぎだろ!?」  そう。  良くも悪くも、「自分探しの旅人」として有名だった自分に物怖じせずに声をかけてきた人間だ。 芦谷彰という人間は。 それなりに話したこともあれば、遊んだこともあったはずだが…。  断じて、女の子では、無い。 (tuka-neko) 【彰】「……ヒジョーシキと隣り合わせのウィザードの台詞じゃないっスね、尚也センパイ。……いやまー話せば長くなるンすけど、ま、非日常にうっかり迷い込んだ一般人の成れの果て、ってとこで?」かりこりとほっぺたを掻きつつも、仕草だけはそっくりにずかずかと歩いてきて、かばんの中から本屋の袋を取り出して差し出す 「ほい、見舞い品。尚也センパイの好きそーなの選んで来たんでどーぞ」 (rouge_) 【尚也】「……は、今なんつって?」  僕の知る彼は、少なくともイノセントであったわけで………。  …そういえば、夏前からこの方、彼の姿を見ていないのは、気にかかっていたところだった。 行方不明。  気になる単語ながらも、日々の事件に忙殺されているうちに、決戦だのなんだので、うやむやになってしまった案件。  ……よくよく考えれば、あれはそういう兆候、というわけだ。  「……で。  女の子になりました、と。 ……可愛いは可愛いが災難だな。 どう考えても彰好みの女の子じゃないぞ。」 と、今の彰を評しつつ。 自分がウィザードだという子とも理解して、告げているというのなら此方の人間と理解するしかない。 「ん? ああ…ありがと。 …本? なんだろ。」 (tuka-neko) 【彰】「やー、一遍くたばって魔王の甘言に乗って生き返ってみたらこーっスからね。まー、それだけならまだマシじゃぁあったんスけど……あ、ソレ、天宮やいもーとさんには見つからんよーにっ」思い返されるのは、コレまで受けてきたウィザードとしての仕事。というか要するに夢の中でのアレやコレやで。つい、かぁ……と日本人離れして白い頬が真っ赤に茹で上がり「……ああ、そうそう、一応クラスにゃ男の芦谷彰もいるんでそのつもりで覚悟決めといてくださいっ!」此処は病院だというのに、思わず誤魔化すように大声を上げてしまう。 (rouge_) 【尚也】「べりべりべりっと。」  び、と、袋をあけてみせながら、中身を取り出す。 「………『悶絶!緊縛メイド200選!』 『メイドさん、脱がさずイイことしちゃいました(はぁと)』  」  タイトルを読み上げるだけで、意識が別の方向に飛びそうな代物だ。 確かに、これは、見せられない。 うん、マジで。  「………いや、僕の趣味を大体理解してるとはいえるんだけどさ、ちょっとこれ、濃すぎじゃないか? お見舞いとしちゃ。  もっとこう、足りないくらいのエロスで丁度いいぞ、こういうの。 …というか、こんなどぎついの、よくそのカッコで売ってもらえたな…。」  そっと、袋に仕舞いなおしながら改めて彰を見やる。 うん、いい胸だ。 それ以外の発育はちょっと胸に持っていかれている感じだ。 「……よくわからないな、二人にでも分けられた、とか、なんかそういう話…なのか?」 (tuka-neko) 【彰】「まー、その辺はこー、私服でバイクの免許使ってなんとか?一応もー俺18っスから」元の姿ならまだしも今は到底信じられないが「ああ、晶……いもーとが俺探してこっちにかなーり寄って来ちまってたんで、あのおじょーさまだの魔王だのに頼んで、俺の記憶持ったクローンみたいなのを作って貰ったんスよ……って、尚也センパイ、相変わらず巨乳スキーなのかよ……」視線に気付いたのか、慌ててぎゅむっと胸元を隠すように自身を抱きしめる。なんだか、本物の女の子のような仕草だったり。 (rouge_) 【尚也】「あー、なるほどね。 そういう裏技か。 ん……って事は、新しく取り直したのか。 その姿だと、前のも有効にゃならないだろうしな。」  ふむ、と、状況を推察しながら。  「そっちだって、嫌いじゃなかったろ。 寧ろ好きだったと記憶するけどな。 」 本を枕のほうに仕舞いこみつつ。 「そっちも色々大変だったわけだ。 ……ま、こっちのルールも大概複雑だからな。 面倒くさいこともあるけど、それだって必要なことじゃある。 ……まあなんだ、軽い調子できてるから、軽い調子でしか返せないけどよ。 なんつーか、余りある苦労だ。 手伝えることでもありゃ、手伝うよ。」 (tuka-neko) 【彰】「手足短いンで苦労したっすけどねー……いや確かに好きだけど、自分でなるもんじゃねーっスよコレ」夢とはいえ経験が経験だけに、巨乳の娘の気苦労が嫌というほどに判ってしまった。あまり知りたくも無い苦労だった「ま、重苦しくしたってしょーがねェモンの類、だしなぁ、こーゆーのも……何かあったら相談させてもらいまs……ああ、そーいや尚也センパイ。ウィザードの仕事……マトモな仕事ってないンすか?」 (rouge_) 【尚也】「ま……そういう所は、そのままか。」  何だかんだで、割り切りと思い切りのよいやつだったように思う。 とはいえ……今までの自分が無くなるのと、同じことだ、彼のとっている道は。 それでも、今笑っていられる辺りは、素直に尊敬してもいいと感じた。 「マトモな仕事………ねぇ。  そりゃ確かに、たまにフザケタ事件もおきたりはするけど、基本的には世界の危機を救ってるわけだろ。」  ここらあたり、相対する事件に偏りがあったのだろうが、そこまでは推察できなかった。 (tuka-neko) 【彰】「最初俺の姿見たときは流石に泣きそうになったっスけどねー……つーか俺とも同じクラスなわけだし割り切らなきゃやってらんねェし」実際、あの時の小太郎の言葉がなければ、今のこの状況、きっと毎朝パニックを起こしていただろう「今まで3回ばかり仕事請けたのが、全部が全部、ふざけんなー!って叫びたくなるよーな代モンばっかりだったんで……つーか普通に世界の危機なんてモンに遭遇したことなんて……そうそうあってもらっちゃ困るっつーのは判るけど……」 (rouge_) 【尚也】「はは、双六ゲームにでも遭遇したか?  まあ、最初から命の取り合いするよりは、ずっといいだろ。 僕なんか、その命のやり取りした結果、この病院で夏休み過ごす羽目になったんだしな。」  反面尚也は、めぐり合わせもあってかロイヤルガードの前衛を務めることも多く、かなりの数の戦いに身を置いてきた。 「しかしまあ、そりゃ。 …クローンとはいえ、向こうも同じ思考パターンの人間になるんだろ? ………あんまり想像したくないな、自分自身と会話する姿、ってのは。 」 想像してみると、なんだか頭が痛くなった気はした。 まあ、そこも考えても仕方ない部分、ではあるか。  (tuka-neko) 【彰】「……ビンゴ。まぁ、それだけじゃねーっスけどねー」どよーんと妙に暗い顔をしつつ「……コレまでの生温い喧嘩とは違う、ってな判ってるつもりじゃあるンですけどね。何をどう間違ったのか、今の身体じゃ碌に殴り合いも出来ねェし」毎日毎日喧嘩三昧だった元の身体から比べれば、今の身体は虚弱軟弱過ぎる。まあ、一度挽肉になったのが幸いでもしたのか、随分と頭の巡りは良くなってくれた様で授業にも楽についていけるようにはなったのだが「……まー、最初出くわしたときに思わず逃げちまったモンで、気後れしてンのかそうそう話すことも無いんで今ンとこは問題ないっス。……気色わりィけどガッコじゃ猫被ってるし」まるでオカマにでもなった気分だ、と、小さくぼやく。いや実際今は女、な訳だからそう言う言葉使いでも問題ないわけだが。 (rouge_) 【尚也】「ま、僕はこの道プロ、っていうにゃ、ちょっと短いけど。 今なら、わかるだろ? 「自分探しの旅」の時間に僕が何してたか。 そういう関係で、戦ってたわけだから、彰よりは戦いなれてる。  元の彰とナーんにも考えずに喧嘩したら、流石にのされそうだけどな。」 と、笑いながら。実際のところ、月匣を展開しなくても経験で勝ったのだろうが、そう言っておく。 いやだって、元の身体でかいし強そうなんだもん、イメージが。 「僕っ子、俺っ子も萌えるっちゃ萌えるんだが、元を知ってるとなー…。 素直には喜べんな。」 (tuka-neko) 【彰】「実際の戦闘なんざマダ経験したこたーねーケド、ソレが単純な喧嘩とは違うって事くらいは、判るっスよ。小太郎とやり合ってた時だって一回も勝った事なんてねェし。