21:01 hikami >先日、一つの“懸案”が終わりを迎えた。 21:01 hikami >否……より正確に言うのであれば“出来る事が無くなった”とでも言うべきだろう、後は信じるより他に無い、と言う段階になっているのだから。 21:01 hikami >己は“それ”にばかり思考を裂く事も出来ず、寧ろ、より“厄介”なものがいつ訪れるとも知れぬ日々を送っている事には変わりないのだ。 21:01 hikami >挙句、とでも言うべくか“窮地”と、言える総仕上げの戦場であっても己はついに、翼の力を用いる事はできなかったのだ。 21:01 hikami >“暴走”と“反動”なんてものを恐れたとも言える状態、結果的には目的の達成を果たす事ともなり、結果的には……天使のチカラではない“夢”のチカラを用いてある程度満足の行く戦果を上げる事が出来た。 21:01 hikami >それで十分、だなんて、やはり思える筈も、ない。 21:01 hikami >さらに言えば………翼が、無い、と言う事は……――― 21:01 hikami >【燐】「……………ま、言われるわよ、ね……」 21:01 hikami >己の背後、走り去る一台の車……こつ、と、靴音を鳴らし向かう先は寮の……“仮の”住まいである自室、である。 21:01 hikami >我妻市に滞在した事で……そう悪意的に見られる、なんて結果も予測できなかった訳ではない、だが、己の真の素性を明かす、と言う気にも、やはりなれなかったのだ。 21:01 hikami >【燐】「……―――ああ、もう………イライラする……」 21:01 hikami >呟きは苦く、重く、嘆息の、響き。 21:01 hikami >足早に部屋へと向かい、眠る為の準備を整え―――………気が、変わった。 21:01 hikami >ぱたん、と、寝巻き姿のままに自室を出て、幾度目かの来訪になるヒトの部屋の扉を、数度、ノック。 21:01 hikami >【燐】「……………風華、まだ、おきてる?」 21:01 hikami >思えば……“部屋”に遊びに行くのは毎度遅い時間である事が多い気もする、なんて、そんな事を片隅に考えながら―――…… 21:04 ballock_ >【風華】「燐?あ、ちょっと待ってね今鍵開けるから」             ドアのノックに気がつきぱたぱたと足音がする、そのままガチャっと鍵を開けて 21:07 hikami >【燐】「ん………こんばんわ、風華。ちょっと………良い?え、っと………」             今日も、なんだけど、なんて言葉は言い出せず口篭る始末。やはり“先日”の一件で少し意識してしまうのだろう、常の様に見上げる格好を取っては見るものの、ある場所に視線が向かった辺りで脇へと反れた             「……ちょっと愚痴、だけどさ。……迷惑じゃなかったらで、いいんだけど」             例の如く事前に何か、と連絡をしたわけでもないのだ。此方の装いは黒に近い薄手のネグリジェに近い格好であり、湯上りの分だろう、肩口には薄桃色のタオルが乗せられていた。 21:09 ballock_ >【風華】「ん、いいよ。中に入って」             迷惑なんかじゃないよ、と何時もどおりの微笑みを浮かべ燐を中へと誘う。まだ何も聞かずに 21:13 hikami >【燐】「ん、じゃあ………お邪魔します」             ぺた、と、スリッパの音を鳴らし室内へと入り込む。幾度か訪れた部屋、それでも少し違った印象にでもなるのか、若干、落ち着かなさげに視線を落とす             「……今日、アンブラに行って来た。いつもの検査、なんだけどね」             そんな格好のままに、ぽつり、と…言葉が、漏れた。 21:15 ballock_ >【風華】「アンブラに…大丈夫だったの?」             少し心配になった。人造天使の件もそうだし何より天使の力の覚醒によって身体に異常がないのかどうかが、何か言われるのではないか、と 21:18 hikami >【燐】「……―――“まだ、大丈夫”って言う方がいいかも」             ぺた、と、足音と共に室内へ、此処に来た際の定位置、机脇のクッションへと座り込んだ             「“父さん”には、風華達は私が“天使”だって事、言ってない………のよね?」              21:21 ballock_ >【風華】「うん、勿論話してないよ……あの人は正直、信用してないから」             こくりと頷いてそう言う             「あの人が世界を護るっていうのは嘘じゃないかもしれない…けど、でも…ウィザードを道具としてしか見てない感じもするから」              21:25 hikami >【燐】「………多分それで正解。“父さん”は、ウィザードではあるけれど“ウィザード”としての能力は凄く低いって話を聞いた事がある。だからって訳じゃないけれど、ウィザード側の知識を使って製品開発する事に重点を置いてる、ってね。そう言う意味もあって私を―――」             そこで一端、言葉を区切る。……理解、はしていても……             「“素材”として“仕入れた”って話だったからね。その“素材価値”が落ちてる―――当り前よね。今まで使っていた力の一部が無意識とはいえ天使のもので、それを自覚した結果……前できてた事が出来なくなってるんだから」 21:26 ballock_ >【風華】「そっか…」             やっぱりそんな状況なのか…と少し表情に影が落ちる             「それで、何か言われたの?」 