22:09 rouge_ >【 イオ 】 「………」 22:09 rouge_ >部屋に転がる一冊の本を眺めながら、静かに目を伏せる。 22:09 rouge_ >………散々に荒れた部屋、内部は尋常ではない散らかり具合だった。 一目見て目をしかめてしまうくらいには。 22:09 rouge_ >上下をひっくり返して何度か揺さぶったらこんな風に散らかるのではないかという惨状。 22:09 rouge_ >だが、この部屋は……どこか不思議と落ち着く気がした。 少なくとも今の自分が日々を暮らす、広すぎるとすら感じるホテルの一室よりは。 22:09 rouge_ >  22:09 rouge_ >(城仕えも俺、長いだろ? 金もだいぶたまったんだぜ。今回の姫様へのご同行が終わったらさ、俺、結婚するんだ。…相手? フロージュだよフロージュ、職場結婚って奴!) 22:10 rouge_ >この本の持ち主で、使用人仲間で……くだらないことを言い合った友人のひとり、ラルス。 22:10 rouge_ >  22:10 rouge_ >【 イオ 】 「……フロージュ、逞しいから今頃新しい男見つけてるかもな。 ………でもそのほうがいいってお前も思うんじゃないか?」 22:10 rouge_ >答えなどもちろん返ってこない。 22:10 rouge_ >他にも、この部屋には色々な人間の持ち物だったものが散乱している。 22:10 rouge_ >  22:10 rouge_ >メティスト王家、第三王女カルミア=アメテュストスと王国所属鋼騎士達による神の塔への遠征。 22:10 rouge_ >今、自分がいるカーゴは、王女と鋼騎士、そして彼らを世話する使用人やメイドたちを長旅の雨風から守ってくれる巨大な鉄騎。移動手段にして、家。 22:10 rouge_ >生活空間に、鋼騎の整備スペースに、王女の部屋があり、騎士達の部屋があり、使用人たちの部屋がある。 22:10 rouge_ >ここで多くの時を過ごしてきた。 長くはないが、この使用人室は、確かに自分の部屋だったのだ。 22:10 rouge_ >  22:10 rouge_ >ラルスだけではない、よれば姦しいくせに、王女や騎士たちの前では礼儀正しいメイド達。 22:10 rouge_ >老いてなお幾多のデュエルに勝利し続ける鋼騎士カイエンを筆頭とし、その弟子グラスパや多数の優秀な人材を抱えた騎士たち。 22:10 rouge_ >全ての人間と、しっかりと会話していたわけではない。 だが、同じ家で暮らす仲間であった。 ここは、そんな思い出が詰まった、家、だった。  22:10 rouge_ >  22:10 rouge_ >………なぜ今更、ラビリンスシティの外れに落ちた際に駆動機関が破壊され、放棄されたこのカーゴに用があるかといえば、単純である。 22:10 rouge_ >カルミアの鋼騎が破損した。 予備パーツはラビリンスシティでももちろん手に入るわけだが、このカーゴから持ち出せなかったパーツの中に、同じものがあった。 22:10 rouge_ >それを取りにきた、それだけのこと。 パーツの回収を終えて、ふらりと、このかつて自室に立ち寄った。 22:10 rouge_ >【 イオ 】 「………カイエン爺さんは、カイエン様なんて呼んだら怒るんだものな。 爺さんでいい、なんてさ。」 22:10 rouge_ >  22:10 rouge_ >かの鋼騎士が、体を鍛えたい、なんていった自分に貸してくれた、書物を手に取る。 …回収し忘れていたものがここにあった。 22:11 rouge_ >心も鍛えねばならんからの、なんていって笑いながら。 ……もう見ることの出来ない表情を心に描く。…それは日をすごすたびに、消えていくもの。 22:11 rouge_ >次第に、色あせていく。 22:11 rouge_ >   22:11 rouge_ >……部屋のものを手に取りながら、持ち主の思い出に浸る。 そんな時間が思ったより長く経過していた。 22:25 hikami >  22:25 hikami >……一言で言えば“苦い思い”と、なる。 22:25 hikami >激戦、エルスゴーラで最後に遭遇したのはそんな二文字で片付くモノでは到底無く……別の文字こそが相応しい代物、だった。 22:25 hikami >その時は力及ばず……こうして異郷の地に、在る。 22:25 hikami >異郷においても……また“苦い思い”に遭遇していた。 22:25 hikami >レウカンサ程ではないにせよ、十分な強度と頑健さを誇る筈のルークが一度ならず数度、その装甲に“傷”を受けていた。 22:25 hikami >装甲の表面、及び、盾部に相当する部位への“傷”ならば……己が役割としては当然のもの。 22:25 hikami >しかし……抜かれているのだ。 