21:04 hikami >学園祭。 21:04 hikami >その響きだけでどれほど校内が活気付いているものか想像する事は難しくないであろう程の存在感を持つ単語である。 21:04 hikami >この春、そうしたものに縁の出始める学校、と言うものに通学を開始した時点で幾許かの覚悟は出来ていた……筈であった。 21:04 hikami >だが実情は漫画や小説に語られる物以上…いや、そうした想像・空想では推し量れぬ生身の活気と言うものに―――正直、面食らっていた。 21:04 hikami >常は遠巻きに接し、深入りを避けるクラスメイトや上級生までもが大騒ぎし、己を巻き込もうとするのだから。 21:04 hikami >以前味わった村での祭りとも違う、学生だらけの勢いと言う“活気”が――― 21:04 hikami >故に、逃避。 21:04 hikami >巻き込まれた初日を教訓に、二日目は早々にエスケープし、未だ魔手の及ばぬ静寂を辛うじて保っている中等部の屋上へと。 21:04 hikami >傍らには愛用のブックカバーを被せたライトノベルを。 21:04 hikami >もう傍らには道中に買い求めたペットボトル飲料を。 21:04 hikami >それらは、傍ら――― 21:04 hikami >遠く、喧騒を耳に届かせるのみの空間にて少女はただ一人座り込み、ちっぽけな金属片へと視線を落としていたのだった。 21:04 hikami >【燐】「―――………やっぱり、五月蝿いわ」 ぽつり、と、誰も居ない空間に言葉が零れ落ちる。 常の華美な装いとは違い今日は学校行事でもあるために制服姿であり、髪も簡単に、首筋の辺りで一くくりに。 その表情は明らかに不興…というよりは疲労の色が浮かび、ぽつん、と、己の掌に納まる程度の銀をぼう、と、眺めているのみであった。 21:19 rouge >【シェルファ】「……ふぁあ。」 21:19 rouge >欠伸が出た。 21:19 rouge >………一言で言うなら、この状況は退屈だった。というより、疼く。 21:19 rouge >自らの契約者、三崎尚也は朝から自分に意識を向けることが一つもなかった。 21:19 rouge >幼馴染である天宮春奈と、共にガクエンサイ、なる行事に興じている。 21:19 rouge >別に、意識を向けられなければどうだ、というわけでもない。 話さないこととて往々にしてある。 21:19 rouge >…ただ。 …周り中の喧騒と活気。 此れに関われないというのも、何とももったいないことではないだろうか。 21:19 rouge >尚也と春奈は、何事かを話しながら何処かの集まりが開いたフリーマーケットなる市場の見学に没頭していた。 21:19 rouge >「………やれやれ。」 21:19 rouge >頭を振る。 ………次の瞬間には、それまで誰もいなかったはずの物陰より一人の女性が姿を現していた。 21:19 rouge >180はあろうかという長身に、張りのある瑞々しい身体。 見る者を釘づけにするような、強い意志の瞳。 21:19 rouge >腰まで伸ばした蒼髪……は、目立つので、ブラウンの髪色へと弄っておく。 …自分の姿であった、姿。  21:19 rouge >服装は、そこらで見かけた女のものと同じにした。ブラウスにロングスカート。 21:19 rouge >…これで、そこらにいる女性と同じようには見えるだろう。 21:19 rouge >…ああ、金がいる。 尚也のものを半分借りておこう。 何、私とあいつは一心同体。 21:20 rouge >ならば、奴の金は自分の金だ。 21:20 rouge >少年と少女の和気藹々とした様子を見るのも悪くはないが、今日は自分も祭りを楽しむか。 21:20 rouge >「さて、ガクエンサイ、どんなものを見せてくれるか。」   21:20 rouge >契約者には何もつげず、魔剣シェルファはガクエンサイを歩き始めた。 21:21 rouge >そして、数十分後。 何人もの学生の視線を受けながら、シェルファは学園中を練り歩いていた。 21:23 rouge >【シェルファ】「ふむ、悪くない。とはいえ、似通った味の店が多いな。カフェと名のつく店はもういい。この先には何かあるのかしらね。」 こつこつと、中学練の屋上にいたる階段を歩いていく。 学生なら、その先に何もないことは知っているし、立ち寄らないのだが。 生憎彼女は学生ではなく、そんな情報は知りえない。ばたん、と、勢いよくドアを開ける。  【シェルファ】「………ここには何もないか。 つまらんな。」  日の光を浴びながら、屋上を見回す。 そこは、喧騒とは無縁の世界であった。  …いやそもそも、ここに来るたびに喧騒とは離れていっていた。 よく考えれば当然のことかと思い直し。  「…?」  そんな中、ふと視界に見覚えのある存在が、写った。 21:30 hikami >【燐】「っ―――…!?」 この時期…というよりも“学園祭”の真っ只中に訪れる者が居る、なんて想像はしていなかった。 元より立ち入りについてはあまり良い顔のされない場所、でもある。             …おまけに今はコインを取り出した状態にあり…少々やましい状況ではあったのだ。             短く息を吸う音と共に慌てて手の中にその金属片を握りこみ―――            「……なんだ、シェルファだったのね」             ―――脱力、と言うよりも嘆息、に近い言葉。以前、祭りの最中に現界は見ており、正体の判別は―――……            「―――って。そもそもなんで貴方が人化しているのか、を問うべきだったかしら。             異能の力をあまりほいほい外で使うべきではないと思うのだけれど…?」 21:34 rouge >【シェルファ】「あら、そこまで驚く? 意外な反応ね。燐。」                  知り合いの顔を見つければ、つかつかと距離をつめ、すぐさま傍へと立つ。                 「そうね、一言でいうならすることがなくてね。                  それに、誰しも浮かれて一人のことなど記憶にもとめてはいないわよ。自分の周りで精一杯。」                 人が、多く流れる校舎のほうに向き直り、どこかにやりと笑って。 21:38 hikami >【燐】「貴方の存在そのものが意外だもの、反応が意外でも無理は無いでしょう?」             軽く肩を竦め…浮きかけた腰を下ろし再度屋上へと座り込む格好。             握り締めてしまっていたコインはそのまま、元の通り―――渡されたものではなく、改めて自分で用意した黒絹のハンカチへと包み込んで行く。            「…言えてるわね。以前の河童祭りでも思ったけれど本当……“祭”と付くだけでこんなにもうっとおしくなるものなのかしら……」             こつ、と、校舎の壁に後頭部を預ける格好で見上げる空は―――矢張り快晴。             日和としては良いだけに余計に盛り上がり、盛況、と言える活気に満ちているのだ            「昨日は酷い目にあったわよ。人に連れまわされて―――何時もみたいに放っておけばいいものを……」 21:44 rouge >【シェルファ】「…ふうん?」                  黒絹のハンカチに目を留めて、内心でだけ目を僅かに細めて。                  何を仕舞ったの? ときいてみようかと思ったが、やめた。 ただ小さく呟いただけ。                「違和感はないでしょう? 髪の色も服装も、合わせたつもりよ。                  燐は祭りというものが苦手みたいね。騒いだり、はしゃいだりするのはわずらわしい?」                  尚也をやり込め、完全に上位に立っているこの少女が連れまわされ、戸惑う姿はぜひ見たいものだった、などと思いながら。 21:48 hikami >【燐】「―――“人間”になら、ね。ウィザード相手ならどうかしら。             私の場合は貴方の正体を知ってるから違和感を感じるだけかもしれないけれど―――少なくとも尋常な人間の“気配”とは、思えないわ」             追求の無いうちに、なんて思考があったのか否か、包み込んだハンカチは制服の胸ポケットへと仕舞いこむ。            「―――違うわ」             暫し、答えるまでには間が、空いた。苦手か、の言葉に浮かぶ、適当な単語が無かったのだろう、             だからこそ否定を告げて尚、僅かに間が、空く            「……慣れない、と言うよりも……苦手以前、理解、出来ないわ。             何が愉しくてあんなに浮かれられるのか、何が愉しくて―――私まで引っ張り出すのかが、ね。             散々、見も知らぬイノセントにあれやこれやと声をかけられて、やれ部活だやれ委員会だ―――そんな暇、無いわ」 21:55 rouge >【シェルファ】「分かる奴は知っている奴。 知っている奴は世界を理解する者。 特に世界に問題があるとも思わないわ。                  それに、昨日の今日。 目が多くて困ることはないんじゃないかしらね。」                  燐の言及に、涼しい顔で答えて。 見つけられるのなら見つけてみせろ、といわんばかりの態度で答える。                 「そう? 理解できない…か? ま、暇がないっていうんならそれでも良いけど。                 人間の生涯など私にとっては水の一滴のようなものだし。」                 そして燐の了解を取らずに、隣に座り込む。 22:00 hikami >【燐】「―――昨日の今日?」             何を意味しているのやら、ピンと来なかったのだろう…訝しげに眉を潜め、声のトーンも僅か、落ちる            「ま、実際貴方の存在に違和感を覚えたトコロで“ものすごい美人”だとかそんな陳腐なトコロで落ち着く、か……―――」             事実、繰りの安定しない時代に幾度か周囲に“違和感”を残した事はあるのだ。             