21:15 hikami >……母艦での応急措置はそう手のかかるモノではなかった。 21:15 hikami >初期対応が早かった事、肉体的な負傷としては程度が軽かった事等が理由であるらしく……それは街に帰ってからも同様であった。 21:15 hikami >医療設備に放り込む事で即応的な治療が出来る類の物ではなく……言ってしまえば“疲れすぎ”が原因だと説明を受けた。 21:15 hikami >根を詰める性質なのは知っていたし、幾度かそれで諫めた事もある。 21:15 hikami >遭遇した“敵”の挑発に乗った結果で力を使い果たした、全開での戦闘行動で……カスタム機にすら負荷をかけるほどの高魔力を放出した、その結果。 21:15 hikami >休みませれば大丈夫、と、イオの体はそのまま、ラヴィスパレスにおける彼の自室へと運び込まれた。 21:15 hikami >病室に留まらせるよりも普段から使用している空間の方が本人にとって近しく、プラーナを回復させやすい……確かそんな説明だっただろうか。 21:15 hikami >ともあれ、現在は彼の部屋に居る。 21:15 hikami >作りとしては仮宿として間借りしている自分の部屋とそう大差はなく、それでも、持ち込まれた私物の少なさの分、己の部屋と比べ彩りには薄い。 21:15 hikami >寝かせてから数時間、結局、自室に戻るに戻れぬまま……備え付けの椅子をベットサイドへと引きずり、眠り続ける彼の“看病”に着いていた。 21:15 hikami >……とは言っても出来る事など、無い。 21:15 hikami >休ませれば良い、そう聞いた以上“休ませる”しか、無いのだ。 21:15 hikami >…………そういう意味で言えば今、自分が此処に居る事も下手をすれば回復の邪魔になりかねないのだろう。 21:15 hikami >しかし、プラーナの欠損は……確か授受を行う事も出来たのではなかっただろうか? 21:15 hikami >リディの行ったモノ程きちんとした魔術様式を踏んだ物とはならない訳で、加えて言えば―――…… 21:15 hikami >そんな考えが数十分前に浮いて以降、寝顔を覗き込んだまま、動けぬままにいた。 21:29 rouge >……身体が羽のように軽い。           何処までも飛んでいけそうな、そんな気分。           …色々な景色が見えた。            懐かしい光景。           エルスゴーラの…メティストの光景。           そこでは自分は、第三王女の小間使いを勤めていた。           …その役目を請け負うことになったときは、弟や親戚一同と喜び合い。           初めて使えることになった前の日は緊張して食事も喉を通らなければ、一睡たりともできなかった。           …敬愛と憧れを持っていた。           メティスト第三王女であり、神に選ばれた戦士、フェダーインでもある。           気品と力を持つ理想の君主だと、胸を高鳴らせながら初仕事に行ったっけ。           ……遠い日のことに思える。           思ったよりも第三王女は人間らしくて、お転婆で……しかし、敬愛に値する人物だった。           職場の仲間にも恵まれたと思う。           みな、選ばれただけあって、出来る、使用人たちばかりであった。           自分も必死で努力した。           様々な出会いもあったと思う。           以前からあこがれていた鋼騎士というものになるために、国最高のフェダーインであるカイエンと話をする機会も出来た。           その弟子グラスパとも、何度か言葉を交わした。           ……これまでのことが、走馬灯のように流れていく…。 21:36 rouge >そんな平穏な日々から一転。           カルミアの神の塔への遠征…。           しかし、途中での断念。           …どう声をかければいいのか分からなかったことは覚えている。           その微妙なムードのまま、メティストへの帰還中。           大量の冥魔に一団は襲われて……。           鋼騎士はまた一人、また一人と倒れ、守ってくれるものが居なくなった力のないもの…自分たちのようなメイドや小間使いが、紙屑のように散っていく。           いつの間にか、カイエンさえも死んでいた。           ………地獄のような戦場。           右往左往する自分。           …自分たちを守るために戦い、傷つき、愛機さえも失ったカルミア。             「これで逃げなさい!」と、渡されたのは、聖石。           フェダーインの持つ、鋼騎を秘めた石。           ………これを手に取ったときから、自分の視野は、変わったような気がする。           ………光景が流れていく。           ラビリンスシティに流れ着いてから、今日まで。           ……これが全て流れきったとき、どうなるのだろう。           そんなことを考えながら、ぼう、と、光景が流れるのを黙ってみている。           クーやマルディナに師事し、なれぬ鋼騎を必死に扱おうとしてみたり、実戦のたびに震えが止まらなかったり。           ただ二人の生き残りとなって、カルミアと様々な話をしたことなど…これまでのことが、流れていく。 21:44 hikami >【カルミア】「……っ……」                らしくない、至った発想もそう、だが……“思った事で、それがデメリットを伴うもの”でない事に躊躇う事も、一度やろうか、と思い切った物を今更に引っ込める事も、らしく、ない。                ……相手の寝顔は安らかな部類なのだろう、一応は繋ぎ止めた、と聞いているが……そっと、イオの額、熱でも測るようにと華奢な指先を伸ばし軽く触れる               「……何してンのよ、本当」                ……思った以上に、体温が低かった。その分焦り、が増えたのだろう。               「…………………もーちょっと寝てなさいよ」                そんな呟きと共に身を傾け、ちょん、と、柔らかな感触同士を……有態に言えば唇同士を、軽く触れ合わせていた。 21:52 rouge >【 イオ 】 「…………」                  何か、暖かいものが触れた気がした。  冷や水に浸されていた自分に、暖かな手が差し伸べられる。                  震えたままの自分は、差し出された手を取ることを躊躇しない。 手を伸ばし、しっかりと握る。 はなさないように。  その手は、凍えた自分を引き上げてくれて……。  …光が、はじけた。                 「…………ん…?」                  近くに感じる、自分以外の体温。  暖かい。  甘い香り。  そっと、目を開く。  視界いっぱいに、カルミア=アメテュストスの顔があった。 そして、唇にはその唇の感触も。                「………え……」                  ああ、夢か。  ………カルミア様から口付けを賜るなんて、なんて恥知らずな。 でも、これ以上ない幸運な夢だ。  21:57 hikami >【カルミア】「……んっ…………」                触れるだけの行為、暖かな、感触……本来はそうである筈の行為だと言うのに伝わってくるのは不安を煽る冷えた体温。それでも…………その分を補うぐらいに顔が、熱い。                プラーナの供給行為、人工呼吸、の要領で行うのが効率が良いと言う知識はあった。……しかし“そのこと”が別の意味を孕むというのは、また、確かであって……甘やかな吐息と共に顔を、離……               「……っ!?」                ……訂正しよう。体ごと、後ろに下がった。備え付けの椅子が頑丈であった事を幸運に思うべきなのだろう、ガタッ、と、派手な音は立てたが……転倒することも、椅子が弾き飛ばされる事も無かった。                ……確かに一瞬、至近距離で目があった、そう感じ取った分、慌てて自分の口元を手で覆い隠していた。 22:00 rouge >【 イオ 】 「……っ!?」                  びくん、と、派手な音に肩を震わせる。  ぼやけていた視界が、少しずつ広がっていく。  広すぎるのが少し落ち着かない自分の部屋。  自分のベッド…そして……。 カルミア。                 「…え………っと…」                   下唇をなぞる。 確かに暖かくて、僅かに濡れていて。                「……夢じゃない…?」 22:05 hikami >【カルミア】「………………なんっつータイミングで起きるのよ……」                跳ねた鼓動が耳に煩い。……治療行為、としての物で見れば成功だったのだろう、覚えて居た分はどうにか活用できた。……いや、そう、じゃなくて……               「…………体は、無事?えーと……イオ」                我ながら何を言っているのか、といった所だろう。……問題は体、に無かった事は承知の上だろう。……色白の肌が羞恥と焦りに朱を帯びていた。 22:11 rouge >【 イオ 】 「ええ…と……」                  頭を抑える。  まだ、状況がはっきりしない。                「俺は、確か鋼騎に乗って、グラスパと戦って…そうだ、グラスパ…!  あいつは一体…どこに!  何で俺、こうして……。」                  まだ、意識は鋼騎の中にいるようなものだ。  