元のつったって何か習ってた訳でもねェ、所詮一般人の喧嘩殺法程度っスから」ネタ割れした今ならまあ納得は出来るが。以前は体格自体似たようなものだったのに勝てないことが悔しくて、しょっちゅう殴り合いをしてたような気がする。ともあれそんな事を言いながらひらひらと手を振ってそんな事はないと仕草で返し「……いやまーこっからさき女として生きてかなきゃなんねェってのはアルんだけど……素直に喜ばれても困るだけだしなぁ……ベルのやろーは嬉々としてコスプレさせてきやがるケド……」言葉の通り心底困ったような顔でがしがしと頭を掻いた。 (rouge_) 【尚也】「小太郎も大人げねぇなぁ。」  そりゃ、負けてやる義理も無いんだろうが。 そりゃ、ウィザードと一般人が喧嘩しても、勝てないよ。 と。 笑いつつ。 「ま……今までみたいにびびらせれば勝ちって世界じゃないんだ。 ちゃんとこっちで生きてくなら、それなりの準備が必要だ。」  肩をすくめて。 「準備が足りないと、こうなる。」  とんとん、と、自分の胸を突付きながら。  「僕でよけりゃ、戦い方くらいレクチャーするよ。 つっても僕の得物は剣だから、あんまり参考にゃならないかもしれないけどね。 …知り合いがこーなるなんて考えると、ぞっとする。」 (tuka-neko) 【彰】「まー相手が悪かった、つー事っスねー」何のことはない、とでも言うかのように笑いながらそう言って「あー、ソレなら嫌って程思い知ったっスから。具体的に言うなら一遍くたばった時。って剣か……戦術、って面でならともかく手合わせつーとキビシイかもなァ……魔装つったっけな、この身体じゃあっちの扱いのほーが得意らしくて。それでもいいならよろしくお願いします」実戦で使ったことはない、のだ。自分がどの程度使えるか、なんて把握しているはずも無い。それこそ、今の得意分野といえるモノは、今まで自分が知らなかった非常識の領域、なのだから「……まーそーそーあることじゃねーっスよ。ま、ある意味貴重な体験させてもらってますケドね」 (rouge_) 【尚也】「基礎的な動き方や、相手の呼吸の読み方、心構えなんかは僕でもアドバイスできるところだけど…。」 人に何かを教えるのは、ちょっとまだ慣れないが。 僕もそろそろ、経験者、の部類だ。 ならば、今まで誰かに習ったものを伝えていかなくてはなるまい。 「でもやっぱり、肝心の肝は本職の助けが欲しいな。 魔法使い、っつーと、瀞や、……燐、は、ちょっと使い方が特殊すぎて真似できないな…。 春奈もあれで、意外と攻撃魔装の扱いは上手だから、そっちに聞いてみるのもありかもな。 でもやっぱ人に教えるなら巴さんか…? ああ……瀞は、判る? 春奈の妹。」 自分が知る魔法の使い手を指折り数えながら、思索する。 (tuka-neko) 【彰】「……えーと……今出た名前だと天宮くらいしか。ってかアイツ妹いたのか……部屋隣だし偶に話とかすっけど、聞いたことねェなぁ……」再びがしがし、と頭を掻きつつ。ある意味聞き捨てならない台詞、かもしれない。まあ、身体は女だし表向きもそう言う風にはなっているわけだし。親兄弟もいないことになっているので、女子寮暮らし自体は仕方ないことだったりするのだが「……こないだのバーベキューん時に随分人数もいたみたいだし、そん時見た顔なら見りゃ判るかもしれねェっスけど……紹介頼めます?」こっちの知り合いの中でそう言うのが得意、な奴はどれだけいただろうか?アロンダイトは明らかに違うし一も違う。……紅、は確かそっち系だった様な気はするが……以前一緒になった仕事や、何よりも妹の件のおかげか色々と顔を合わせ辛い……。 (rouge_) 【尚也】「今あげたのは、全員ロイヤルガードの構成メンバーだから、うん、何とかなると思う。 何だかんだで、皆バーベキューには参加してたし。 」 あの時の平和は、とてもいい時間だったと思う。 いい思い出だ。 だが、次の言葉を聴いて曇る。 「部屋隣って………ああ、いやまあ、そうか。」  む、と、なんだか複雑。  事情はわかるものの… 女子寮かつ隣の部屋ということは、それはそれはプライベートな一面まで覗けてしまうのではないだろうか。 とんとんと自分の額を押さえて気分を鎮めつつ。  