ラビリンスシティ、大公の森。 リディア達が課せられたミッションは此処でのモンスターの駆除作業だった。 自分達の班以外にも、何名かがこの作業に駆りだされているらしく、別班と出会う事もあった、あらかたの作業を終えたのは昼過ぎ以降。 班の参加者の全員の無事を確認して、入り口付近で解散する事になったのだが。   不意に彼女の瞳に映ったのは何処かで見覚えのある人狼の姿。   彼女は周囲を見回すようにして、その森の入り口から更に深い場所に進もうとしているようだった。 声を上げるまもなく、彼女の姿は草むらの中に消えて、本当に居たのか、見間違いかも判断する暇もなく――   【リディア】「…ふぅ――」集中していた精神状態を解除するためにため息をひとつ。周囲を見回しながら、皆と別れ…一休みしてから戻ろうかな、と考える。危険は0ではないものの、ここはモンスターが出る場所ではあって。「あれ、しらさぎさん……?」声をあげた先には見知った顔。草むらの中に消えた彼女を追うかどうか悩んだものの…森の奥は危険だと伝えるために、小走りで。 【しらさぎ】「むい…?」 向かった先の入り口から、そう遠くない場所で彼女は草陰から顔を出していた、首を傾げ、赤茶けた髪の毛に木の葉を縫い付けながら声のする方向を向いて 「あれ、リディアが居るのだな、や、今日はなのだよ。」 嬉しそうに再会を喜び、にぱ、と手を上げる少女、制服に張り付いた木の葉を両手で振り払いながら出てくる。 【リディア】「はぁ、ふぅ…しらさぎさん、そっちは――森の奥ですよ、危ないですよ――」息を上げながら、追いついた…と呟いて。こんにちはです、と返しつつ…「そっちは森の奥で…危険なモンスターも出てくる場所、ですよ?」と、ストールを引き上げつつ…再度問いかけ。 【しらさぎ】「おおう、そうなのか?」 知らなかったのか、ぽん、と手を叩きながら 「教えてくれて有難うなのだよ。」 とお礼の言葉を告げる、だが困った顔でまた悩み始めてリディアのほうを向き 「済まないのだが、リディア、此処はどうやって行くのか教えて欲しいのだよ。」 と取り出した黄色い紙、スーパーのチラシ、此処から反対方向の、表紙には特大コロッケ1個32円と書かれている 【リディア】「…はい。こちらこそですよ。ええっと…?」取り出されたチラシ。スーパーのもの…明らかに、ラビリンスシティの商店街にあるものだった。「…しらさぎさん、えっと――これ、ラビリンスシティの商店街にあるスーパーの、ですよ? こんな森の中には流石にないです」困った表情を浮かべながら、小さく笑って。 【しらさぎ】「ええと、地図の通りに来たはずなのだが…あれ、違ってたのか?」 地図を見る、周囲を見回す、把握出来ていないのか首を傾げて、気づいたようにリディアを見つめ 「あ、済まぬのだが…この場所に行く道を教われないか、と思うのだよ」 ――足音。 そんな二人のほほえましい会話の最中、森の奥からだれかがあしをひきづりながら歩いてくるような、そんな音がする。 そして二人の前に、絶滅者製戦闘服を泥と血で汚したツンツン髪の青年が憮然とした顔で現れた。 【リディア】「ええと、それくらいなら案内します。私もちょっと買い物したいですし…!」ぴくり、と足音に気づいた。振り向くと同時に白と黒の光を展開させ…「誰、ですか…!」毅然とした声で―― 【しらさぎ】「……む?」 少女の鼻先が、くん、と震える…目を細め、怪訝そうに見つめる草叢、血の匂いにその瞳を朱紅く滾らせて 「血の匂いなのだよ、リディ…これは…」 背筋を低くして、飛び掛らんが姿勢、だがその怪我の様子と表情にきょとんとした顔を見せ 「う…どうしたの、だよ?」 と心配するような顔を向けた。  【梓木】 「ふむ……」二人の様子、特に二色の光を展開する少女を見て、ひとつ大きくうなづくと、手をあげ「ストップストップストップだ、多分きっとメイビー敵じゃない。 AAAの空耶梓木だ、頼むからその物騒な光を除けてほしいというか傷が痛むできれば治療してもらえると有難い」淡々といいながら、両手を頭の後ろに回して降伏姿勢(ぁぁ 【リディア】「…AAAの人、ですか――どうしてこんな危険なところにいる、です?」闇の珠、穿つ力を纏ったそれを消して…癒しの光、治癒の光を掲げる。梓木に回復の魔法をかけつつ…「そんな傷だらけになるまでなんて…危ない、ですよ」  【梓木】 「うむ、恩に着る。この恩はきっと何かの形で返そう。 そちらの犬娘も心配痛みいる。彼女の魔法で事なきは得た」頭を下げて「修行だ。命をかけねば修行にならないだろう? もっとも、あそこで意識を飛ばす羽目になるとはおもわなんだが」 【しらさぎ】「ああ、ご同業なのだな…」警戒を解きながら、こく、と頷いて微笑む、威嚇して御免なさいなのだ、と呟きつつ、リディの魔法に 「リディ…回復魔法が使えるのだな、しらさぎは初めて知ったのだぞ。」 