21:09 hikami >狭界と言えど、そしてその統治者が魔王であるとは言えど今ここ、ラビリンスシティは数多の種が入り混じる坩堝の様な状況となっていた。 21:09 hikami >その為か裏通りには安宿めいた酒場も存在しており……雑多な通りのある意味日常風景の一つ。 21:09 hikami >【酔客】  「ぉ、ねーちゃん、一人酒かぃ?なーなー、だったら俺と一緒に呑もうぜ、一人はさみしいだろぉぅ?」 21:09 hikami >赤ら顔の男、イノセントではあるまいがまっとうな人間、とも思えぬ風体……目をつけた対象はこうした場では一際視線を集める美貌の修道女であった。 21:09 hikami >【酔客】  「っても、安酒しかねぇけどな、ねーちゃんが一緒に呑んでくれりゃぁ奢ってやるからよぅ」 21:09 hikami >そんな“日常”故にこの段階で止めに入る程、ある種の義侠心をもったモノが集まり辛い場所でもある所為なのか…… 21:09 hikami >好奇か、興味か、それとも同情か、数人の視線を集める事となったその騒ぎの外巻きの一人として男はカウンター席からその光景へと視線を向け――― 21:09 hikami >【ディルク】「……幾百と年月を重ねても雑種の行動は変わらんか……しかし……」 21:09 hikami >関わりあいになるのも面倒、以前に美意識に反する小競り合い……そんなモノに発展するかは判らぬものの、興味を抱いたのは“被害者”の側。 21:09 hikami >【ディルク】「幾百と年月を重ねても変わらずに在るモノもある、か。さて……」 21:09 hikami >店内には雑多な服装が溢れており統一感と言うモノが存在しない状況ではあれど、その中にあって尚も浮く仕立ての良いスーツ。 21:09 hikami >騒動を予期してか、男曰くの“安酒”の代価に上乗せした金貨をカウンターへと置くと挙動を感じさせぬ緩やかさでその身を動かした。 21:14 tuka-neko>【クロエ】 「……結構。こちらとしてもあまりのんびりとはしていられないので……」                と、絡んでくる男ににべもなく言葉を返すのは……酒場という場所にはそぐわない修道女服の小柄な少女。ただ、そのすました顔は、このような場所でなくとも目立つ程に整っているようで…… 21:22 hikami >【酔客】  「つれない事言うなよ、ねーちゃん、なぁ?」                どうやら相当酔いが回っているのだろう、足取りの危うさからその酒量は悟れる程度……ふらりと、よろけたのかそれとも意図してかクロエの居るテーブルへと肘を付き……ぷはぁ、と、零れる吐息は―――無論、相当酒臭く…… 21:22 hikami >【ディルク】「……酒の飲み方は個々の趣向による、とは言った物だ。お前はお呼びじゃない、とさ」                その会話に割り込むのは長身の姿……それこそ“場違い”に仕立ての整ったスーツを纏い、薄暗い照明下においてすらも色合いの白く見える肌。髪色もその装束と反して白く……それだけに瞳の緋が無闇に際立つ               「諦め時だぞ、どうみても……狙う獲物が不相応だ」 21:26 tuka-neko>【クロエ】 「……?ぁ……!?」                それまで、声をかけてくる男の方は最初に一瞥しただけで目もくれていなかったというのに。新たに聞こえてきた聞きなれぬ男の声の方へと向けられた、どこかうんざりとした表情が、一変する。思わず、それまでついていたテーブルから立ち上がって、ディルクの顔をまじまじと見つめてしまい 21:34 hikami >【酔客】  「なんだぁ兄ちゃ―――…」                男の言葉は邪魔を受けた方にか最後の言葉にか怒気を孕み、新たに現れた長身の側へと掴みかかろうとした所で……途切れる事となる。 21:34 hikami >【ディルク】「……“正当防衛”とは言わないがな。酒とツマミに汚れた手で触れさせる気もない。―――非戦区域を感謝するんだな、雑種」                所詮は一般、に類する者と異形の差、身をかわす動きのままに足払い一つ……ゴッ、と、見た目に似合わぬ硬質な音と共に転倒し……見下ろす凄絶な表情に不利を悟ったか、そのまま遁走へと移っていた               「……ん?ああ、無粋な真似だったかな?