22:25 hikami >それも、ただそれだけ、で済んだのは異邦の魔術、自分たちの行使するのとはまた違った様式の魔術に拠る所が大きかった。 22:25 hikami >―――それをして尚、ついに先日は……防衛の際に真っ先に犠牲になる左腕が、盛大に破損した。 22:25 hikami >メンテナンスのアテも出力増強のアテもついた、が……それでも、出来るものは極力自前で済ませるべき、だろう。 22:25 hikami >仮にも自分が載る物、ルーク、の名を冠した制式量産期の一種、今までは、搭乗そのものに難色を示された“真正面で護るための機体”であった。 22:25 hikami >適正としては相応しく、代用するには申し分ない、そして、そうであるが故にもっとも壊れやすく、一番多く積み込んでいた部品。 22:25 hikami >目的物を探す合間、一応の危険地域に存在するカーゴである事もあり伴った彼が…… 22:25 hikami >【カルミア】「……イオ?」 22:25 hikami >流石に、遅い、か。 22:25 hikami >ついでに色々整頓してみよう、そう発案したのは自分であり、ならばと先んじて片付けに向かったのは確か、だが…… 22:25 hikami >足を向けたのはある、はずの部屋、ああ、そういえば……思い返し、内心で舌打ち。 22:25 hikami >いる、はずの……彼がこのカーゴ内でもっとも多くの時間を過ごした筈の部屋の戸を、無造作にあけた。 22:25 hikami >  22:30 rouge_ >【 イオ 】 「……!?」                いつの間にか座り込んでいた身体を反射的に立ち上がらせる。  ばさり、と、本が落ちた。                   そして、入ってきた人間を油断なく見つめる……油断するまでもなく、見知った人物であったのだけれども。  むしろ、自分の行動は不敬以外の何者でもなかった。                 「………カルミア様。 申し訳ありません。」                大方、時間をここで過ごしすぎたのだろう。  頭を下げる。 22:34 hikami >【カルミア】「……―――やっぱ、あたしも同行すべきだったわね。イオ一人で……“此処”を任せるンじゃなかったわ」                それでも、半ば予測の範囲ではあったのだろう。……ただ、表情は、曇った。常の気楽さも無く、ただ、重いだけの……それこそ、葬儀の席や何かで纏う種の仮面。違い、とすれば言葉の端そのものに気合、と言うものが欠けている事だろうか               「ま、いーわ。……で、片付け、は……―――終わるわきゃ、ないわね」                早々に放棄した一角、でもあるのだから無理もない。嘆息と共に荒れ放題の部屋を見回していた 22:38 rouge_ >【 イオ 】 「すみません、流石に、ここまで荒れていては、短時間では。」                それでも、命令されれば一人でだってこの参上を片付けて見せるのが使用人だが。                「私物を物色するのに手間取ってしまいました、申し訳ありません。」                頭を下げたまま、姿勢を正し、言葉を続ける。 ……カルミアは、この部屋の住人だった人間のことを覚えているだろうか。 この部屋を見て、何か思うのだろうか。  …分からない。 彼女は、それを話題には決してしようとしないから。 22:44 hikami >【カルミア】「まー……無茶な事は流石に、ね。……判りやすい場所で“自分の部屋”って指定したのは……ま、あたしのミス、よね」                王族用でも騎士用でもない居住空間、広さもさることながら、鋼騎や鉄騎を収納、格納している場所や、雑品を納めた倉庫を除けば衝撃にもっとも弱い部分、でもあるだろう。……ここ数日の生活が、そんな単純な事を抜け落ちさせていた               「………………イオは、どーなの?」                脈絡も無い、その問いかけ。空間……縁、の無い者にとって見ればただ荒れただけの、故郷に居た頃であれば、ただ、狭い、とだけ思っただろう空間。               「ぁー……―――どう、じゃ、ない、か。……あたしの部屋はこないだ、片付けた。要るモノは運び込んだし、諦めるべきは諦めた。……イオは、自分のモノとか、無事だったわけ?……物色するにしたって……言っちゃ難だけど、酷い有様よね」                言うも去るでも、手伝う、でもない。倒れていた安っぽい木の椅子を建て直し、腰掛ける、ただその動き。 22:51 rouge_ >【 イオ 】 「そう、私物があるわけでもありませんから。」                 本当に、何があるわけでもないのだ。  もとより私物の多いタイプでもなかった。 故郷の弟に買ったパーリスでの土産。 借りた数冊の本。  