唇の感触を忘れて、目の前のカルミアに問いかける。 22:15 hikami >【カルミア】「………………逃がしたわ」                相手から聞ける“グラスパ”の言葉。……そう、今はそんな甘い誘惑に浸っている時でもなければ、行為そのものに意味を持たせるべき時でも、ない。                ―――と、言うよりも、持たせてしまったら何か、不味い。軽く頭を振る様にして思考を一度切り替え、どかり、と、普段以上に無造作な挙動で椅子へと腰掛けていた               「アイツの鋼機……鋼機、っつー括りに入れていいなら、だけど……あいつの鋼機は半壊してるわ。あのドリル娘の攻撃と、イオの攻撃で、ね。無茶な出力かけすぎ、気持ちは判ンだけど……―――イオは戦闘終了後にぶっ倒れたのよ」 22:21 rouge >【 イオ 】 「………無茶な出力……。」                言葉を繰り返して、口に出してみる。  …ありったけの、もてる全てをモリオンに注ぎ込んでいたのも、それをグラスパにぶつけてやったのも、覚えている。                …ただ、そこから先がもやのかかったように思い出せない。  びしり、と、何かが砕ける音と、自分の身体が消えていくような悪寒、それは、なんとなく覚えているのだが…。                 「………逃げられ、ましたか。  …申し訳ありません。」 22:25 hikami >【カルミア】「アレは、イオの所為って訳じゃあないわ。追撃が間に合わなかったのはあの場に居た誰もが同じ、戦闘体制を解いたつもりは無かったンだけど、ね」                要因としてはまだ、ある。……リディに良くにた少女の姿……救援者の存在が大きくはあったのだろうが……言う事で余計に“無理をさせる”可能性も残るか               「……連中はグラスパだけじゃーなかった、ってコト。あたし達と同じく集団になってンのよ。……撃破そのものは出来たけど“殺せて”は居ない。 22:25 hikami >       バン、と、いらだたしげにベッドの淵を叩く。  直ぐに、八つ当たりにも似た行為だということを察して、すみません、と、小さく謝罪の言葉を入れて。                 「………」                しばらく、無言。  何を言っていいものか、探っているような状態。 22:36 hikami >【カルミア】「…………―――」                その行為を咎める事は、無い。重い気分を嘆息と共に吐き出し……無言の時間が少し、過ぎる。カチ、カチ、と、時計の針が刻む音が数回響いた後に……               「………………………もう、あんな無茶はするんじゃ、ないわよ。いっくらあたしだって、オーバーヒート気味の負荷まではフォローしきれない。                ……イオは根を詰めすぎるトコがあるっつーのは皆知ってたコトだし、適当に息抜きさせろ、とは言っといたけど。……戦中の無茶で、そーやって倒れてたら。                …………いつかホントに倒れるわよ。今回だけじゃーないでしょ、ソレ。……モリオンを繰った後、けっこー体調悪そーにしてるコトあったし、力みすぎよ、イオは」 22:42 rouge >【 イオ 】 「………俺は………」                 皆知っていること。 ………やはり、よく見ている。 なんて思いながら。                「………俺は、鋼騎を操って間もないですし。 人より、づたんのかかるのは、仕方ない事だって思ってます。」                 掌を眺めて、そんなことをつぶやくように返す。 後ろ暗くはあるのか、カルミアの表情は見られない。                「でも……すみません。 ……ご迷惑をおかけしました。」 22:46 hikami >【カルミア】「……あの、さ。―――迷惑だって思ってンなら、あたしが此処に居ると思う?」                そんな様子に感じるのは小さな苛立ち。溜息と共に零す言葉……かた、と、椅子の足が軽くなる。そのまま相手の横たわるベットの淵へと腰掛けて               「あんたは、良くやった。……これで二度目、あんたが放ったスペル総量としちゃ、グラスパの魔手から逃げた“一回目”にも劣らないぐらいの攻撃だった。                ……ソレで助かったのは確かなンだけど、二度目、でこーじゃ……ね。自分を鍛えるのも正解、それで“自分を壊した”ら……意味なんて無いンだから、ソレは履き違えないよーに。……判った?イオ」 22:53 rouge >【 イオ 】 「………俺、は…。」                ぐ、と、こぶしを握る。  ふわりと、近くに感じる甘いにおい。 先ほども感じたもの。 不意に、さっきの光景が思い出されてしまう。 唇を重ねたその記憶を。                 