その際に共通していたのは…やはりそんなもの、人形、なんてものが一番多かったかもしれないが            「―――………人間、か。そうね、貴方は魔剣なのだものね……そういう意味では“人間”か……             ―――これだけ世界から外れて尚、世界結界の枠組みからは逃れられない、皮肉な話、だけれど」             嘆息、類される感情は面倒、だろうか。隣に座り込む姿には特に何も告げず、逆に問いにて返す            「―――シェルファ。貴方、なんであんなのと一緒に居るわけ?態々“人間”の中に混じる必要がある異界に出てきてまで」 22:07 rouge >【シェルファ】「ああ、まだ情報はいっていなかったか。 そのうち通達はあるんじゃない? マメな組織でしょう、あそこ。                  何のことはない。 昨日ここでウィザード同士が戦った、それだけのことよ。」                  あっさりと、何事でもないように簡潔に答えて。                 「あら、褒めてくれるのかしら。 …賞賛の言葉は良いものよね、幾ら貰っても次を求めたくなる。いわば糧ね。」                 美しい、といわれるのは満更でもないのか。僅かに瞳を閉じて。                「そうね、先ず一つ言うなら……奴が私を手に取ったから。 最初の理由は、それよ。」 22:12 hikami >【燐】「戦っ―――て、また奴ら、出たの?」             何も無さ過ぎてつい…聞き逃すトコロ、であった。ウィザード同士、なんてもので思い当たるのもそれであり、ここ、ということは―――            「学園祭の最中…ってこと、よね……」             ―――ともなれば間近を通り過ぎた可能性すらあるのか。             迂闊を通り越して嫌気すら差してくる、最も、昨日はそれどころではない、なんて惨劇の真っ最中ではあったのだが            「事実を言っただけよ。実際“貴女”は美人だもの。最も、それが外面だけの事でならどうでもいいことだけれど?             世界結界で無理やり、私達を含めて押さえつけた力なんてモノがイノセントには魅惑に写る事もある。             存在感、なんて言っても良いかも知れないけれど……―――経験、無いでも無いわ」             賞賛についての話題にはふさわしからぬ、唾棄に近い言葉の使いようである。            「―――先ず?と言う事はまだある、って事?それにしても……物好きね。             ソレだけだったら言わば“たまたま逢ったから”自分の世界を抜け出した様なもの、でしょう?」 22:19 rouge >【シェルファ】「中々面白い相手だったわ。 やりあうには不足のない相手よ。」                 今は、という言葉を最期に内心でだけ付け足して。瞳に写るのは好戦的な色。 唇の端を吊り上げ、不敵に。                「燐は物事や存在のあり方について考えるのが好きなのかしら? ま、それはそれで好ましいわ。                  そうね、それでさっきの言葉に戻るけれど。 時間が足りない、なんていうけれど。 燐は何がしたいのよ?                  一つ聞くのなら、一つ聞かせてくれてもいいんじゃないかしら?」 22:27 hikami >【燐】「―――迂闊、と言うよりもここまで来ると不覚だわ………難敵であるのは同感だけれど、             そもそも演習から初仕事にかけては態々此処に来る必要があるのか判らない程度の相手だったし」             相手は剣、ならば―――強度を面白い、と評してもそんなものか、と言う印象。             が、そんな判断そのものがこの喧騒では憂鬱を煽るものなのか、知れず、嘆息が零れた            「…好き、じゃないわね。“必要だから”……私の能力はこの“世界”よ。             だったら物事の本質やら世界結界の働きなんてものは常に掴んでおく必要がある。             ……そう感じ取って、理解して、組み替えて、が私の魔術だもの。             それを怠るんじゃ二流どころか三流ね、このヤサシイユメを弄る能力なんだもの、加減も含めて理解と把握は優先事項だわ?」             なんて言葉と共に聞こえる…どこからか響く盛大な演奏の音。クラシックではなく、軽音楽のライブでも始まったのだろう。             熱狂にも近い歓声が上がる辺り、ファンでもついているのか―――そんな意識は            「―――“無駄な時間を過ごす気はない”と言い換えるべきかしら。             現に昨日、私は些事に巻き込まれて感覚を鈍らせ、結果、戦闘を―――見逃しているわ。ウィザードとしては減点も良い所よ。             …私は中学生じゃない、それ以前に一人のウィザードだし、この世界で言う“人間”の括りには―――」             そこで一度、言葉を区切る。己の制服…ではなく、その上、纏った月衣に在る己の半身、翼を象る力の感触を僅か、感じつつ…            「―――入るはずが、無いもの」 22:36 rouge >【シェルファ】「ふ、ふ、ふ。 はははは……良いわね、燐。 根からの。 根源からのウィザードなのかしら。」                 燐の言葉を受けて、楽しそうに。 意や興味がわいたとでも言うように、含み笑い。                「私とあなたは、似ているかもしれないわね。 ベクトルとしてならば。                  根源で言うならば真逆なのでしょうね。自分は特別な存在だという矜持。誇り。そういうものを、私は愛するわ。」                 自らの長い髪を手で払いながら。                「私はね、戦いを愛している。」                 すっくと立ち上がりながら、背中で燐に告げて。 22:42 hikami >【燐】「―――言ったでしょう、私は“人間”じゃ、ないわ」             遠く、聞こえる音が―――不快。向けられる笑みの方が幾許も心地よい物であり、指先に触れる半身が…最も心強い存在とすら思える            「―――ウィザードよ」             だのに、空く、間。立ち上がる姿には視線だけを向け、手を伸ばす事も続く事もせず、見上げた            「流石は剣ね、己が存在意義も、在るべき場所も、戦場?…特別は、この世界では“異端”になるわ。             生憎と異能は世界結界そのものに拒絶されるように出来ているのだし。             だからこそ私達“異端”は月衣を纏ってこの世界からほんの少し、軸をずらす事になるのだもの。             ―――それが特別かどうかなんて、興味もなければ意味も無いわ。ただ外れたモノが外れたモノを狩る、っていう―――仕事、だもの。」             こつ、と、自然…校舎の壁に再度頭部が触れる。見上げた視線には悠然と立つ女性と……抜けるような、不快な快晴            「―――でも、それこそ尚也と一緒に居たのでは戦えないんじゃない?…魔王相手に矛を収めるような男だもの」 22:50 rouge >【シェルファ】「燐の中では、ウィザードは人間と同義ではない、か。」                 背筋を伸ばして歩き、屋上に備えられたフェンスの傍まで寄ると、それにもたれかかり、再び向かい合うような姿勢に。                「それならば、ウィザードも魔剣も同じものね。 敵対する存在のために、戦い続けるために存在する。                  骨を砕き肉を裂き血を浴び。 相手より下すことに快楽を覚え、下すための準備は愉悦に変わる。……最高の日々ね。」                 語るたびに、何かに感じ入るように。                「そうね…尚也。 アレは、どうしようもないわ。 本当に、どうしようもない。」                 だが、そういいながらも。 少しその表情が、緩む。 22:56 hikami >【燐】「世界結界に護られるべき存在がそもそもの…この世界の住人だもの。             それを“人間”と称する事が正しいと思っているもの?元人間、なんてウィザードはまだ人間かもしれない、けれど―――             それにすら、私は当て嵌まらないもの」             互いの距離は少し、空く。無人であるが故の油断か、そんな距離であっても―――いっそ、不穏、珍妙な会話はまだ続くのだろう            「―――生憎、私は戦そのものに感慨は無いわね。寧ろ……手段、か。             免罪符、でもいいけれど。“この世界結界の中”で生きなければならない、なんて制約があるのなら従うしかないわ。             そのための“条件”が…一番しっくりくるかしら。生活であり、仕事、だわ?             私の場合はまさにそのまま、ウィザードとして生活する事で人間としての糧と立場を得ているのだから、尚の事。             ……無機質で無為、別に何かを想う程いいものじゃ、無いわ」             とは言えこの距離、声が漏れるとは想わないが……不穏、か。重い腰を上げ、飲料と本を手に己もフェンス脇。             ―――自然、外が視界に入り…眉を潜めた            「……の、割りには嬉しそうね、シェルファ。……何が良いのか判らないけれど“振われぬ剣”は随分と憂さが溜まるんじゃない?」 23:08 rouge >【シェルファ】「結論として言うなら。自分は自分らしく生きたいって所かしら。 だけど、この枠は自分にとってつまらない。                 …ま、見た感じじゃそんな感じ、かしら?」                 燐の言葉を受け止めて、しばしその言葉を頭の中で転がして。                 