その程度だ、あるものなど。                 「……」                酷い有様。  そのまま、といえばそのままの言葉だが……。  ……だからこそ、酷い有様で倒れていった人間のことを思い出し、頭を下げたまま、唇を噛む。  珍しく、主君への言葉を返せない。 22:56 hikami >【カルミア】「……そ。だったら……―――」                軽く、頬杖。この椅子に座ろうとした段階でまず、部屋の誰かが止めに入る……続いて頬杖、これも、ひじを突いた、時点で小言が飛ぶ。……そう、このカーゴは少なくとも“気を抜けた”場所のひとつ、であったのは確かなのだから               「ンで。……どーする、イオ。“此処を片付ける事”……やめンなら今のうちよ。……実際こうして目にすると随分なコト言ったって自覚、沸いてきたわ」 23:01 rouge_ >【 イオ 】 「………。」                ぐ、と、顔を上げる。                 「カルミア様なら………このカーゴで誰かを…」                思い出したりすることは、ないんですか?  ……そんな言葉が、喉まで出掛かる。                 「失言です。  ……忘れてください。  ………俺は……片付けろといわれるなら、片付けますし。  引き上げるなら、引き上げます。  …使用人、ですから。」 23:07 hikami >【カルミア】「……―――“イオ”?」                嗜めるような、その口調。じっ、と、真っ直ぐに相手の表情へと視線を飛ばして               「……あたしは、あたしで居られる時間を作りたかった。イオが“恐れ多い”って言っても、あたしは、イオにこーして話すの止めなかった。                ……じーさんには怒られたけどね、やるべき場所じゃちゃんとやってたつもり、な分、そーんなでもなかったけど。……こっちのブロックに居るの見つかると『姫』から始まる小言の時間、だもの。……ンで、イオ。                ……あたしは行軍中も、イオ達と、それなりに話してたつもりよ。騎士の子と違ってそーそー同行する事も無かったけどさ。……わざわざ、取りに戻る必要が残ってンのに、わざわざ、ラヴィスパレスに拠点移したの、何も寝床のためだけ、とか。……思っちゃ無いわよね」 23:11 rouge_ >【 イオ 】 「………すみません。」                彼女だって、気にしていないはずがないのだ。  …俺と、抱いている感情は違うかもしれないけど…それでも、仕える一人一人を、認識していた。                 「………本当に、すみません。」                ……所詮、使用人だから。  感じもしないんじゃないのか、って。  …だから、話題にしないんじゃないかって。 ……そんな邪推を、一瞬でもしてしまった。                 「………もう会えない人間が…多すぎる。」 23:17 hikami >【カルミア】「―――逢えない、わよね。じーさんの小言も、ちょっときけそーにない。……モリオンが未だにイオの手元で健在で、イオは……最近、随分モリオンをモノにしてる。                あたしが真名を知ってたからって、じーさんの癖が残ったままのモリオンがそのまま、イオに扱えるのは……そもそも、おかしいもの。ルークとは違って、モリオンは、じーさん専用。……専用、じゃ“なくなった”って事なンだからね」                はぁ、と、漏らすのは深い吐息……かくん、と、頬杖のまま頭を下げた               「……イオ、今から言うのは“愚痴”よ。あたしの“愚痴”……―――イオに向けた言葉でもなんでもない愚痴。……あたしは“防衛機”に乗ってたってーのに。                ……カーゴをこーした責任がある、あたしが“撃墜”を認めれば、あたしが抜かれた以上……本丸、このカーゴが落ちたコトになる。……その意味が判ンない程、馬鹿のつもりはないわ。」 23:25 rouge_ >【 イオ 】 「……。」                 ラビリンスシティについてからの、気の遠くなるような訓練のおかげで、少しはコツもつかめてきた…様な気がする。  そういってもらえるのは、うれしい。  …モリオンに関しては…どうなのだろう。                 使えるはつかっているが、先代の使い手に比べれば、随分と力任せで、力押しだ。                  「………俺は………正直いろんなことがありすぎて、考えるの、止めてました。  ………止めてたはずなのに…なんか。」 23:30 hikami >【カルミア】「ンで。レウカンサが修理できないのは事実。……あの子はその素材そのものが特殊すぎる、足りない構成材が多すぎる。