「………え、ええと。」                おもわずくちごもる、改めて考えると、凄いことをしてしまったんではないかと。                 「……あー…その、はい。」 22:59 hikami >【カルミア】「……おーけー、それで良いわ」                ぽふ、と、軽く音を立て相手の頭へと手を触れる。“最初に触れた時”とは違い起こす事を危惧しなかった分だけ無造作な動き、いつもどおり、といえばいつもどおり、なのだが……どこかぎこちない。                何のことは無い、こういう距離に居る事なんて何度も遭遇しているし、髪を整える手伝いをさせる時等はもっと近い。……自然と、相手が言葉を紡ぐ“場所”に目が、向き……―――               「……と、とにかく」                ……声が、裏返った。何を意識しているのか、不分明な感傷を強引に押しやるべく言葉を続けて               「……イオの地力は十分なンだから。後は無茶だけはしない事。                ………………また、グラスパと遭遇する機会は、あると思うわ。逃げた先で、なんて陳腐なオチに成る程素直な根性はしてなさそーだし。……けど、まー……出来ちゃったわよね。……“仇”が、さ。」 23:05 rouge >【 イオ 】 「……!?」                今までより、ずっと近くの距離。  いや、今まででも、こんなことは…いや、なかった。  初めてか。  自分がふれることはあっても、彼女が自分に触れることはない。                近くにカルミアがいるたびに、唇の感触が思い出されてしまう。 …意識が不安定だったせいか、そんな感触だけよく覚えているなんて、自分はどうかしている。  ぼう、っと、そんなことを考え、心音を人知れず高鳴らせていたのだが…。                 「………前に、そういえば、仇をとるか、って話、してましたよね。  …あの時は、本当に仇がいるとだなんて、思ってませんでした。」 23:11 hikami >【カルミア】「……そ。……“皆が死んだ”のは、あたしの……あたし達鋼騎士の力不足だったって思ってたわ。スパンカナードに至る事が出来ないまま焦れてたら、パイリダェーザが陥落、カーリィが暴走……本国への影響の危惧からの帰還命令。                ……その時点で既に力不足だって思ってたンだもの、余計に、だったわ。……じーさんですら及ばない相手、それが“カーリィ”であって“冥魔”なんだ、ってね。……それが偶然の産物、ただの遭遇戦であそこまでやられたんだ、って思ってた」                ぽつ、と、言葉が続く。髪へと触れた手はそのまま……先程までの不確かさとは違い、今は、きちんと存在を感じられるようになった相手、へと言葉を続けて               「……でも、違った。あたしはあの時“誰に”って聞いたわよね。……その相手が、出来ちゃった形になったのよね、コレって」 23:16 rouge >【 イオ 】 「…俺は……」                  言葉を切る。                 「…許せない。  ……あいつは、沢山の命を奪った。  間接的とはいえ、あいつが殺したのと、同じです。 …沢山の未来があったのに…あいつが全部奪った。                …俺は許さない。 何があっても、報いを受けさせてやる。 あいつに未来なんか、与えてやらない。」 23:17 rouge >       普段とは違う、戦闘時にも似た怒りに満ちた声。 23:22 hikami >【カルミア】「……“妄執で闘うべきではない”……仇の話をした時にも言った、じーさんの言葉よ、イオ」                そんな相手に返すのは……意図して落とした声のトーン。普段ならばその手の演技は自在に出来るのだが……今は、どうみてもそれが“わざと”である事が判るほどにぎこちない               「闘う理由を、グラスパだけに置くとまた、繰り返しかねないわ、イオ。……―――そーゆーのは……見てて、ちょっと、ね。とは言え……」                はぁ、と、零す盛大な溜息。相手へと触れていた手を外し、己の目元を覆うような仕草を取って               「…………………イオが怒ってなかったら、あたしが怒ってたわね、アレ。“仇”が……原因、が、判ったンだもの。……これで、ただ冥神様の導き、帰れない事で留まって“協力するだけ”のスタンスを変えなきゃなんない。……そーなった時、イオが倒れてたンじゃ。……意味、ないわ」 23:29 rouge >【 イオ 】 「でも……」                口ごもる。  理屈では、そして、熟練者の経験であるその言葉は、正しい。  妄執だけで闘うべきではない、という言葉は。                 「……それは、分かります。 