美人が醜男に絡まれている光景はどうにも美しく無くてね」 21:38 tuka-neko>【クロエ】 「……いや……助かった。礼を言う……だが……」                と、妙に強張った顔のまま、その体躯に似合う声で、似合わない口調でありがとうと言って。ただ……しばらくしてふと、首を傾げる。つい、警戒心もそっちのけで               「……美人、とは、誰のことだ?」                と問い返してしまう 21:42 hikami >【ディルク】「ふむ……怖がらせたかな」                遁走した男を一瞥すればそのまま表情から険を抜く。……それでも種の特性か人間的な容姿とは若干離れており、纏う風合いも此処では珍しくは無かろうが夜闇に属する類のモノ               「怖がらなくても良い、俺に美人に傷を与える趣味は無いからな。―――可笑しな事を言うな、凡百の者と比して目を引く美貌を持つ張本人から聞く言葉とは思えないな」 21:45 tuka-neko>【クロエ】 「別に恐れているわけではない。……私、のことか?……目は確かか?……まあ、ともあれ…感謝こそすれど、私には貴方に付き合う謂れも義理もない。ここで失礼させてもらおう」                このような軽薄なタイプは苦手なのか。はたまた別に理由があるのか。ディルクの言葉にいちいちかぶりを振りながらも立ち上がり、勘定を置いて店を出ようとしてしまう 21:50 hikami >【ディルク】「無論、この両眼に障害は無いな、むしろ、あってもらっては困る」                さて、これで邪魔は―――などと思った矢先の行動、さて深追いは禁物とは言うが……               「まぁ、そう無碍にせずとも良かろう?―――“ウィザード”だろう、君も」                装いも然り、それ以上に纏う風合いからの判断……そもそもこの言葉そのものに慣れない所ではあるのだが……それならば好都合、話す事で掴めるモノもあるだろう、それが美人であれば尚更に―――そんな算段の元に去り行く姿をそのまま、追う。歩調を速めるまでもなく、身長差の成せる歩幅で店外で容易に追いつく事は出来るだろうと。 21:56 tuka-neko>【クロエ】 「……ああ、その通りだ、”吸血鬼”。ふん、貴様、なぜついてくる?……わざわざ余計な揉め事を引き起こすまでもないと、気を利かせたつもりだったのだがな」                と、先ほどとはうって変わった棘だらけの攻撃的な言葉を叩きつけながら、ふいと表通りから外れ薄暗い路地裏へと歩を向ける。そちらが目的地、というわけでもないのか、道が分かれるたびに、先を確認して人気のない方を選んでいるような? 22:03 hikami >【ディルク】「……へぇ……」                隠すつもりも無くば見破られたとて痛くもない。楽しげに歪む口元の端からは長く尖った犬歯が覗き、その事実が相手の言葉が正解である事を容易く肯定するだろう               「ナンパを諌めた直後、と言うのも余り美しくは無いと思うけどね、名前も知らずに別れるには実に惜しい、美人と言うだけではなく……美しい聖職者、さらには先刻の様な旅人が気楽に立ち寄るでもない場所に居る、となれば……何処かに滞在中と考えるが自然。此処での逗留者は一応は協力関係にある、とも聞いているからな、なら……お近づきになっておくのも良い選択、と思ってね」 22:07 tuka-neko>【クロエ】 「誰が吸血鬼などに……っ!!……………………しかし…………む、ぅ……」                思わずそう怒鳴りかけるものの。確かに、人間と共闘する吸血鬼がいることくらいは知っているし、この街のことも考えれば…不本意ながらもディルクの言葉に説得力を感じてしまい               「……クロエ、だ……」                と、小さく自分の名を名乗るだけは名乗って 22:13 hikami >【ディルク】「そう毛嫌いするものでも無いだろう?少なくともこの街では危害を加えるつもりもなければ、先刻の通り俺は美人と敵対する意思は無い。それが明確な敵であれば別だが少なくともそう、とも見えない。……睨んでは居ても殺気がない、それに、美人はそういう表情も良く似合う」                クッ、と小さく喉を鳴らす形。