そーはいっても……目処はついたンだもの。本気で集中すれば、きっと直せンだと思うわ、あの子も。                ……それでも、あたしはグランデを駆ってる、龍種に当たるのも、そーだし、グランデをそもそも使わないよーな外交取引に出てる事だってあったのは知ってンでしょ?―――未練なのよ、認めづらいだけ。あたしが“撃墜された証拠”だもの、レウカンサは」                これまで避けていた、言葉……撃墜、と言う、決定的なモノ。嘆息と共に吐き出し……視線を前に戻した               「……ンで、止めてたはずのイオは。……なンか思ったわけ?此処で」 23:38 rouge_ >     カルミアの言葉に続くように、言葉を重ねる。          【 イオ 】 「………それ、なんだと思います。 認めたくなかった。 ……姫様を心の中で罵りながら、姫様のその撃墜を認めないって感情に、逃げてた…そんな感じです。   ………もう会えないのは、分かってる。 ……でも、姫様は認めてない。                …俺の主であるカルミア様が認めてないなら、俺が認めるわけにはいかないって。 …死んだなんて、なかったんだ。 ………俺たちが、こっちに飛ばされただけなんだ、って。  ………すみません、自分でも、何言ってるのか。」                がりがりと頭を掻く。                「………でもやっぱり、ここにきたら、やっぱり事実だって思い知らされて。 …胸に穴が開いたのも確かだけど、やらなきゃならないことは確かにあって………」 23:43 hikami >【カルミア】「……あたしより“此処に居た人”との繋がりはイオのほーが上、だもの。仕方ないンじゃない?」                軽く、そう、言葉の運びだけは“軽く”したもの。……しかし、珍しく繕いそこねた。声のトーンは先程までの重いまま、放ってから気づいたその意味に……軽く舌打ちしてしまって               「―――こーなったら、もー……お互いごまかすだけ無駄ね。……あたし達は……」                そこ、まで言って言葉を区切る。言えばもう、後戻りはできない……そう気づいてのものか、ぐるりと周囲を見渡す。二人、であること、此処が“故郷からのもの”であること……到底戻しえない破壊、の余波をありありと残す部屋、であること、今更の、確認行為               「……撃墜されたわ。冥魔の手によって。ンで―――こっちに飛ばされた。あたしにも何がどーなったか、なんて覚えてないわ。……未だに信じられない事も、多い。あたしが……皆が撃墜できなかった“モノ”を、モリオンを投げ渡したばっかりのイオが撃墜してみせて、そのおかげで……あたしが、こーしてる、って事も、ね」 23:52 rouge_ >【 イオ 】 「本当に俺がそんなこと出来たかなんて、自覚はないんです。  ………じーさん…騎士カイエンの聖石を渡されてからは、無我夢中で……」                言葉を切る。                 「………皆、死んだ。」                口にする。  騎士たちも、メイドたちも、使用人たちも。  ………もう記憶の中にしか居ないのだ。  …改めて。 心に傷とともに、刻む。                 「………姫様は……。  …仇うちとか、考えますか?」                ふと、浮かんだ。 00:00 hikami >【カルミア】「……“誰に”?」                仇、の存在、それすらも曖昧……強いて言えば帰国できた際、カーリィの中枢たるコアを叩く為の討伐戦に参画する事、ぐらいだろうか?……戻る、事そのものが適わぬというのに、だ               「あたしは、自分が強い、なんざ思っちゃ居ないわ。フェダーインじゃあっても塔にも登れず、船団からも漏れた。……それでも、あんな遭遇戦で撃墜される、なんて思っちゃ居なかった。こっちに来てからだって、そーよ。……あたしのグランデの左腕は、少なくともイかれた。                それも、此処で逢った異世界の術式に護られて、ね。しょーじき、ウチの騎士団でもあんだけの防衛魔法張れるのは、知らない。……そんだけ“足りてない”って、事。……あたしが、じーさんに出来るってーなら……足りないのを埋める事ね。あたしにとっての“仇”は、自分の無力さ。                ―――……そーゆー意味じゃ、討てるモンなら、討ちたいモンよね。煮え湯飲まされてぼさーっとしてるなんて、あたしじゃ、ないわ」 00:11 rouge_ >【 イオ 】 「誰に、なんて、漠然としたものがあれば、分かりやすいんですけど、ね。」                 じっと、手のひらを見つめる。                 