21:30 hikami >【燐】「……そのまんまよ。“素材価値が落ちている”って。………我妻市内に出向した結果、アンブラでずっとやってた訓練はやらなくなったもの。訓練って言うか……データ収拾ついで、能力発動と魔術行使の実技と、理論把握の座学……今はロイヤルガードの方針とはいえ日中は学校行ってるし、休みの日は遊びに行く事だってあるもの。“そう言うもの”に否定的な意見を出された、って事。―――立場としては養われてる分、弱いのよね。“実験素材”の価値、としては」             ぽつ、と、零す言葉は少し……暗い、響き。以前ならば単純に冷え、突き放す調子になっていたものなのだろうけれども…             「―――かといって“天使”の力は……アンブラみたいな一企業が手を出すには重い、って事も、アドバイス貰ってる以上……私も、隠してるから」 21:35 ballock_ >【風華】「……そっか、燐の事いっそ私の方で引き取れればいいのにな」             ふとぽつりと零す。確かにアンブラ側とすれば何も知らないのだからそういう結論へと辿り着くだろう…だが、真実を知ればきっと燐の事を酷使しようとするかもしれない。そんな心配が強くなる             「以前できたことができなくなってても、その分燐自身も能力は高くなってるのに…そこで納得してくれればいいのにせめて」 21:40 hikami >【燐】「……え……?」             ふと、聞こえた呟き。引き取る……?呟きの音故に聞き間違いでもあるかとの、戸惑い、ここでの言葉としては……己にとっては最高の“解決方法”ではあるのだから、最も……己にのみ都合の良い事、でもあるのだろうけれど             「それじゃ、駄目なのよ。“戦力”として欲しいだけなら何も此処に送り込む事も無かったでしょう?“此処”にいたら“父さん”が必用な時に私の能力を使えない―――定期的に検査の出来る“素材置き場”としての価値だったのよ、ロイヤルガード、って場所。本心かどうかは判らないけど、そんな事も言ってたし。……ま、不愉快極まりない評価よね。―――企業体質って奴なんだろうけど」             嘆息と共に吐き捨てる常の論調、だが……微かに痛みが滲む辺りは昨今の“脆さ”なのだろうか 21:44 ballock_ >【風華】「企業…かぁ」             ふと燐を撫でる             「でも、例えそういう場所として此処が選ばれたとしても…燐はイヤじゃなかったよね」             そこは運が良かったのかも。とできるだけ前向きに考えを伝える 21:48 hikami >【燐】「ぁ、ん………」             ふる、と、微かに震える体……無意識に求めていた“それ”の感触に強張っていた体が緩み、安堵、を自覚していた             「……寧ろ“選んでくれてよかった”ってぐらいよ。前にも言ったかもしれないけれど、此処での数ヶ月の方が残りの12年よりもよっぽど“人間らしい”生活、してるわ。……―――風華にも、尚也にも……春奈にも、シュ……じゃ、ない。“りゅか”にも、出会えたんだもの。こんな“偶然”だったら大歓迎よ、でも……」             とん、と、軽く、身を寄せる格好。視線は伏せられたままに             「……“終わる可能性”があるんだ、っての。……改めて思ったら、逢いたくなったのよ。風華に。こんな時に我侭聞いてくれそうなのって風華ぐらい、だもの」 21:51 ballock_ >【風華】「終わったりなんてしないよ…お互い生きてさえ居ればまた会えるんだから――ね?」             撫でながら軽くぎゅっと優しき抱き締めて 21:56 hikami >【燐】「……―――逢えるだけ、じゃ、嫌よ。……今の“この生活が終わる事”が………嫌、なんだもの」             触れて貰う暖かさ、そんなものに……縋る。そう、結局は……             「―――アンブラに戻らされたらこうして抱きしめてくれる人なんて誰も居なくなる……風華の訓練を邪魔する事だって出来なくなるし、それに………―――今更“道具”に戻れ、って言われたって無理よ。一度は嫌だって突っぱねた“妹”なんて単語、理夢にまで言われて……尚也も本当、そんな風に前よりも優しい気がするし、風華も―――……こうして、くれるし。だったら“妹”でもいいかな、なんて思えてきた所だったんだもの。……家族とか、良く判らないけど……瀞やまりかを見てたら“妹”の位置も良いものなのかな、って思えてくるし……」 22:00 ballock_ >【風華】「……ん…」             道具になんて戻したくはこっちだってない。だがどうすれば良い?引き取りなんてよほどのチャンスがなければできない…心なしか抱擁が強くなってしまう 22:03 hikami >【燐】「……―――風華も……妹、いる、のよね。確か……」             そんな位置のままでぽつり、と、零す呟き。顔は上げられず、言葉も少し消えがちなもの、だが。             「……名簿で同じ苗字があったから。“風柳”は珍しい苗字だし、そうかな、って思っただけなんだけど……」             そんな腕の強さは心地よく、やっぱり―――なくしたくない、と思える暖かさ。ぎゅ、と、此方からも抱き返し……その腕が少し、震えた             「……家族、って、やっぱり良いもの……?」 22:07 ballock_ >【風華】「うん、居るよ――私と違って凄く元気な子。