と治療を始めたリディアに頷きながら、うんうんと何度も首を振る、嬉しそうに。  【梓木】 「とすれば、二人もAAAの構成員ということでいいのだろうか? しらさぎ嬢にリディ嬢」漏れ聞いた言葉に反応し問いかけ。 【リディア】「…こちらこそ、ごめんなさいです。警戒――する必要なかったですね。これで治癒、終わりです」ふぅ、と…慣れた様子で治癒を終える。「私はリディア、リディア=アルヴァレスタです――はい、AAAのメンバーの一人です」男性の言葉にこくりと頷いて…これで大丈夫ですね、と…  【梓木】 「改めて。 俺は空耶 梓木(からや しき)。先刻も名乗った通り、AAAの構成員だ。 何、血みどろの怪しい風貌の男など、警戒しないほうが間違っている」おもむろに威嚇射撃を打たれなかっただけでも幸いだ、と感慨ぶかげに頷いている男。 【しらさぎ】「んむ。狭山しらさぎなのだ、宜しくなのだぞ。」 空耶の挨拶に頷いて、その表情を見つめながら元気よさそうにその腕を振り上げる 「治療してくれて有難うなのだぞ、リディ。」 と治療の終えた様子を確認し、リディの肩を叩くようにして。  【梓木】 「礼を言うべきは俺の方なのだが――ふむ、改めて感謝する、リディア嬢」 深々と頭を下げて 【リディア】「私はヒーラーですから――これくらいはお安い御用、って言うのもあれですけど」肩を叩かれ、小さく笑って。「よろしくお願いします、梓木さん」と…挨拶にぺこりと頭を下げ、返す。 【しらさぎ】「これで此処に着ての知り合いがまた増えたのだぞ、空耶、宜しくなのだ。」と嬉しそうに、リディの真似をして頭を下げ、ふふんと自慢げに言って見たりとかして  【梓木】 「不束者だがよろしくお願いする」小さく礼。 「ところで二人こそ何故ここに? 討伐任務でもあったかしら」 【しらさぎ】「んと、これを買いに行ったら道に迷ったのだよ…」と先ほどにリディアに見せたそのスーパーのチラシを見せる、目の前のジャンポコロッケを指差しつつ「しらさぎは此方の方だと思ったのだが、違っていたようなのだな。」 【リディア】「そうですね、この森のモンスターの討伐があって――それを終えて、AAAに戻る直前です。しらさぎさん、森の奥にスーパーは普通ないと思います…」と、その言葉にあはは、と…苦笑にも似た笑みを漏らして  【梓木】 「コロッケ屋か――しかも、32V.とお手ごろだな」ぐー、お腹のなる音が小さく響く「む、失礼」 【しらさぎ】「むう、でもしらさぎの住んでた場所では山の中にスーパーがあるのだぞ。」 と実に鋭い突込みを受けて頭を抱えるように、ガード状態で、ちなみに田舎は車社会ゆえである 「…梓木もお腹がすいたのだな、しらさぎが梓木の分まで買ってきてやるのだぞ。」  【梓木】 「戦いに夢中で朝から食事を抜いてしまっていたからな」顔をぽりぽりとかいて「それは申し訳ない気がするのだが。 むしろ、俺もついていってはだめだろうか? そちらの方が手間もかからないし、俺も店の場所を覚えることができる」 【リディア】「それはその場所次第だと思いますよ…? それなら、皆で行ったほうがいいかと思います――私も場所、案内しなきゃですし…私も軽く食事とろうと思ってましたから」 【しらさぎ】「みんなで行くのか? ふふ、それは楽しそうなのだぞっ!」 と二人の提案に頷いて、左右の顔を確認しつつ、その両手を1本ずつ出して 「まずは此れからも宜しくなのだよ、リディ、空耶」  【梓木】 「ん、よろしく頼む、しらさぎ嬢、リディア嬢」その手にふむ、と一瞬逡巡、手を取り握手 【リディア】「はい、よろしくお願いします――」その手をとって、握手を。白い肌、ほっそりとした腕が服の下から覗いて。 【しらさぎ】「……うん、宜しくなのだ。」 二人の手をぎゅっと握り締め、嬉しそうに跳ねて。  【梓木】 「ふむ」その様子を見て、ふと、無表情な顔に小さな笑みを浮かべ「では、まずもって次は、店への移動となるわけだ。 リディア嬢、案内宜しく頼む」 【リディア】「わかりました、えっと――見せてもらってもいいです? この辺りのお店は一応一通り把握してるですけど、地図がないと流石に…」 【しらさぎ】「うん、リディアに任せるのだぞ……地図はこれなのだ、駅からの地図しかないなんて不親切だと思うのだよ。」と少しだけ膨れるような様子を取り、リディアにその黄色い紙を渡して、期待するようにじっと見つめる「リディなら分かると信じているのだよ?」   こうして、三人はその空耶の衣装を整えてから、スーパーに買出しに行くなどの時間をすごした。 のんびりとした買い物の時間、ひとときの休養を楽しんで、また次なるミッションにかかわっていく事になる、それがAAAの日常だから