「冥魔を絶対許さない、とか、そこまでの思考までには、いたらなくて。   ……でも、同じ光景がおきたとき…。  ちょっとはまともでいたい。  …俺は……使用人の癖に聖石をカルミア様に返さないのは、そういうこと、なんだっておもいます。」               「………でも、俺は、姫様は、強いんだ、って、ずっと思ってきました。 技術もそうだし……心も。  ……俺の知ってるカルミア様は、いつでも、輝いてましたから。 人の上に立ってて欲しい、っていうか…なんていうか、やっぱり、あこがれるっていうか……いや、そういうのがいいたいんいじゃなくて…」                唇を噛んで。                 「…足りないなら、足りるようにするしかないってことですよね、結局。」 00:20 hikami >【カルミア】「ん、じーさんの聖石じゃないわ。もう、モリオンは、イオのもの、よ。……こうしてAAAに協力してンのに、態々戦力減らすよーなコト、する気はこれっぽっちも、ないわ。ンで、言ってんでしょ、イオはもー、フェダーインだ、ってね。……鋼機ぐらい、持ってなきゃ戦うに戦えないわ。今は“戦う事”が前提、その手段を自分から手放すンなら、そっちのほーが業腹ね」                とん、と、肘で軽く己の足を突付く。溜息交じりの言葉は……そのまま、カオを伏せさせた               「……―――その必要があるンなら、やらなきゃだめ。王族なンてのは身内以外に弱みを見せたら、そこでゲームオーバー、何がカードになって崩されるか判ったもンじゃない。……あたしが父様に最初に教わった、紫眼持ちとしての心得はそーゆーコトじゃあったンだもの。まー……実際、あたしは“その役割”は嫌いじゃナイわ。気ぃ抜くトコじゃ抜いてたわけ、だしね」                そのまま、軽く、と努めた動きで立ち上がり……軽く、背伸び。―――こつん、と、何かが足に当たりふと、目線をおろす。……見えたのは見覚えのある、本               「……“足りるように”文武両道であるべき、あたしが盾を取っても止めなかったのは精々じーさんぐらい、ただ、それを選ぶンなら覚悟を持てっていったのも、じーさん。……きっと、こーゆーコト言いたいンだと思うわ、だから、まー……足りるよーにするっきゃない、無いものは、持って行く。得られるものは手に入れる、そーして行く事が、あたしの“仇討ち”ね。                ……妄執で戦うべきではない、なんてーのも言われたっけ、じーさんに。だから戦争を仕掛けるンじゃなく、外交でどーにかすべき、戦力は放棄せず、己が領分をただ守護すべし。―――イオも、忘れンじゃないわよ。イオが、あたしと一緒に残った“このカーゴの生き残り”なンだから。……鍛錬と自傷、履き違えたり、とかね」 00:35 rouge_ >【 イオ 】 「……己が領分を守護すべし、か。」                自分の守るべき領分、は、なんだろう。  …自分の身を、最低限守ること?  ……いや違う。 それだけじゃ足りないと、分かってるじゃないか。                「……自分以外にも、力を分けられるような。 そんなフェダーインになりたい。  ………昔から、そんなのにあこがれてました。  ………俺は、不器用らしいですから。  自分にあったやり方を見つけるまで、時間はかかるかもしれないけど。」 00:42 hikami >【カルミア】「……フェダーインへの道は一つじゃぁないわ、イオ。あたしに、モリオンの出力は扱えないし、それこそ、ソーサリーに跨った所で大したコトが出来る気は、しないわ。ンで……イオには“それ”ができる。その分、あたしはルークを駆ればそーそー後衛を崩させや、しない。……言い方は癪だけどね、あたしが受けきる間にイオが潰す、そーやってフォーメーション組めンのは“便利”よ」                他、に言い様もあったろうが……あえて零す冷たい、物言い。ぽん、と、軽く相手の肩口へと触れて               「あたしのほーも、レウカンサの修復に、メティストへの帰還方法、探すもんはいっぱいある上に、こっち、でやることも増えた。……時間は稼ぐもの、最低限、そんだけできりゃ。……あせってミスるより、いーわ。」 00:51 rouge_ >【 イオ 】 「……フォーメーション………。」                改めて、考える。                「………戦場だと、俺も、カルミア様もフェダーイン、なんですよね。   ………フェダーイン、か。」                 戦場でも、従者と主には違いない。  だが、戦場では、同じ場に立つ仲間、でもあるのだ。  …今更そんなことに気づいて、少し、誇らしかった。 組むに値すると、そういってもらえているようで。                 