21:05 hikami >……クロエの“傷”の深さを知ったあの日以来、どうにも態度が硬い、と感じ取れる頻度が増えていた。 21:05 hikami >最も、ある種恥らって当然の行為の後、程度としては“何もなかった”と言える程度の感覚―――そう、思っていた。 21:05 hikami >しかし一度呼び覚ましてしまった外傷を、それでも乗り切れる、と思っていたのは些か過信だったのかもしれない。 21:05 hikami >切欠は二点 21:05 hikami >『修養の為にと態々忘却世界に出向いていた事実』 21:05 hikami >『優希との訓練が、それにより唐突に中断したと言う事実』 21:05 hikami >これは……少し此方から動かねばなるまい。 21:05 hikami >嫌世から隠遁を決め込んで以降、些細な事故により面倒を見る事となった少女、優希の件もそう、だが…… 21:05 hikami >【ディルク】「ふむ、存外“人の心配”等と気に掛けるだけの神経が未だ残っていた、と言う事かな」 21:05 hikami >相手の几帳面な性格が幸いしてか、行先、そのものはすぐに知る事が出来た。 21:05 hikami >大樹の居並ぶ“狩猟用”の忘却世界、大公の森での娯楽に物足りなさを覚えた魔王が暇つぶしにゲートを繋げたとは聞くが…… 21:05 hikami >それだけに“狩猟”にも“訓練”にも、実戦形式ならば適したもの、だろう。 21:05 hikami >事実これまでの間にも下級侵魔と思しきモノとは遭遇し……それでも程度は、低すぎた。 21:05 hikami >数だけは揃えるか、単騎であっても一蹴可能な程度、しかし、動く“的”としては申し分はない、大公の森を鑑みるに確かに“暇を潰す”には良い場所だろう。 21:05 hikami >【ディルク】「…………さて、この辺りだとは思うのだが……」 21:05 hikami >辿ったのはそれら雑兵の“死体”と、樹林に穿たれた破砕跡、共食いの可能性を潰しながらであれば遠回りの可能性もあるが、この辺りは他と比べて数が多い。 21:05 hikami >己へと襲撃を試みてくる下級侵魔の数も激減している―――休養地か、はては……一時的に“狩りつくされた”か。 21:05 hikami >どちらとしても、この辺りに、彼女が居る筈だろう、そう思いまた一本、太い幹を持つ歪な大樹を回り込み先へと向かった。 21:06 tuka-neko>ぐるりと大樹を迂回した先、ディルクの視界に飛び込んできたモノは……小山のように堆く積みあがった侵魔達の骸。         圧倒的な水量に押しつぶされ押し流された痕跡を残すそれらの向こうには、ざぁざぁと雨にも似た音を立てて降り頻る滝の飛沫を浴びながら……呆然と立ち尽くす修道女の姿があった。 21:06 tuka-neko>修道女、とは判りはするモノの、それはある意味無残とも言える、かもしれない。トレードマークでもあったベールは失せ濡れた金髪を頬や額に張り付かせ。         衣服も、鉤裂きだらけ。スカートはその下のドロワーズごと引き裂かれ細い足を覗かせ。右袖などは……手袋もろともに毟り取られたらしく、鮮血の伝い落ちる白い腕が剥き出しになっている。 21:06 tuka-neko>ここにやってきたのは今日の早朝。そこからずっと、ろくに休みも食事も取らず神経を張り詰めさせていたらしく、ただでさえ白い肌は青ざめて、やつれる、というほどでは無いものの凄絶な印象を与えるほど。         その……どこか虚ろに彷徨っていた視線が揺らぎ、ディルクを捕らえて……。 21:11 hikami >【ディルク】「……ふむ、予想以上に疲弊している様だね、クロエ」                経過した正確な時間、までは判らない……そもそも、己が此処、を割り出したのも彼女が“出発した”後、なのだ。                故に比較を出す事までは出来なかったが……いっそ惨状とも言える惨殺風景、ウィザード、としてみれば日常の範疇を少し越える程度……余り良い光景では無い、のは確かだが               「……時間だ、クロエ。夕食の時間もとうに過ぎている……休息が、必要だと思うがね?」                気遣い、の響きは其処には無い。ただ“長居しすぎた相手を迎えに来た”……ただ、それだけの無造作さを伴い姿を現し……一歩、相手の側へと踏み込んだ 21:17 tuka-neko>【クロエ】 「……ぁ……ぁぁああぁあああああっ!!!」                ディルクの言葉が耳に入っているのかどうか。否、入ってなどいない。