双子なんだけどね」             優しげに答えて             「家族は、うん…良い物だと思う。私がこうしてまだ入れるのも陽香や両親が居たからっていうのも大きいし」 22:11 hikami >【燐】「双子……だったんだ?」             そこまでは予想外、だったのだろう。反射で見上げ―――……その距離の近さに慌てて顔を伏せた             「……そう、だよね。こっちに来て本当の“家族”を見て……良いものなんだろうな、って思ったし。―――ちょっと嫉妬…じゃないか、羨ましいって思ったんだと思う。“妹みたいなものだ”って言われたって尚也の事“おにいちゃん”とかは、やっぱり呼びたくないけど」 22:14 ballock_ >【風華】「うん、双子なんだけどあんまり似てなかったりもするかな?」             割りと性格も違うし外見も、どうだろうと思う             「尚也さんの事は今更呼べないって感じかな?」 22:19 hikami >【燐】「そうなんだ……ちょっと興味……って言ったら変な感じかな。……機会があったら逢ってみたいな、風華の妹、って。ちょっと……気になる」             目の前の相手の“本当の妹”だなんて……想像の外、だったのだろう。くす、と、淡くではあるが笑みの形に音が零れた             「……今更よ、本当。……好きは好き、だもの、尚也のこと。ちゃんとあきらめてるけど……それでも―――おにいちゃん、はないわよ。理夢に“おねえちゃん”もやっぱり無いと思うけどさ。……憧れるのは……あると思うけどさ」             若干の拗ねた調子、ぽふ、と、顔を、伏せて―――             「……“人造”天使……ちゃんとした人間でもない、って判っても受け止めてくれる人達がいる場所の方が、そんなのが判ったらどうなるか判らない場所より……ぜんぜん、いいもの。だから―――」             ……だから、なんだと言うのだろう。何を求めるべきか、なんて……やっぱり、判らないけれど             「―――………ちょっと、今日は……甘えたい。寂しい、んだと思う、から……」 22:24 ballock_ >【風華】「燐は“人間”だよ。こんなに人間らしいんだもん」             ぎゅっと優しくまた抱き締める、表情は優しげに微笑んでいて             「陽香は人付き合い良いし人見知りしないからすぐに仲良くなれると思うよ。最初はちょっと戸惑うかもしれないけど――あの子テンション高いから」             くす、と笑う             「うん、一人になんてしないから。安心して」 22:28 hikami >【燐】「っぁ……」             ―――漏れるのは、少し甘い吐息。ふる、と……軽く、身を震わせた。全身を包んでもらえる幸福に……目を、閉じた             「……ありがと、ちょっと……暫くそんな単純な事にも自信、なくしてたから。もう“兵器”だなんて言わない、って約束もしたし、私は人間、が、いい」             そう、ウィザード、と言う括りですらないその言葉、ぽつ、と、やはり零れる呟きの調子、押し殺すようにか腕の力を強め、顔を押し付けてしまって             「………それは……ん、理夢で慣れておいたほうが良いかな。理夢にも最初随分戸惑った、し………―――うん、ありがと。風華のその言葉が……凄く嬉しい、寂しい時、とか思い出すようにしてるけど、だから―――……こうして甘えに行っちゃうのかも、だけどね…」 22:32 ballock_ >【風華】「あはは、慣れておくのも有りかも?」             確かに燐だといきなりは驚きそうだ             「うん、私の言葉でも安心してもらえるなら嬉しいかな。何か力になれるなら言ってね?」 22:35 hikami >【燐】「……十分、こうしてもらえるだけでも“力になってもらってる”けど、ん、じゃあ―――」             もぞ、と、少し身を捩り相手の肩口へと顎を乗せるような格好、より密着度の高まるようになんて算段……抱きつく事にも“慣れて”きたのだろう。無自覚ではあるだろうけれども……             「―――今日、このまま泊まってもいい?とか、我侭……言っても良いかな。折角、だし」             何が折角なのか、力に、なんて言ってくれたから、だろうか。―――それを求めて来た癖に何を、と……まだ妙な理由付けを求める辺り誤魔化し下手は治っていない様子。 22:37 ballock_ >【風華】「うん、断りなんてしないよ」             そんな燐の妙な理由付けをする癖に小さく微笑んだ 22:43 hikami >【燐】「……ありがと」             ほぅ、と、零す微かな安堵、信用していない、と言う訳でも無かろうに……“自分から甘えを口にする事”にはまだ、怯えが残るのだろう。 22:43 hikami >それでも―――………受け入れて貰えれば随分素直に“甘え”られるようになったと思う。 22:43 hikami >周囲の助けを受けて“人間らしく”なれた気のする日々、そんなものが“甘え”に拠るものなのかもしれない、なんて不安もある。 22:43 hikami >だがそうだったとしても―――それこそ“今更”だ。 22:43 hikami >………この腕から抜け出す勇気は、どんなエミュレイターに立ち向かう事よりも……きっと、大変な事だと思うから。