分かりますけど……あいつの顔を見てまた冷静でいられるかは、分からない。 …優希のこと、笑えないな。」                額を押さえ、うなだれながら。                 「…ここで闘っていれば、あいつにもまた出会える。 そういうことですね。」 23:34 hikami >【カルミア】「あたしも、判ってるつもりだったわ。……でも実際に目の前にするのと“耳で聞いたこと”とじゃ大違い。                ……標的が“グラスパ”である、ってーなら此処じゃなくたっていい、人の手に任せるぐらいなら、あたしやイオの手で、ってぐらいの気分じゃある。                ……きっと、コレは妄執ってコトなんだと思うけどさ。……あの“歌”を使ってた子、確か……姉、っていってたわよね。……縁者をやっぱりグラスパに殺されたか、浚われたか……っ―――」                痛む、頭。……こう言う思考は“出来る”だけで“得意”ではない。……ただ王族としての教養として身に着けただけの、後天的なモノ、なのだから               「……そ。シャオが明確に“敵だ”って断定してた。……グラスパに敵対しようと思えば、此処は……丁度いい場所だった。それこそ冥神様のお導きなのかもしれない、けれど。……どうにかしろ、って、ね。これが、此処に飛ばされたあたし達への試練なのかもしれないわ」 23:42 rouge >【 イオ 】 「……俺は、今までどおりです。」                短く、それだけを答える。  ここに協力することも。  彼女の従者であり、共に戦うことも。                「……それでも……妄執にとらわれて、今日のようなことになるのだけは…繰り返さないようにします。 …姫様にこんなところまで来させるなんて……どうかしてる。」 23:46 hikami >【カルミア】「……あの、さ」                目元を覆っていた手を、外す。軽く睨むように視線を向けて               「……“あたしが此処にいる”のは、あたしの意思よ。イオ。……心配ぐらい、させなさい。“姫だから”とかじゃないわ?……カルミアとして、倒れたイオを見舞っただけ。―――従者を労う為に姫が訪れたンじゃあ、ないわ」                ……何、を、言っているのか。……しかし、相手の言葉に感じたのは……どうにも釈然としなかった感情、だった。不分明の苛立ち、それを打ち消すようにと告げ、視線を逸らす               「…………繰り返さないようにする、ってトコだけは。……受け取るわよ、イオ。次、は。……怒るわ」 23:53 rouge >【 イオ 】 「……カルミア…様…?」                それは、想像だにしていなかった言葉で。  では、なんだろう。  カルミア個人として、心配してくれたということなのだろうか。  ……そして、カルミア個人として…唇を……?                ………駄目だ。 それ以上考えてはいけない。  夢の見すぎだ。  というより、あれはなんだったんだ。 事故か、たぶん事故だ。 そうに違いない。 次第に高潮していく頬を何とか押さえようとしながら。                 「……ああ、とああ………。  ………気をつけます。」                少し、またきて欲しいなどと不届きな感情がよぎったが… 23:56 hikami >【カルミア】「……っ―――そこで、赤くならない!」                ぴしゃりと言い放つ言葉は叱責と似た音にはなるのだが……迫力なんて、無い。照れ隠しである事も歴然であり、かぁ、と、つられた形で此方の頬も朱に染まる。……その熱を意識してか顔を背け、身を離してしまって               「……―――と、とにかく。…………………………もう、大丈夫そう、ね。……だけど、もーちょっと休んでなさい。様子は、見に来るから、無茶はしないこと。いーわね?」 00:02 rouge >【 イオ 】 「あー、す、すみません!  ………ええと…」                やはり、カルミア様も、気にしている…?  普段とは違い、その顔色をまじまじと観察してしまう。  …よくみているからこそ、普段のカルミアとは動きが違うというのがよく分かり、それがなんというかその、恥ずかしい。                 「もう、平気……だと思います。  カルミアが…ああ、いえ! カルミア様が、来てくれましたから。」                あわてて言い直す。 同じ人間として、きてくれたカルミアに対して、つい口調を緩めてしまった。  00:08 hikami >【カルミア】「……様、なくていーって。イオ。……“此処で闘う目的”は一緒なンだし……前も言ったでしょ、イオ?同じフェダーイン同士、気ぃ使いすぎる必要、ナイわよ。」                背けた視線のままで言葉が続く。