研ぎ澄まされ過ぎた感覚は逆にそれ以外の部分を酷く鈍化させていて。                それが“何”であるかを察知しながらも、“誰”であるかを察知することも出来ず。振り絞るような叫びと共に剥き出しの右腕を振り上げ、自身が腿の半ばまで浸った水を巻き上げ、大きく膨れ上がったソレにじわりと血の匂いを混じらせながら、撃ち出してしまう。                …幸い、と言ってもいいのかどうか。疲労の染み込んだ体では反応も鈍く、いつもよりも狙いが甘い。甘くはあるものの……容赦も何も無いそれは、当たればあたりに転がる骸と同じ運命をたどる事になってしまうだろう。 21:22 hikami >【ディルク】「っ……!」                幾つかの予期、その“予感”のうち……悪い方、が当たっていた。混濁した意識、疲労の極限……“巻き添え”を避けて伴わなかった優希の存在はこの場合幸か不幸か、の判断も付き難い所だろう。                人間、が迎えに出た方がよかった可能性、無差別、である可能性……その両者を同時に思い浮かべつつ―――               「……目を覚ます事だね、クロエ。雑魚なら兎も角……俺を、その体で葬れるとは思わないほうが良いね」                たん、と、軽い歩み。獲物を構える事すらなく斜めにステップを採る形でその水流を回避してみせた 21:28 tuka-neko>【クロエ】 「ぁあぁああああぁああああっっ!!」                呼びかけへの返答は……意味など持ち得ない、ただの叫び。避けられたのならば当たるまで、とばかりに。何度も何度も水流を撃ち出し、ろくに狙いをつけられてもいないそれは森をなぎ払っていく。                撃ちだすたびに、どんどんと血の匂いは濃く、肌は青ざめていって。それでも、攻撃をやめようとはせず。 21:33 hikami >【ディルク】「成る程……止むを得まい」                どうやら……後者、極限、における惑乱の類、だったのだろう。……自嘲気味、軽く、笑み、と取れる角度に唇が歪むも……認識出来ていればそれは挑発、とも映るだろう               「悪くは、思わないで貰おう。……そのまま放置して置くのは、互いに危険だろうからね」                往く度かの回避の後、その数歩で距離を詰め……最後の一歩だけ、コンパスを大きく取っての肉薄、その直後……無造作に、攻撃、の意識を持たぬままのただの一振り。相手の体を地に叩きつける形に右腕を、振るった。 21:38 tuka-neko>【クロエ】 「ぁ、ぐぅっ!!?」                元より、身のこなしは鋭い方でもなく。ましてや足を水に浸らせた状態では到底避けられるモノでもないのだろう。その重い衝撃をまともに食らえば、華奢な体躯はそのまま吹き飛ばされ……ばしゃりと水飛沫を上げ浅瀬に叩きつけられて。                じたばたと、何とか起き上がろうとはするものの唯でさえ疲労やその他で痛めつけられた体は思うようには動いてくれず。十分すぎるほどの時間をディルクに与えてしまう。 21:43 hikami >【ディルク】「っ……もう少し浅く踏み込むべき、だったかね」                振りぬいた腕、その場に叩きつけ、目を覚まさせる程度の筈であった一振りは……やはり“加減”というモノが取れぬ業を再認識させる光景。……しかし、そこ、で躊躇うのでは意味がない、幾度も見たそんな光景……動いている以上息はある、しかし……昏倒できなかった以上“続き”も認識せねばなるまい。                ……となれば次の行動、は、早かった。倒れこんだ“少女”の矮躯を押さえつける形に組み伏せ、傷、を生じた肩へと手をかけ軽く揺すっていた               「……目を覚ませ、クロエ。……よもや狂った訳ではあるまい?」                傷口、と認識しての行為、単純な話……痛み、が、最も覚醒への近道である、との判断であった。 21:50 tuka-neko>【クロエ】 「っ!!?!?っ……ぁ…………っ」                侵魔の鉤爪に抉られろくに手当てもしていなかった傷口、そこを掴まれれば、脳を焼くような鋭い痛みが走り思わず声にならない悲鳴をあげ……次の瞬間、気が緩んだのだろう、漸くにディルクの顔を見上げて。体中に走る痛みと重さを漸くに自覚して、呆けたような吐息を漏らし               「……でぃる……く……なぜ……?」                