名を聞ければ此方も、と軽く礼の形をとって               「……先に名乗らせてしまったのは失策だったね、クロエ。俺はDirk=Toreador=Malebranche……ディルクで構わない、家名で呼ばれると色々と“誤解”を受けやすいからね」 22:17 tuka-neko>【クロエ】 「…………マールブランシェ……だと…………?」                殺気がないと言われた矢先、ディルクの名乗りを聞いた途端に。ただでさえ刺々しかった声が冷えてゆき。ディルクを睨む目に、憎しみが浮かんで               「……余計な揉め事は起こすまいとは思ったが……貴様がマールブランシェに連なる吸血鬼と言うのならば……話は別だな……」 22:21 hikami >【ディルク】「…………ふむ?」                家名を名乗るリスクは承知の上、だが……冷えた言葉の響きには軽く手を両脇へと広げ、掌も同様にと開く。好意的に見れば非武装を示すものだが……挙措の所為かその装いの所為か、悪意的に見れば抱きつきに来るのを待つにも似た仕草               「“揉め事を起こすつもりがない”のは俺とて同様だったからこそ名乗ったのだ。後々に知れては面倒になりかねない、特に―――これは推測だが、その服装が“こすぷれ”でなければ聖職者だろう?」 22:26 tuka-neko>【クロエ】 「その通り。私は、聖王庁に所属する……神罰代行者だ……そして……吸血鬼は……人を餌としか見ていないような輩は敵だ。私は、そういう連中を狩るためにこの道に入ったのだ」                無防備なその姿にも、身にまとう殺気はおさまらない。僅かに身を屈め、胸元にかけた十字架を握り。一触即発、と言わんばかりに気を張りながら言い放って 22:30 hikami >【ディルク】「……なるほど。“我等”からすれば見事なまでに仇敵関係だな」                そんな気配を見れども無造作な仕草は収める事無く……ただ安全策から視線だけはその挙動を伺うかの如く細められた               「だが“我等”とすればクロエの考えは杞憂だな。背教者会議の現在の方針は“人間との共同戦線”……つまり餌として見る同胞とは志を異にする事になるか。加えて言えば俺個人としての感覚ならば……寧ろクロエは“食料”ではなく“女”として興味があるね、食事を採るだけの相手とするには惜しい、美しさもそうだが……気の強い女は嫌いじゃないからな」 22:35 tuka-neko>【クロエ】 「な…………!?ふ……ふざけるなっ!?そんな言葉っ……」                飄々とした物言いにかぁっと頭に血が昇る。とっさにぐい、と拳を突き出し、魔装を発動させる体勢になりながら……               「誰がっ!マールブランシェを信用などするものかっ!!」                と、叫んで 22:39 hikami >【ディルク】「……Malebrancheの名に反応出来ると言うのは感銘に値するがね」                とん、と、足音は一度のみ。それでも歩く、と言うよりも滑る様な動きで身を動かし……クロエの手首を掴むべく動く。表情を消したその姿はある種伝わる“名”に相応しいものだろうが               「言った所で即座に信用されるとは思っていないが、俺は“殺戮伯”とは違う、むしろToreadorの側にこそ感銘するモノがあるが……“殺戮伯”と血を同じくする祖である事を否定はせんよ」 22:42 tuka-neko>【クロエ】 「ぇ!?あ……っ!?」                踏み込まれれば、咄嗟に一歩、二歩と後ずさって。それでも間合いの見切りが甘かったのか、到底その程度では逃げ切れるものではなくあっさりと手首を捕まれて               「っ……は、離せっ!?」                と、そうなってしまえば魔装を発動させる余裕もなくただじたばたと暴れるばかり。 22:48 hikami >【ディルク】「……ふむ」                思いのほか細く、華奢なその手首……不意に浮かぶ悪戯心か、暴れる姿を膂力で押し込め、ぐい、と、引く。口元の笑みは悪戯げに深まり……引き寄せた動きのまま、舞踏とも似たステップで正面からの軽い抱擁を与えてみせた               「打撃に対して反撃をせず、寧ろ友愛を示す事で俺に敵意が無い、と言う事を理解して欲しい所だがね。