「……事情が事情だから仕方ないけど、春奈に変なことしたりするなよ、ホント。 …………あとさ、ひじょーにどうでもいいことを、聞いていいか?」 (tuka-neko) 【彰】「なら、問題はない、かなーって……手ェ出せるわきゃないでしょーが!?そりゃ確かに色々世話になっちゃいるけど、そもそも今は兎も角元々俺にゃ彼女だっていた訳だし……全然タイプ違うし……へ?そーゆー言い方するってこたァ、尚也センパイもしかして天宮と?」少なくとも自分が男だったときにはそう言う話は欠片もなかったような気がする。確かに、頻繁に見舞いに来ていたような節はあったが……「……ん、聞きたいこと?何スか?」 (rouge_) 【尚也】「ん、あー………」  ちょっと薮蛇だった、気はする。  面と向かって、今をときめくブレイク寸前のモデルさんと恋人です、だなんていうのは、中々気恥ずかしいものだ。 相手が立派であるほど、人に言うのは逆に緊張する。 …そういう事って、ありませんか? と、誰でもない誰かに問いかけて見たが勿論返事なんてあるわけはない。 肩をすくめて、息を吐き出して覚悟を決める。 「ン、まあ、幼馴染が進展してね、そういう事になった。」 と、言いつつ。 学校ではおおっぴらにしていない分、黙っていてくれよ、といっておく。 その、親衛隊とか怖いし。 (tuka-neko) 【彰】「いやまー吹聴するつもりはねーっスけど……ああ、そーいや尚也センパイと天宮って幼馴染だったのか。正直男ン時だとこー、色々高嶺の花ーって感じでガッコ関連の事でも声かけ辛かったからなー……どーやって知り合ったんだってすっげー疑問だった」うん、幼馴染から発展、と言うのはまあ無い話じゃない。一応自分が付き合ってたのも幼馴染ではあったし。小さい頃から知ってる分気後れせずに、或いはされずにすむというのもまたあるのだろうし「……それで、聞きたいことってのは?どーでもいー、とか言いつつやけにマジな顔してたっスけど?」 (rouge_) 【尚也】「話してみると、案外抜けてたり、落ち着かないところもあったりで、親しみやすくはあるんだけどね。」 踏み込むまでが大変な類の人間だろうなーとは思う。 なんていうか、天宮オーラ的な意味で。 そこまで言葉を発してから、一息ついてから、表情を崩す。 「いや、マジなこと、っつーか、ふと思いついた、くっだんねーことなんだけどさ。 心は男で、身体は女、のわけだろ? 今の彰。 ………どっち好きなんだろうな、って。」 (tuka-neko) 【彰】「そーなのk……」クラスメートの自分の知らない一面に、思わずうんうんと頷きかけて、凍りつく。どっちが好き、と、ゆーのは、よーするに男か女か、というのだろう。「……ど、どっちが、って……いやあの確かに大分精神が身体のほーに引きずられてきちゃいるけどっ!?つーか全部あのエロ魔王ドモのせいだ……っ!!!つーかマダ男を好きになるとかそーゆーのは絶対ねェっ!?」パニックの余りぽろぽろと失言が混じっていたり。あと、こう、まがりなりにもセンパイに対する言葉遣い、と言うのが綺麗さっぱり消えうせた。 (rouge_) 【尚也】「ぉ、おおう、おちつけっ…!?」  何だこの反応は、そりゃあ、きわどい話題ではあるものの、ここまで酷く取り乱すとは思いもしなかった。  どうどう、と落ち着くようになだめながら…  「………エロ魔王か。」  ふむ、と、真剣極まりない表情で思索にふける。  「なんつーか、そこだけ聞いてると平和だな。」  表面だけ見れば、実に桃色百合色。 すばらしい、いっつぁパーフェクト。  「色々発言に危ういものが混じってるぞ、彰。  引きずられてる、とか、まだ、とか。  10年後、男時代の遊び仲間と結婚してました、ってなってたら笑うぞ、僕。」  場を和ませるための冗談として、そんな言葉を投げておく。 (tuka-neko) 【彰】「っ……マトモに男の精神してるときに幾ら夢とはいえってそんなこたーどーでもいいっ!平和でも何でもねェんだよアレはっ?!」落ち着けるかーこんちくしょー!と唸りながらも。その次の尚也の台詞に、再び凍りつき「……尚也センパイそりゃ洒落になんねェつーかソレってどんだけ気ぃ使わなきゃなんねェんだよっ!?