と、問いの言葉を発していた。 21:54 hikami >【ディルク】「……ふむ、名前、が判ったのならば……次、は現状を認識する事だね」                圧迫した傷口から滲む相手の鮮血、掌をべっとりと染める紅を指先で絡め取り相手の眼前へと曝す。立て続けに与える“衝撃”により……強引に認識を移そうとしての行為なのだろうが……               「……理解したら力を抜け、暴れぬ、と判ればこの様な形で君を組み伏せるのは少々俺の美学に反するのでね。……改めて聞こうか“状況の重大さは理解している”かね?」 22:00 tuka-neko>【クロエ】 「っ……ぁ……な……なに、が……じゅうだい、だと……ぅ、ぐ、ぅう……」                ディルクの手を染める深紅、肩を中心に体中に走る痛み。ディルクの言っている事は……わからない、でもない。元より無茶と承知で行っていた事なのだ。もっとも、ソレを口にしようとすれば、再びずきりと肩が疼いて……意図するまでもなく、ぐったりと体の力が抜けてしまう。限界などとうの昔に、超えてしまっていた。 22:04 hikami >【ディルク】「君は俺一人を跳ね除ける事も出来ず、その場に倒れ伏しているという事実……この周辺、はそれなりにカタが付いた様だがね、この世界の侵魔は言わば離し飼いなのだろう?……その状況で、今そこに転がっている数と同程度の群れと遭遇したら如何するつもりかね」                力が抜けたのを確認してか、そのまま身を起こす。それでも慎重に……暴れだせば直ぐにでも組み倒せるようにと、最後の手を外すまで相応の時間をかけ……傍らへとしゃがみ込んだ               「正気、であればそのまま横になっていても構わんよ、その状態の君を素直に連れ帰った所でいらぬ騒動を起こしかねん」 22:12 tuka-neko>【クロエ】 「…………そんな、こと……わかって……」                いると、本当に自分でそう思っているのだろうか。それこそ、揺らぐ自信を取り戻す為、とは言え下手をすれば死んでいた……場合によってはもっと酷い事にもなっていただろう事は、頭が冷えた今ならはっきりと判る。                判るけれども……このままでは駄目なのだ。ディルクにすら怯えを感じる様では……これ以上戦う事などできはしない。だからこそ此処に来た、のだ。自信を取り戻す為に……否、自分を騙すために。……到底そんな事など言えるはずも無いから、それ以上は黙りこくるしかなかった。 22:17 hikami >【ディルク】「ふむ、判っているのならば……構わんがね」                本当かどうか、は疑わしい所ではあろう。しゃがみ込んだまま、立ち上がる事もせずに切れ長の視線でクロエの顔を覗き込むような位置、視線を合わせようとの意図……理性の色、を探る、ただそれだけの試みではあるのだが               「……判っている、のならば聞こう。何故、優希にすら心配をかける真似をした?……君ならば判っている、とは思ったのだがね、君のトラウマ、過去の瑕……我等に所以の深い事象を“ 22:17 hikami >瑕”としている、と知った上での問い、にはなるがね。“何故、そうして横たわっている”のかね、此処に居るのもまた―――君の忌避する吸血種だ、先刻、俺が何をしたのかもわかっているだろう?俺の手は“君の血に濡れた”のだが……さて、如何するかね?」 22:29 tuka-neko>【クロエ】 「ぁ…………っ……ぅ、く……っ!?」                降ってくる言葉に、唯でさえ青ざめていた顔色が蒼白に染まる。力の入らない体に鞭打ち水飛沫を跳ね上げながら身を捩じらせ。……それこそ本当に害意のある相手ならとっくにどうにかできるだろう程の時間をかけて、体を起こし、冷え強張った四肢を引きつらせるようにしながら、一歩二歩と後ずさっていく。                普段なら、冷静な時ならば一笑に付していたであろう戯言も、“吸血鬼に対する恐怖”の蘇った今では、真実以上に真実味を帯びて聞こえて。やがてごつりとした大樹に背をぶつけてしまえば……そのままへたり込んでしまう。 22:35 hikami >【ディルク】「……君の“恐怖”は何処にあるのかね?」                その様子を見て追う事も、しない。紅に染まった手指を相手へ差し伸べ……伸ばした、位置。そうなってから漸く零れ始めた血の雫が形を作り水面へと波紋を刻む程の時間、それだけの間ただ、その姿勢を保っていた               「……“怯える為”に力を求めたのかね、クロエ。