「………おれ、やります。  ……って…あ……す、すみません、わ、私、言葉遣い…!」                さっきから、色々足りていなかったことに、今更気づく。 00:55 hikami >【カルミア】「……言葉遣い、戻さなくていーってば。あたしは、何度も言ってンでしょ?あたしが気ぃ抜いてる時は下手に遠慮するな、って。―――ンで、フェダーイン同士、そーやって“差”を自分で作ると埋まるモンも埋まンないわよ、イオ。……“そっち”のが楽なら、仕方ないけどね、折角上手い具合に話せてたンだから“普通”でいーのよ“普通”で」                ぺし、と、軽く相手の肩を叩く。重い、こと、認め損ねていたコトへの一種のケジメ、それ、をつけたのだから……               「……AAAの“同僚”でしょ、ンで、同じ、フェダーイン。“公式の場”でもナイんだから、気にしないでいーわ。寧ろ“気にしすぎる”コトで気いつかわせるコトもあるンだし。」 01:00 rouge_ >【 イオ 】 「いや、そういわれましてもね…!?  俺は、その、がああ、私は…ええい、うん、この場合は俺、で、良いのか、ああ!?」                肩を叩かれれば、びくんと身体を震わせ、視線を右に左に行ったりきたり。                「……あー、あー。  失礼。  …だからってカルミア様。 俺が普段みたいにこういう風にまで言葉を崩しちまったら、流石に不快だろ?」                ………ある種、やりすぎた。  …不敬もいいところだ。  …言ってから頭を抑える。 01:06 hikami >【カルミア】「ん?いーわよ、別に。……あたしがイオに気ぃつかってナイんだし、イオがコト、此処に来てまで硬くなられるほーが厄介よ。イオがちゃんとしてる間は、あたしもちゃんとしとかないと格好つかないでしょ?」                とはいえ、返すのは事も無げな反応、であり……そのまま、手を離す。僅かの間、きょとん、とした表情を浮かべはしたものの、すぐに常の表情に戻る、程度には動揺は少ない。否、動揺、よりも、満足、が、勝っていた               「―――つーわけ、で。慣れるまで暫くそーやって話すコト。どーしてもやり辛かったら、言葉ぐらい、イオに選ばせたげるわ。あたしは公式の場、それこそ相手が“きちんとした取引相手”である間は王女としての顔を保つつもりじゃいるけど。……こっちに居る間、街中だとかギルドハウスだとかで変に気張るの。                ……―――そろそろやめるわ、無駄な気ぃしてきたもの。“此処”は、あたし達の世界じゃない。けれど、あたし達鋼機の力を必要としてる場所。なら、求められてるのは“アメテュストスに連なるもの”ではなくて、カルミア、であるべき。―――よーやく、決心ついた感じじゃあるけどね」 01:19 rouge_ >【 イオ 】 「ぇえ!?  こ、このままです…かっ…!?  ふ、普段みたいに?  ……俺が、カルミア様に、何も考えてないときの喋り方で喋れって…。  そりゃ、ここじゃ、俺たちも、他の皆も。 力を振るうための戦士だってことは、変わらないけど…」                焦る、焦る……が…。  焦っても仕方のないことに気づく。  彼女の言うとおり、ここは……ラビリンスシティで、メティスト王国を知るものが、ほとんど居ない世界。                 「……カルミア様。  努力は、してみるよ。  …仕事まで、変える気はないけど。  カルミア様の身の回りをするのは、仕事ではあるんですけど……その前に、身体に染み付いてて、好きだ、って言うか…。 そういうことで、いいんだろうか…。 」 01:22 hikami >【カルミア】「……ん」                にぃ、と、軽く口元を緩める。悪戯を思いついた時、その時と同種の―――……気を抜いた時の、楽しい、と感じている時の、笑みを浮かべてみせて               「おーけー、今、イオに仕事抜けられたら、あたしも流石に困るもの。けっこー不便っちゃ不便、流石に異世界……勝手違い多いもの?さ、そんじゃ……―――戻るわよ、イオ。話してたら、喉渇いてきたわ」                そのまま、身を離す。くるり、と、背を向ける動きは流れるようなもの、だが……少し、口元が緩んだまま、締まらない。楽しい、と、思うのは……イオが“イオ”である分か、それとも、溜め込んできた己の咎をこの場で吐き出した分か。……気づくのは、まだ、少し先の話。 01:26 rouge_ >【 イオ 】 「あ、はい……!  ……よ、よし、行こう、か?  ああ、もう、難しいな畜生…!  ああもう、とにかく帰ったらお茶の用意をしますので!!」                そうやって、生真面目に悩むこと自体が、既に素に近いわけだが、自分では大真面目なのだ。