……つーかこーゆーじょーきょーで結婚なんてンナモンするはずねェっ……寂しい老後だろうがなんだろーが見事送ってやろーじゃねーかっ」どうやら尚也の思惑は見事に外れた模様。和むどころの話ではない。まあ、辛うじて此処が病院だと言うことを思い出したのか、途中で声のボリュームを下げはしたが。 (rouge_) 【尚也】「いやでも正直、もうその、どうしようもない状況なんだろ?  今からでもどうにかなるってなら、全力で手伝うけどさ。」  もはや、替え玉まで用意されている状況だ。 世界は、既に彼…いや、彼女に女性としての新たな命を与えている。 彼が再び男に戻れる可能性を考えてみたものの…。 少なくても自分の見立てでは、ありそうにない。  「…どうなんだ、その辺り? どうしようもないんなら、ある程度割り切るのも必要なのかもな。 流されてるみたいで悔しいかも知んないけどさ。」 (tuka-neko) 【彰】「……そりゃ、男に戻る、ってなもー諦めたつーか……戻ったところで居場所なんざねェんだけどな……割り切るのも怖いとゆーかなんとゆーか……」そーいえば、前小太郎にとんでもない事を頼んでしまったこともあったっけ。再びかぁ、と頬を朱に染めつつも、とりあえず記憶の中から消去、消去……「……かといって、こー……見た目に合わせて男を好きになるってのもこー……自分がホモにでもなったよーな気になってヤなんだよなァ……ンでも、こー前ならいいなって思うよーな女見ても、今じゃどうとも思えなくなってきちまってるし……」 (rouge_) 【尚也】「これ見ても、前みたく楽しくならなそうだしなぁ、その様子だと。」 枕の下から、袋に入ったビニール本を取り出して、指差して見せながら。 「………諦めた、って、まあ…。 」  嫌いな言葉ではある、が。  戻るべき場所は、既に埋められているのだ、彼女の分身によって。 「……それも、立派な選択か。」 小さく頷いて。  「ま、今すぐに意識を変えろなんても言わないし、誰かとの付き合いを強制するわけでもないけどさ。  もうここまできたら、新しい人生を生きてる、って、考えちまうのがいいのかもな。 なんかさ、そのほうが毎日楽しそうじゃねえ? 自分が男か女か、なんて考え込むよりは。」 (tuka-neko) 【彰】「まだ辛うじて買うのは全然平気だったけどなぁ……」自身の容姿容貌も考慮外の暴挙に、本屋の店員は非常に泡を食っていた、様な気がする。「まー、新しい人生っちゃいや人生なんだけどな。予想も予測もしてなかったような世界にいきなり放り込まれちまったわけだし。……あのふざけた魔王連中に出くわさねェ限りゲームやってる見たいな感じでこう言うのも楽しいかも、ってのは思ってる。不謹慎じゃあるけどな……ま、男だの女だの、に関しても、今はぐだぐだ悩んでたってそのうち嫌でも慣れてく、だろうし……やっぱ人と話してっと、色々考えとかも纏まりやすいみてーだなぁ……」 (rouge_) 【尚也】「僕もそんなところは合ったよ。  異世界に放り込まれて、世界を救うために勇者をやれ、なんていわれてさ。  そりゃあ、ふざけたことも許せないことも沢山あったが……そんな中でも、確かに楽しいことや、かけがえのないこともあったんだよな。 だから、っていうわけでもないけどさ。 もはや前向きにいくしか、無いな。 楽しいことを見つけてやるくらいの勢いでやっていくのが、いいんじゃないか?」  饅頭、食べるか? なんて、お見舞いの品をひらひらとふって見せつつ。 (tuka-neko) 【彰】「……自分探しの旅ってどこまで行ってンだよ」思わず呆れたような口調になってしまう。最も口調とは裏腹に顔は笑っていたりするが「ん、粒餡?漉し餡?粒のほー苦手なんだよなー、まあ今日昼飯抜いてたし食う……まー、GW頃にこーなっちまってまだ半年もたっちゃいねーけど、色々とあったしなぁ……買い物してたら何か色々おまけとか貰ったりするよーになったし……あー、そーいやコレで生きてくって覚悟決めようとして小太郎に抱けとかってとんでもねー馬鹿な頼みごとしちまったりもしたしな…………って今のなし!?!?」意識の外に無理やり押し出していたせいか、再び自爆。