君の刃は何処へ向けるために手に入れたのかね?―――……君が祈る“神”とは、我等人外のモノではなく、君達人間にこそ守護を与えるモノではないのかね。……その守護が無い筈の俺を前に、怯える必要があるほど……」                そこで、立ち上がる。血、を前にして口元に運ぶでもなく、ただ無造作……地面に軌跡を刻む、と言うだけの用途として腕を振るってみせて               「……“弱い”ものかね、クロエ。君の重ねてきた時間は、吸血を自ら封じ、力を押さえつけ続けた俺にすら怯える程度のモノなのかね?」 22:45 tuka-neko>【クロエ】 「っ…………っ……」                掠れた……言葉にもならない声               「ちがうっ……」                ほんの少しだけ大きくなる               「違うっ!!!!」                三度目に紡がれた言葉は鋭く響き渡り。同時に……ディルクの足元から大量の水が中空に舞い上がる。暴発、ではない。怯えによる反射、でこそあるものの、意図を持って紡がれた荒れ狂う“力”が……“吸血鬼”へと、解き放たれた。 22:50 hikami >【ディルク】「ふむ……」                その水流、避ける、動きを取りこそすれども……完全に回避出来る事は、なかった。先刻とは違い、狙って放たれた一撃……対魔戦闘に得手を置くでもなく、抵抗力も従前以下のモノ……回避行動の最中に取り残された左腕が濁流へと、巻き込まれ―――               「……十分、とは思うが、ね。……君の一撃は我等吸血種にも痛打を与える事が出来る。……怯える、必要は―――あるかね?」                迸った水流、巻き込まれた余波で黒衣はぐっしょりと濡れ、半ば押しつぶされた様になった左腕は力なく、そのまま垂れ下がっていた―――受けて見せる、その慢心が無かった訳ではない、思った以上に“持っていかれた”感覚に僅かに眉を顰めてしまった               「……目を覚ませ、クロエ。君の“恐怖”は、何処に、ある?」 23:02 tuka-neko>【クロエ】 「っ…………ぁ……」                その光景に、思わず、言葉を失う。傷つける意図ではなったはずの術、でありながらも。一時の激情が過ぎれば圧し掛かってくるのは、罪悪感。吸血鬼を狩ることに躊躇いなど無いはず……否、彼は吸血鬼と一くくりにしてよいものではない“仲間”。故に……僅かに俯かせ               「Jean=christophe=Malebranche…………父と母を殺し……村人を殺し……私の血を啜った、吸血鬼…………いや……恐ろしいのは……私自身だ……奴を招きいれ……村を滅ぼす原因を作っておきながら……むざむざと生き延びた、生きていて良いはずもない、自分自身が……」 23:08 hikami >【ディルク】「ふむ……」                軽く感覚を失いつつある左腕、だらり、と、垂れ下がったソレをそのままに放置し……地面に垂れ落ちる鮮血、零れ落ちるのは“己”の血。               「君が生きてきた生を否定するのならば喰らう事に躊躇う必要はないが……ならば何故己を磨くのかな、クロエ。“生きる事の許可”を誰かに貰わねば生存できぬ程、俺が愛でて来た“人”と言うモノは弱いとは思っていないが、ね。それとも……再び同じ思いをする事を想い自己を護る為の言葉かな、ソレは。……傷付く事が、怖いかね?」 23:18 tuka-neko>【クロエ】 「っ…そんな……許可……なんてっ……誰か、じゃ、ない………………怖い、よっ……“吸血鬼”を憎んでいないと…自分で自分を殺してしまいそうに、なって…………怖くて……わ、私……ディルクを……殺そうと、して、あ、ぁ……っ!」                溢れるのは、いつもの鎧も棘がきれいに削げ落ちた、少女の言葉。パニックを起こしているのか、その言葉は支離滅裂気味で涙が多分に混じっていて。普段の振る舞いが嘘のように……ディルクの前では二度目となる嗚咽を漏らし始める。 23:23 hikami >【ディルク】「ならば、君に殺されるほど、俺は脆く思えるかね。……少々、それは陶酔しすぎだね」                クッ、と、喉を鳴らすような響きと共に“左腕を持ち上げる”……不老にして、不死、腕の一つ程度、潰れた程度ならば再生する事も出来る……本来かけるべき時間、それを省略した所為で内包するプラーナは相応に削り取られて居たのだが               「少なくともクロエ、君に俺は殺せない。