俺は“マールブランシェ”ではあるが自分の意思として“人間”に協力している。―――愛でるべきモノを破壊する程に無粋な事もないだろう?」                言い、身を軽く屈める形で耳元へと唇を寄せ……               「―――矛を収めてはくれないかな、クロエ」                甘く、淡く。それこそ囁き口説く様な口調でその言葉を放った。 22:53 tuka-neko>【クロエ】 「ぇ……!?あ……な……ぁ、ぇ!?!?」                気がつけば、視界は質のよい衣装で覆われ。身動きもできないほどに抱きしめられて。あまりのことに一瞬抵抗を忘れ呆けてしまうものの。すぐに混乱した様な声を上げて、何とかその腕を振り解こう、首筋をかばおうと、悲しいまで非力な腕でもがき始めて 22:58 hikami >【ディルク】「……加えて言うが……」                意図を悟ってなのだろう、わざと腕の力を少しだけ緩める……逃れるには難く、それでも身動きそのものは可能な様に。首筋に意識が向けばその分無防備になる場所もある、なんて至極単純な理由               「繰言だが、と言うべきかな。揉め事を起こす気もなければマールブランシェとて生来殺戮に酔っていた訳ではない。そして個人的趣向としては“餌”にするつもりもない。―――噛む気があれば今ので既に牙を突き立てる事が出来る距離に居る事は判っているだろう?」 23:04 tuka-neko>【クロエ】 「っ……そ、それは……し、しかし……?!」                ディルクの言葉に反論しきれないのか言葉尻を揺らがせて、それでもしっかりと首筋をガードして。ただ……そうすれば小柄な割りにふっくらと実った胸元のガードが甘くなり。それでいながらも頭と頬に血が昇っているせいで柔らかな感触を押し付けてしまっていることにも気づけなくて。ただ射抜くような怒ったような目つきでディルクを睨みつけていて 23:11 hikami >【ディルク】「……それに、だ」                その動き、柔らかな感触を堪能する程度の余裕はある訳だが……問題は“それ以上”の悪戯心が沸いてしまう副次効果を呼ぶ。               「さっきも思ったが、クロエはもう少し自分の容姿を自覚した方がいい、抱き寄せたのは俺だが、そうも可愛い抵抗を見せられては……危害を加える意思は無くとも悪戯心ぐらいは沸くぞ?」                その視線から逃れる意図……では、ない。単純にその膨らみをより確かな形で確認しようと思った、と言う単純な欲求に寄る行為。……最も、相手にとって見れば気が気ではなかろう―――               「……クロエは美しい、これだけ騒いでも“騒動にならない”場所の危険性は自覚した方がいいと思うぞ?」                ―――する、と、滑る様な動きで身をずらすと共にエスコートする要領で相手の体制をも僅かにずらし、背後から腰を抱きすくめる様な格好を取って見せた。 23:18 tuka-neko>【クロエ】 「ぁ………っ!?」                背後から抱きすくめられそのようなことを言われてしまえば。漸くに差し迫る”危険”の意味に気がついて……見事なまでに凍り付いてしまう。そっち方面にはとことん縁がなかったのだろう、どう対処すればいいのかもわからぬまま               「……は……はなせ……っ?!」                と、それまでの勢いはどこへ行ったのか、怯えを滲ませた声音で掠れるように言って 23:25 hikami >【ディルク】「言ったろう?“餌としてではなく、女としてこそ魅力を感じる”と」                背後からの抱擁、身長と体格の差の所為ですっぽりと収まってしまう程の小柄は腕の中……ある意味ではおとなしくなった、と言える女の体を抱き寄せる腕はそれでも柔らかく、痛みを与えぬ程度に加減されたもの、だが……               「……さて、離してまた攻撃されては折角の出会いが台無しになる。……今もって無傷である事が“殺戮伯”と俺とに決定的な違いがある、と―――理解して貰えたのならば、離そう。俺は狩る為にクロエを追った訳でもなくば、食う為でもない。