ぷしゅー!と勢いよく頭から湯気を噴いてしまいそうな、そんな勢いで首筋まで真っ赤に茹で上がらせてしまう。 (rouge_) 【尚也】「饅頭がいやなら梨もあるぞ。 刃物の扱いも上手な僕が華麗に皮を剥いて振舞ってやろう。」 なんて。 意外と人が来るので、実は割と種類があったりするのだ、振舞えるものには。  ごそごそ、と、しまいこんだナイフを取り出し、梨を手に………  カラ……ンといった、乾いた音と、ぽてぽてと、梨が転がり落ちる音がやけに、耳にうるさく聞こえる。  それもこれも、今の彰の言葉のせいである。  美人になったおかげで得をし始めた、の部分はどうでもいい。 問題はそこじゃねえ。  「………いや、それはどんな飛躍の仕方だ。 女として生きて生きたいから抱け、って、おまえ、それは…っ。」  額を押さえ、あまりの言動に笑いをこらえていた。 (tuka-neko) 【彰】「……う、うるせー……こー、あん時は……晶と一緒に歩いてる俺の姿みてテンパってて…………………………って笑うなーーーーー!?!?」野菜の類が全滅な反動か、果物の類は非常に好物ではある、のだが。今はそんな余裕なんてあるはずも無い。怒ればいいのか恥ずかしがればいいのかも判らず。林檎の様に真っ赤な顔のまま、カバンを取り落としじたばたと両腕を振り回している。「よ、よっぽどの事じゃなきゃ覚悟なんて決まらねェって思ったんだよそん時はっ!!!!」 (rouge_) 【尚也】「あー、はいはい、判った、落ち着け。  つまり、気分が沈んだ時に無意識に頼れる男性を求めた、と、そういうわけか。  うむなんだ、新しい人生エンジョイしてるじゃないか。」  はっはっはっは、と、笑う。 うむ、いや、笑うしかない。 …真面目に返したものか、それとも茶化すべきか。  少し意地悪をしたくなるタイプだというのは、何となく判る気がした。 「小太郎も事情、わかってんだっけ? じゃなきゃ向こう側にもある意味覚悟が要りそうな行為だとは思うんだが………まあ冷静に言っとくと、女の子の貞操は大切にしろよ? 小太郎にそういう台詞はいちまうってことは、それなりに頼りには思ってるんだろーけど、もうちょっとゆっくりにしなさい。 先輩からの忠告です。」 (tuka-neko) 【彰】「ぐ、ぐー…………た、頼れるつーか、こー……確かに色々世話になってるっつーか……ケドエンジョイしてるっていえるのかよコレ……」尚也の笑顔になにやら不穏なモノを感じ取ったらしい。思いっきり不機嫌そうに……ただし容姿が容姿だけにそれは迫力ではなく可愛らしさを演出するだけになってはいるが……唸りながら「…………てーそーつったって……夢ン中とは言え散々エロ魔王に嬲られたり色々しちまったりしてるしすげー今更のよーな気が……………………………………」自爆体質此処に極まれり。殴ればがちんと音がしてしまいそうに凍りつき、ぎぎぎ、と音がしそうなぎこちない動きで尚也を見て「今日あったことは全部忘れちまえ―――――――っ!!」とうとう耐え切れなくなった、らしい。足元に落っこちたカバンをひょいと蹴り上げ拾い上げくるりと身を翻してダッシュ。羞恥が運動神経を凌駕したのか、それは何とも鮮やかな身のこなしだった。……短いスカートでそんなことをしたものだから白いものもちらりと覗いたりしてしまったのだが。 (rouge_) 【尚也】「……ちょっとからかい過ぎたかな。 前から、ちょっとムキになりやすいところはあったけど、女の子になるとあんな感じか。 なるほどなー…。  …僕悪くないよな?  相手の自爆だよな?」  同意を求めても、返してくれる人はいない。 それは少しだけ寂しいものであったが…。  先に彼女に諭したように、前を向かねばならないことだ。 僕自身も。  しかし…  「………ううん。  元を知っていても、ちょっと可愛かったか。」  眼の端に移った白いものに、どこか癒された気分になりつつ。 走り去っていったほうを眺める。 「こういうどギツイのもいいけど、やっぱ本懐はこう、不意に起きるエロスだよな。 そっちが断然いいよ、やっぱ。」 軽い調子で呟いてから、再びウェイトトレーニングの機材を取り出した。