……トドメ、を躊躇うだろうからな。こうして浪々と会話を続けていられる程度には理性的であると、まだ信じているからね。……君が失ったのはイノセントだ、我等、宵闇の魔術がただの暴走者に葬られるとでも想っているのかな」                言葉こそ煽る響き、こつ、と、その眼前、手を伸ばしさえすれば触れられる程の距離へと間合いを詰めた               「喪う事が怖いかね、クロエ。己の意識を、傍らに置いた存在を、人、として、路傍の他者ではなく“個人”として認識したモノを奪い去られるのが怖いかね?」 23:31 tuka-neko>【クロエ】 「で、もっ……」                避けられたものも含めれば、解き放った術式は数え切れないほど。実際に“殺せ”てなどいないけれども、“殺そう”としたことは事実。触れられそうなほどに近づかれても今度は逃げようとはせず、深く俯き、痛みも無視して祈るように手を組んで……               「……喪う事は……っ……怖い……大切な人たちを……私自身を……失くしてしまうのは……もう……嫌……」                いまだ涙の混じる声。それでもはっきりとした言葉で、そう答えた。 23:37 hikami >【ディルク】「君は、己が指導し鍛え上げている筈の優希を信じる事も出来ないのかね?彼女は、依然未熟ではあるが任務を一つ、無事に果たして見せた。簡単な物ではあったが、戦闘を伴うものであった、とも聞いているからね。―――生き残り、その事を我等に示して見せた。君が今、歩んでいる場所は無碍に殺され、屠られ、嬲られるだけの無力な集団かね?」                ぽん、と、右腕、僅かに相手の血が残ったまま、ではあるが……比較的無事な側の手を、髪の上へと載せてみせて               「今はまだ遠いかもしれないがね、俺は少なくとも君の命を“失って良いもの”とは捉えていない。優希にせよ、俺に“来なかった”事を告げ、愚痴を零す程度には君、と言う存在を認識している。……イノセントから突如ウィザードとなりこの世の裏に位置する知識を文字通り叩き込んでいる君を、だ。                ……保護し、甘やかしている訳ではなかろう?アレで“教わる身”としては中々勤勉なものだ。判らぬ事、覚えるべきこと……それをカードに刻み持ち歩く。……君は“そうして君を信じている”彼女すらも信じる事が怖いかね?」 23:45 tuka-neko>【クロエ】 「信じて、いないわけじゃ………………ううん……多分、どこか、信じきれなかった…違う……怖かった。皆……そう……大切な人になって……喪われるのが、怖かった…………あの子を……貴方を、皆を……真正面から見つめる事が……怖かった」                訥々と紡ぐ言葉。それは……喪われる事を恐れる余り、大切なものを作ろうとしない、逃げ。それをやっと、自分で認識する。元より強いとは思っていなかったけれども、ああ、なんて自分は弱いんだろう… 23:52 hikami >【ディルク】「生とはいずれ、喪われるもの、ではあるからね。その事実に怯える事そのものは否定できる物ではなかろう、だが……」                ぽん、と、そのまま、指先を髪を梳く様にと動かす。逃れる、その動きを許さぬ程度には強く、それでも痛みを与えぬ程度には加減した動き、として               「喪うと決めてしまえば何一つ手に入らぬ、己を否定し、自己を崩壊させては―――君の嫌うマールブランシェの血族と同じ運命を辿る事になるな。マールブランシェはその厳密な血統主義故に“人を愛すること”を避け、我等吸血種の社会をこそ形成するためのルールを創った。                ―――禁を犯したものがただ、一人出ただけ、その粛清すらも同胞を信じる事をしなかった者の末路だ。……君は、そんな道を辿りたいかね?」 00:12 away-neko>【クロエ】 「っ……い……いやっ……そんなの……あ、あいつと同じ、なんて……嫌っ!!」                マールブランシェと聞けばこみ上げてくるのは嫌悪の情。ただしそれは既に“吸血鬼”と言う種にでもなく“マールブランシェ”と言う名でもなく、純然たる個人、ジャン=クリストフ=マールブランシェへのモノ。                その情に任せ勢いよくかぶりを振れば、濡れた髪は梳かれるがままに濡れた背からはがれ雫を飛び散らせて。……そこにちらりと、小さな不安がよぎる。思い切り突き放してしまった優希や皆、“大切なモノ”となりえる存在への距離が、判らなくて。 