……これ、も、らしくない。言い訳すらもつらつらと猫めいた悪戯っ気と共に告げる事が多い分、まともに顔を見ずに話すのはレアケース、でもある。                ……簡単な用事を言い付ける時や軽い注意、なんてモノなら兎も角だが、此処まできちんと“話す”なら、身についた習性として互いに表情をコミュニケートの手段として活用していたと言うのに、だ               「公式の場でもなんでもないンだし、プライベートスペースでまで“立場”を気にしすぎるコト、無いンじゃない?…………イオも、一人前とまでは言わないけれどちゃんと、フェダーインよ」 00:14 rouge >【 イオ 】 「俺は………」                 まだ、自信がもてない。 けれど………認めてくれる人がいるなら。 一日も早く、そうならなければならない。  そう、感じた。                「……一日も早く、自分でもそうな乗れるように、努力します。」                頷いた。                 「……それじゃあ。 …プライベートスペースでなら…そのように呼ぶことを、認めてもらえますか? カルミア……」                様、と、つけるのを、何とかこらえた。  慣れない。 凄く慣れない。  …だが……なんというかその、むずがゆく、甘い気分になるのは、どうしてだろう。 00:18 hikami >【カルミア】「―――認めるも何も、そーしろ、って言ってンじゃない」                ついに、声のトーンまで呟く程度に落ちた。……気恥ずかしい、何を此処まで気にする必要があるのか……むず痒い様な感覚は、今まで“気を使うな”と、己の私室の中でまでも実直に仕えようとしていた相手に向けていた言葉と殆ど変わらないもの、だというのにだ。                ……きっと、さっきの感触がまだ残っている所為、だろう。……医療行為であり、治療行為であり、プラーナ、と言う生命エネルギーを授受するにもっとも手軽な行為であり―――それだけなのに、何を意識する必要がある。幾度かそんな煩悶を繰るだけの時間が、過ぎた後に               「……いーわよ、カルミア、で。あたしは、此処では“姫”じゃーない、一人の騎士よ。……そのほーが……多分戦いやすいわこの状況。」                用意したのは、そんな“言い訳”……戯言に過ぎないコトなんて、言った自分が判ってしまい……余計に気恥ずかしかった。 00:25 rouge >【 イオ 】 「……いや、その。 俺は……カルミア……の、小間使いであることにも誇りを持ってますし。  その、第三王女カルミア=アメテュストスの世話を出来ること自体に誇りを持ってもいましたし、その呼び方を止めるって言うことはその小間使いを出来なくなるわけでして!」                 ああ、もう。  何を焦っているんだろう。                 「………じ、じゃあ、闘うときは、カルミアと呼びます。 後、プライベートなときも。  …そ、それでどうでしょう!」                  素っ頓狂なことを行っている。  世話をするとき以外全部じゃないか、それじゃあ。 00:33 hikami >【カルミア】「…………つくづく思うンだけどさ、イオ。……物好きよね、下働きが好き、ってーのも。フェダーインになって、モリオンをいちおー“イオの”ってあたしが認めたンだから、もーちょっと楽しようって方向に―――……なりそーにない、わね」                言ってから思う、基本的に真面目、なのだ。……時に目を離すと言いつけた仕事を完全にやろうとする余り、色々と忘れて没頭する癖があるぐらいに。それが“仕事が増えた”ぐらいで職分を手放す気にはならないのだろう。                ……そう、解釈していた。そう思っておくのがいい、と思った、と言うのが正しいかもしれないが               「……おーけー、じゃ、そーしましょ?イオ。……あたしの世話係を解雇する気で言ってンじゃないわけだし。……―――気楽にしていい、ってだけ。だから、ぁー……まぁ……ん。」                いざ、呼ばれると少しくすぐったいかもしれない。……様、があると、自身の立場、姫、である事を認識する分、肩の重いモノでもあったし、リディにも“呼び捨て”を願っている。                ……それと同じだ、自分が気を抜ける場所がその分増える、戦時に気を使わずに、済む。……良し、問題は、ない               「ンじゃ、約束ね。ちゃんと、そーゆー時は“様”を、とること。……そのほーが、あたしも気楽よ」 00:39 rouge >【 イオ 】 「……分かった、カルミア。  …ああいや、そこまで行くと砕けすぎか…?」                  ぶつぶつと一人ごちながら、言葉を返す。  不審な言動を繰り返しながら。                