「私はあなたほど複雑な感情は持ち合わせていないけどね。単純なのよ。」                  空を見上げて、今はもう見ることの出来ない故郷、それを思い起こしているのか。                「1000と200年。争い続けた…。道を塞ぐものを殺し、犯し、自らが望むままに道を作った。」                 顔色を変えることなく、唐突にそんな事を、語りはじめて。 23:12 hikami >【燐】「―――さあ、どうかしら。少なくとも……―――“ここ”に、居場所は無いわね。             そもそもが拒絶されているのだもの、それで尚しがみつく気にもなれないわ」             一部では同意可能な評価であり、一部では……得心の行かぬ違和感。             表情はどこか暗く、その暗澹は“外”を見て尚、深まってゆくモノである            「―――戦争、ね。何、そんな場所が尚也が“勇者だった”場所?随分―――」             似合わない、なんて言い掛けはするものの折角なのだ、気の滅入る外の光景なんかより、惨劇の話の方が何倍も心地良い―――             そう思考し、フェンス脇へと座り込む。立って居ようかとも想ったが止めた。             ―――理由なんて、簡単な事、ではあるけれど。 23:19 rouge >【シェルファ】「そうね、その時代に尚也が生きていれば、私は歯牙にもかけず殺した自信はあるわ。                 ただの私の歴史よ。自らの赴くままに生きた1000と200年。                  そして、敗北の末剣へと身を落とし、暗闇で過ごした2000年。」                  淡々と自分について語る。                 「ねえ、燐。 あなたは、自分の全てが停止している所を想像できる?                 あなたは、私に似ている気がするわ。 歩みを止めることを嫌う人間。」 23:24 hikami >【燐】「―――……どういう事?元々は剣では無かった……?」             初耳、である。挙句に、微か、違和感すら感じる…何が、と言うわけでもなく、             ただ……話の内容と傍らの女性が微妙に、重なってくれない、と言うだけである            「―――まさか。想像なんて出来もしないし、する気も無いわ。             私にはやる事があるのだもの、こんな所で無為に停止するつもりもない。先に進む事を止めるツモリもない、ただ―――」             またも、沈黙、である。余程人にあてられたか、鬱々とした気分は晴れず、苛立ち、すらも超えたか。             …目の前に居るのが尚也ではない所為なのか、常の勢いは矢張り、無い            「―――“行き先”を探すところから、なんていう面倒な状況が此処へ来て尚代わらない。             どころか、学校、なんていう面倒ごとが増えたのも事実だけど」 23:32 rouge >【シェルファ】「幾百の国を滅ぼし幾万の生物を殺した魔人。 もはや過去、誇るつもりも恥じるつもりもないけれどね。」                 自らの存在に…あまりにも、この世界とそぐわない存在である自分のあり方を告げて。                 「……結局はそうね、ま、つまり。 足を止めたことで私は…」                 腰の力でフェンスから身を起こし、再び燐の元へと歩み寄る。                 「我慢強くなったんでしょうね。 長い生命があるのだもの。                 眺めているだけで、アレはあれでいいのよ。あなたには時間がないわ。止まっている時間なんてない、なんて思っている?」                 燐の直ぐ傍まで歩くと、正面に腰を落とし、向かい合うようなカタチで。 23:38 hikami >【燐】「―――…成程?なら、余計に疑問ね、本当……なんで“こんな場所”に居て、平気なのか」             単純な話し、世界結界、なんてものもそうだが…剣、であれば兎も角今は“ヒトガタ”である。             …だというに凄艶な魅力はあれども恐怖、なんてものも威圧、畏怖―――それらは遠いのだ。             だからこそそんな距離、傍らであり、向かい合う位置であっても逃げる事も避ける事もせず…ただ、視線だけが逸れた            「―――勿論。止まる、事なんて考えていないわ。生憎と……行き道の判らない今、迷子も良い所、迷走の果てにこんな所に居るけれど、ね。             ――まぁ最も、同じ“ウィザード”が世界結界に反逆しようとしている、なんてレアな光景を見れたわけだし、             ここでの仕事もそう退屈ではなさそう、と言うのは確かだけれど。」 23:46 rouge >【シェルファ】「燐、あなたは、自らの行動全てに理由がつけられる?」                 