―――そう、人間風に言えば……“親しくなる意図”と、言おうか」                ―――だが、その気質までは押さえる事が出来なかったのだろう。右の手指は修道服の前を滑り、指先で擽るような動きと共に腹部から這い上がり……そこで止まればまだ、悪戯、だが……ふにり、と、まるで包み込む様な動き。体躯の割りに育った乳房へと柔らかく、触れた。 23:32 tuka-neko>【クロエ】 「っ……お、女であることなどっ……捨てたのだっ……マールブランシェの名を冠する吸血鬼に、生まれ育った村を滅ぼされて以来、私は……ひぁんっ!?」                修道女の格好こそしてはいるものの、まるで男のような物言いをしているのは其の所為。しかし、さらに言い募ろうとした言葉は……胸元に感じる奇妙な感覚で、途切れた。現代風の下着は身に着けていないのだろう、やけに柔らかい感触が男の手のひらに晒されれば、上がるのは妙に可愛らしい……悲鳴、と言うか喘ぎで               「なななななな、何をするかこの痴れ者めっ?!そ、そのような……は、離せ、離さないかっ!?」                ショック療法、とでも言うべきか。途端に慌てふためいたような叫びを上げ再び暴れはじめてしまった 23:41 hikami >【ディルク】「―――ふむ。確認するが……クロエは“人間”だな?」                声のトーンは落ちる、とは言えども手の位置は不味いだろう、無論……動きこそしないものの、退かす、と言う意図も無かった。結果的には“胸元に手を添えたまま抱き寄せ続ける”と言うある意味では甘い抱擁を続けて居た               「狂気に失墜した同胞との争いを嫌って隠遁したのは事実、血族を手にかける訳にも行かなかった、と言うのは言い訳でしかないがな。だが……“人間”の全てが同一で無いように“我等”とて同一ではない。血肉を欲する狂気のモノも居れば……」                くっ、と、口元を歪める形、再度身を屈める形で露骨な柔らかさを感じさせる膨らみをやんわりと弄りながら耳元へと唇を近づけ               「―――俺の様に“君”を女として欲する者もいる、といっても……この様子では行為だけでは悟って貰えそうにはない、かな?」                ちゅっ、と、音を立てての口付け。牙を触れさせず冷えた唇の柔らかさだけを耳朶へと落し……細い指先で遮るモノの薄い膨らみ、ある一点を探り出す様にと、当人にとっては“軽い悪戯”を与えた。 23:48 tuka-neko>【クロエ】 「んぁっ!?あ…………ちょ……調子に……乗るなっ!?」                流石にそこまで露骨な行為をされてしまえば……咄嗟の防衛本能が働いたのか。桃色に染まる声を漏らしながら……ディルクの靴に自分の踵をねじ込み、同時によく狙いもせずに背後に向けて肘鉄を打ち込んで。強引に身をもぎ離し翻しながら、そのまま肘を支点に裏拳を叩き込む。……狙う余裕などあるはずもないが、最後の一撃は……身長差もあいまって鳩尾に入ったような気がするが、当然そのようなことを気にしている余裕もなく。ディルクに触れられていた胸元と、唇が触れた耳たぶを押さえ、怒ったような泣き出しそうな顔を真っ赤に染め……最初とは別の意味合いを持って、射抜くように睨み付けた 23:53 hikami >【ディルク】「お、っと……生憎俺の靴はかた……っぐ……!?」                足への一撃は無論、軍靴じみた鉄板に阻まれる形で“打撃”による衝撃を感じた程度、痛痒を感じる程ではなく……もっとも、ソレが油断、か。二打目の拳は見事に脇腹へと突き刺さり―――反射で、手を離す。結果、逃した姿を見やる際は身を屈めたまま脇腹を押さえる、と言う―――情けない               「……っく……ははっ、やはり美しいな、クロエ。そうした顔も、そう……“可愛い”ぞ?」                その光景、ある種出し抜かれた行為にはこちらも毒気、と言うか煩悩を僅かに殺がれたのだろう。軽やかな笑いと共に乱れた襟元を正し……しかし、まだ痛いのか、さりげなく脇腹へは手が添えられていた。 23:59 tuka-neko>【クロエ】 「う、うるさいうるさいうるさいっ!ま、まだ言うかっ!そもそも私は、神に仕える身であり神罰代行者なのだっ!