00:19 hikami >【ディルク】「ならば歩む事だね、クロエ。……君が“彼”に襲われて以来、立ち止まった意識を、今に戻す事だ。簡単に、とはいかぬだろうが―――……幸い、足して割れば丁度良さそうな人材が“傍”に居るだろう?」                そのまま指先は頬、軽く撫で、上を向かせるようにと顎先へと滑らせて行って               「……優希の無鉄砲さを見習え、とは言わないがね。彼女は喪った状態から目前の敵を見据えている。己を忌避するのではなく、その無知が故に突き進もうとしているからね。……君に預けたのだよ、クロエ。“君ならば、彼女にウィザードとしての技術を教え込める”と俺が認めてね。                ……ならば其処から始めれば良かろう、まぁ最も……優希は随分な跳ね返りだから少々苦労はするだろうが、それこそ君の信奉する神の与えた試練、といった所だろう」                口元を緩め、ただ常と同じく皮肉げな表情、向ける言葉も、仕草も、それらは“変わらぬ”もの               「数百の時を生きて尚掴めぬもの、数十と生きずに掴めると慢心はしない事だな、クロエ。……歩むも、止まるも、生かすも喪うも全ては君の選択だ。さて―――……“立てるかね”?」 00:28 away-neko>【クロエ】 「……………………当たり前、だ……っ」                答えるのは短い、いつもの口調。痛みに眉根を寄せながらもぐしぐしと手の甲で目元や頬を拭い、ふらつきながらも……へたり込んでいる間に幾ばくか体力は戻ったのか、何とか立ち上がって。自分よりも随分と高い位置にあるディルクの顔を……いつもよりも幾ばくかは柔らかい、それでいて強気な表情で睨みつけて。 00:31 hikami >【ディルク】「―――ふむ」                立ち上がる行為、負傷者、でありながら……手は、貸さない。触れていた指先すらも引っ込め、ただ“立ち上がる”事そのもの……ただ、そんな単純な行為を眺めていた               「少しはマシな表情になったね、クロエ。やはり君は美しい、俺の最初の見立てに間違いは無かった、と言う事だね」                あくまでも軽いその口調、再度伸ばす指先はそんな相手の金糸を掬い、梳かす様にと、男、としては細い指を這わせてみせて 00:34 away-neko>【クロエ】 「ふん、戯言を……言っておくが、最早吸血鬼だから云々は言うつもりはないが……やはり軽薄な男は嫌いなのだ……っつ、ぅっ?!」                不機嫌そうに唸りながらも髪に触れるディルクの手を乱暴に振り払えば……それが使い慣れた右腕であったが故に、肩口からは鋭い痛みが走って。辛うじて蹲る事はなかったものの               「……何故私は、治癒の術を覚えてこなかったんだ……」                と、つい愚痴ってしまう。 00:39 hikami >【ディルク】「ふむ、言葉、も戻ったな。後は……」                たん、と、背後の樹木、それへと手を触れ……半ば覆いかぶさるようにとその動きを遮る               「……その惨状を如何にかせねばなるまいね。俺は兎も角、返り血とも失血とも知らんが随分な有様だからね、今の君は。そのまま戻るというのならば連れ帰るが―――……幸いそこは水場だ、汚れを清めるのならば、見張りでもしておこうか?……何、治癒の術が今“無い”のならば覚えればよかろう。聖職なのだからね、君は。                ……優希と共に学ぶと良い、彼女を指導し、導きながら君の“破壊願望”ではない、己が“何処に居るのかの再認識”を充足させるといい」 00:44 away-neko>【クロエ】 「ああ……そのつも…………ぇ……ぁ……っ!?!?!!?!?!」                事ここに至って漸く、自らの格好の危うさに気が付いたらしい。見る間にその頬が真っ赤に染まっていって……               「み……見るな―――――――――――――――――――っ!」                何とか立ち直れた事に関する恩義とか、そう言うのが見事に全部吹き飛んだ。痛むはずの腕もアドレナリン放出全開とばかりに酷使し、覆いかぶさってくるディルクの胴、鳩尾目掛けて拳を振り上げる 00:48 hikami >【ディルク】「ぐっ……!?」                予想外、ではあったのだろう―――活を入れる意図も、こう、と言葉を向ければ反発を生むであろう事も常、ならば、と言う計算のうち。