「……それだけ、メティストの王族が国民から慕われてるって事だと思いますよ。 俺、宮仕えが決まったとき、第三王女つきだって決まったとき、皆凄く、喜んでくれましたから。 」                  下働きが好き、という風には、こう帰して。  00:43 hikami >【カルミア】「それでも、いーわよ、イオ。片方だけが砕けて片方が気を使って、じゃ……フェアじゃ無いンじゃない?」                それこそ王族、としては胡乱な言葉にもなりかねない。……遠い異郷の地であるが故に、口に出す事が出来た願望の一つ。これ、を……まだ皆が生きている時に口に出来れば。……その思いは少し、苦い               「……―――変わり者よね。ま、だったら……」                とん、と、己の膝を叩く。……立ち上がる、と言う、意思を持たせるべく               「……“メティスト”の象徴機の一つをいつまでも寝かせる訳に、いかないわね。グランデでも今は動けてるけど、そのうち限界が来るだろーし。……そーなる前に間に合わせるわ。                イオが“仕える”に足る王族でも在り続けなきゃ、イオにばっかり“ああしろ、こうしろ”って言ってらんなくなっちゃいそーだもの」 00:49 rouge >【 イオ 】 「そのあたりは、がんばってみ……る…ます…る。」                  口調が一定しない。 あっちへ行ったりこっちへ行ったり。 複雑そうな表情で、カルミアを見やり。                「……中々難しいな、これって。」                 ううん、と、頭を抱えた。                 「…俺は。  ……貴方のためなら、命をかけられる。  …皆、そうだったと思う。 レウカンサが、あろうがなかろうが。」                  グラスパにも、そんな風に吼えてみせたっけ、なんてことを思い出しながら。                 「あ、そりゃ、ないよりは、あったほうがいいけど……。 その、言いたいのはそういうことじゃなくて…。 今でも十分、仕えるに足りる人だよ、カルミアは。」 00:57 hikami >【カルミア】「慣れてくるまで、ちょっとぐらいの“ミス”なら大目にみたげるわよ、イオ。……気ぃ抜いて喋って貰えンのが一番だ、ってーのは変わンないわ。……逆に気ぃ使うぐらいなら、ちょっとぐらいは“我慢”するわよ?」                ある種挙動不審な様子に思わず浮かびかける笑い、これ、ならば……もう大丈夫だろう。存在が薄く、軽く……冷たくなりかけていた相手の弱さは、もう、ない               「……命なンて、掛けてもらっても重いけど、ね。嬉しくはあるわ。―――……だから期待にだってこたえてみせる。今すぐに、なんて訳にはいかないけど、なるべく急げる手は打つわ。必要なコトは幾つもあるだろーけど、アテが無い、って言う手詰まりは抜けれた。……―――ありがと、イオ」                その言葉と共に立ち上がり、軽く、背伸び。……身を解す、と言う“言い訳”と共にもう少しだけ、その場に留まって 01:01 rouge >【 イオ 】 「いえ………過ぎた言葉だし……。  それを言うなら、俺も……ありがとう、カルミア。」                  その姿を、ゆれる赤い髪を目にしながら。  敬愛すべき主君であり、同じフェダーインの仲間であり、同郷で、同世代の少女の後姿に、しばし目を、奪われていた。 01:09 hikami >【カルミア】「……んじゃ、あたしは行くわ。後で何か食べるモンとか、持ってきたげる。……ちゃんと、休むのよ?」                そう、言い残し歩みだす。ふわり、と揺れる赤い髪がその動きと共に軽く、靡く……毛質が柔らかい分と、手入れが行き届いている分の軽やかさ。それが“後ろに靡く”のが……去りがたい未練、未だに残る心配、の表れとすら見える挙動。                ……それでも宣言通り―――扉を潜り、イオの部屋から去る。……抜けた先に零すのは深い、安堵の溜息。喪われずに済んだ安堵は、それだけ“喪う可能性への不安”にも繋がっているのだから……それ、だけはまだ見せる訳には行かなかった。 01:16 rouge >【 イオ 】 「………」                パタン、と、そのまま仰向けにベッドへと倒れこむ。  グラスパの見せた本性。  ひび割れたモリオン。  消えていきかけていた自分の姿も、今ならはっきりと思い出せる。 様々な不安が、一気に押し寄せてくる。                ……だけど、今までにない会話をすることが出来た、その、今までの言葉のやり取りが、そんな不安をやわらげてくれた。                「………俺は、あの人と一緒に、闘う。」                それだけは、間違いのない事実。