それを……あ、あの、あの……っ!!」                飄々と、と言うには愛嬌さえ感じさせる姿のディルクに、すっかり殺気の抜けた、ただし怒気は3割り増しと言った風に怒鳴り散らして。ただ……途中であれこれの触れられる感触と感覚を思い出してしまったのか、言葉を詰まらせじたばたと駄々っ子のように腕を振り回す。……頭に血が昇りすぎて……何を言っていいのかわからなくなってしまった。 00:03 hikami >【ディルク】「ああ、判った、判った。それでも今の“君”は美しい女性だ、先刻の殺伐とした姿は立派な代行者だとは思うがな、その有様では説得力が薄い、ただの“女”にしか見えないぞ、クロエ」                まだ笑いの発作が収まらないのか、そもそもこの状況を愉しんででもいるのか、ある種力の入らなくなった拳をある程度は受け、ある程度はかわす、そんなじゃれ合いに暫し付き合った後……               「……さて、問うがね。“マールブランシェ”なら、あそこで胸を触れる前に引き裂き食らうか、噛み破り眷族としてから嬲る―――違うかな?」 00:07 tuka-neko>【クロエ】 「っ……それは………………」                不意に飛んできた真面目な問いかけに、思わず口ごもる。脳裏に浮かぶのは……幼いころの体験。眼の前で……亡骸を嬲られている、両親の姿。ゆえに……こくりと、思いの他素直に頷いて               「……それどころか……このように“人”の多い場所で……理性を保っていられるとは……思えんな…………貴様も別の意味で理性を保ってはいないようだが……」 00:13 hikami >【ディルク】「理性的さ、少なくとも先刻のはクロエが構えを取って以降だろう?それに、だ……人前で抱擁する事そのものを恥らうべきものとは思っていないが、人前で“抱く”程に節操が無い訳でもない。寧ろ“女の顔”をさっきの酔客の如き雑種に拝ませてやるのもクロエの価値が落ちるだろう?―――人目が無いからと此処で足を止めたんだろう?その判断は俺とて同じ。“人目が無い”から君の肌を欲しただけの事。―――最も、からかうだけのつもりがつい誘われてしまったがね、その辺りは戦闘の構えを解くには手っ取り早いと判断してのこと、実際……魔装を構える気はなくなったろう?手段として俺に役得もある。―――思った以上に柔らかかったけどな」 00:19 tuka-neko>【クロエ】 「なっ!?!?!?」                抜けぬけと言い放たれた言葉に、思わず絶句する。ただでさえ赤みを帯びていた頬が見る見るうちに……首筋まで真っ赤に茹で上がり、ふるふると肩を震わせて……               「こ……このっ……痴れ者がぁああああああああああっ!!」                度の過ぎる羞恥と怒りがない交ぜになり……ただでさえ短い堪忍袋の緒が、見事にぶっちぎれた。シスターには珍しい手袋に覆われた手を振り上げビンタを放つと。それが当たったかどうかを確認することもなくくるりとディルクに背を向け駆け出していってしまう 00:26 hikami >【ディルク】「っぉ…………!」                今度は挙動の予測が一瞬、遅れる。この場合幸運だったのは生来の反射神経と体格――主に身長――の差、だろう。咄嗟に身を引き、腕を前に出したものの……パァン、と、いっそ鮮やかな音、狭い路地に反響する炸裂音は素手であった手の甲を激しく打ち据えたモノであり―――手応え、としては相手にとっては十分なものだろう、若干感触は違うだろうが               「っー…………格闘の腕、と言うよりも……本能、だろうな、あれは」                打撃の成果で紅く残された痕の残る手を振りつつ一人、ぼやく。               「……まぁ、問題は無かろう。これで少なくとも……血の争いは避けられる」                役得との引き換え、と換算すればそう悪い成果ではない、寧ろ……ただ使命としての助力だけでなく、逗留する為の楽しみが増えたとも言える。―――長く“人”との関わりを経って来ただけに新鮮なその反応、また何処かで逢う事もあろう、そう思い仮の宿たるAAA本拠地へと足を向け―――……                                           ―――近く、当のAAAで再遭遇する喜劇はまた、別の話―――