……その計算の外は、こと此処へ来て直接打撃が来る、と言う“いつも通り”の行動への備え……全くの無防備、と言う訳でもなかった訳だが……相変わらず見事に炸裂した拳は呼気を詰まらせていた               「……成る程、それだけ回復していれば十分、か」                浮かぶのは少し乾いた笑み、ずる、と、プラーナの消耗分が祟ったか、傍らの樹木へと逆に、こちらが身を預ける事となっていた。 00:57 away-neko>【クロエ】 「まったく……って、お、おい、ディルク?!!?」                術士系たる自分の拳でそこまでふらつくのが信じられなかったのか。ディルクが樹にもたれかかれば慌てたような声を上げる。……そういえばそもそも直撃こそは避けていたものの、“水流”をぶちかましていたのだ。此処までの道中も考えれば、消耗だってしている筈だろう。                そこまで思い至れば……暫し迷った挙句。先ほどの打撃のショックで開いたのか、再び血が滲み始めた肩を差し出していた。 01:02 hikami >【ディルク】「……何、少々無茶をしたのは確か、だからね。不死の身とて自己の生命維持に回す分の魔力には限りがある。……油断があった、と否定はせんよ、まさか傷付いた腕で拳を振るう、とはね」                クッ、と、むけて見せるのは愉しげな表情、これならば大丈夫だろう、そう、想ったが……               「……嗚呼、貰う、と……そう言えば宣言していたのだったか。」                向けられる行為、はた、と、思い至れば身を起こし…………軽く抱き寄せるような動き、首筋、ではなく、肩口。牙、ではなく舌先を触れさせ、掬い取る様にと、擽るようにと滲み出る分、その僅かな量を舐めとっていた。 01:07 away-neko>【クロエ】 「っ…………ぁ、く……ぅっ!」                傷口に“暖かい”舌の感触を感じれば……びくりと背筋が震え掠れた吐息が漏れる。痛みでもなく怯えでもなく、それらとはまったく別の感覚……はっきり言ってしまえば、心地よさ、なのだが……によるもの。ソレを自覚すれば再び顔色は茹で上がって……そのままくたりと、ディルクにもたれかかってしまう。 01:10 hikami >【ディルク】「……“まだ、この程度ではない”よ、クロエ?」                その反応を悟ってか向ける軽い言葉、それでも……約束、は、違えられる事は無かった。身を起こし、凭れる小柄を軽く抱き寄せ……流石に聖職、聖痕を持つモノの血、と言うだけの事はあったのだろう、未だ行き渡りはしていないものの……常よりも体力の回復としては十分な速さを取り戻していた               「素直、に言えば助かるね、クロエ。……やはり、俺は吸血種、美女の血、と言うモノは心地よいものだからね」 01:17 away-neko>【クロエ】 「……ぁ……ぅう……う、うるさい……余計な事を言ってないで……早く、済ませろ……」                未だに自分の風貌については自覚がないのか小さくかぶりを振りながら。ディルクを振り払う事もせず――その実余力がないだけなのだが――大人しく身体を預けて、しまう。流石に気恥ずかしさは隠せないのか俯いたまま、奇妙な眩暈を感じたのか微かに熱っぽいため息をついた。 01:24 hikami >【ディルク】「……いや、問題ないよ。“滲んでいる分”はもう、貰ったからね」                その言葉と共に唇を離し、舌先に残る血を飲み干す……地面を踏みしめる力強さも従前の、とは言わぬまでも九割方、これならば服の汚れを除けば“何も無かった”と偽る事も出来るだろう               「……さて、では戻るとしよう。余り長居しすぎても……ミイラ取りがミイラになったと思われかねないからね」                そ、っと、その身を離しエスコートするようにと歩み始めようとし……この分、ならば、多少はマシだろう。……先、がどうなるか。帰った後に何がまっているか、ささやかな頭痛の種は残ったままではあるが…… 01:35 away-neko>【クロエ】 「っ……ぁ……」                身体が離れれば……その矮躯はくずおれ地面に倒れこむ。そもそも体力に乏しい身でありながら朝から濡れ鼠でいた上、疲労、失血と良い条件を見つけるほうが大変と言う状況。ディルクが来てくれたからこそまだよかったものの、倒れるのも当然といえば当然。気が緩んだせいかあっさりと意識を手放してしまい……