それさえも、楽しそうに。                 「私はつけられないわ。 幾千年生きてきても、ね。ただあいつは面白いのよ。予想を裏切る専門家。」                 視線を逸らした燐を、楽しげに見つめて。                「あなたにとっては、この学園祭なんて、止まることの象徴みたいなものかしら。ウィザードとしての仕事からは、最も遠い世界。」 23:50 hikami >【燐】「―――……無理、ね」             そもそも、ごくごく最近、その“理由不明”の行動をとっているのだ。             …それを思い返す前は否定を口にしようとでも想っていたか、無理、と答える響きは嘆息込み、呆れる対象は…自分、か            「―――別に、学園祭そのものは否定しないわ。ただ“人間”が多すぎる…違う、か。             騒ぎすぎる、その中に異物が混ざる必要は無いわ。事実、混ざってしまった所為でウィザードとしての戦場を一つ、見落とした。             停止、と言うのではない―――係わり合いの薄い対岸の事、そんなものに……浸かるつもり、ないもの」 00:00 rouge >【シェルファ】「面白いわねえ。」                  ふ、と表情を崩しながら。                 「見落とした、というのは失態かしらね。 確かに。 でも影響のない失態。何の意味もない失態。                 まさか、自分が万能だなんて思っていないでしょう?ただ…何かしらね。」                  改めて、燐を見やる。 本に、飲み物。 一人で過ごす姿勢。                 「だからって、こんな所で一人ですごす。唯の負けに見えるわよ、そんなのは。                  堂々と異端でありなさいな。 人の多さなど気にも留めずに。そのほうが、楽しくない?」 00:05 hikami >【燐】「何がよ。―――別に、面白くなんて無いわ」             何を以ってして、何を示しての言葉か……己の思考、と言う意味で、と言う風に受け取ったのだろう、眦が僅か、吊り上った            「―――万能ではなくとも仕事を“放り出して”まで、かかずらう用事じゃなかった事だけは確か、だわ。」             事実、昨日は疲労と倦怠ばかり、そんな風に感じてすら居たのだ、だが―――次ぐ言葉には            「―――五月蝿いわね、別に愉しくなんてない。…異端であればこそ、この世界は“異端”を嫌うわ。             ――――――だったら溶け込む必要なんてない、こうしている方が楽だし、効率的だわ。             最低限その場を繕う事は有意義であってもこの喧騒と人ごみに突貫してまで馴染もうなんて思わないわ。」             言うも言葉とは…恐らく逆。制服の胸元を少し、強く握った            「―――面倒よ、そんなの。こんな場所、いつまでも―――居るつもり、無いわ」 00:14 rouge >【シェルファ】「燐は難しいわね。 いや、単純ではあるかしら。 …私も生まれて長いけれど。                  結局は、楽しいか楽しくないか。そんな結論に落ち着いたわ。                  細かい所なんてそれははいて捨てるほどあるでしょうけど、大別してしまえば二つの感情よ。物事なんて。」                 また一歩、燐との距離をつめた。                 「それじゃあ、何処に行く? 何処に行きたい?」 00:17 hikami >【燐】「―――…生憎ね、私、まだ12年しか生きてないもの。そこまでの達観なんて出来ないわ」             ぎゅ、と……今度こそ強く、胸元を握り締めた。ある種では自分の異端思考を支える要因となったものであり―――             ……が、そんな中、聞こえた言葉、だったからこそだろう。……誘いには、つい            「―――外の世界、かしら。“この世界”ではない、外。             …在ると夢想したものが、現実に“在る”なら―――私が行くべくは此処ではないどこか、だと想うわ」                                                     ―――本音が、零れた 00:21 rouge >【シェルファ】「外、ね。 ………そんなに変わるものでもないわよ? 人が争うのは何処でも同じ。                  破滅が襲うのは何処でも同じ。外が理想郷だと思っているのなら、残念なお話だけど、ね。」                 見えた表情。 彼女の願い。 燐から視線を外し、遠い空を見上げる。 この世界と、あちらの世界、両方を知るものとして。                 「…それでも?」 00:26 hikami >【燐】「―――……“この世界に間違って産まれた化け物”だもの」             零してしまったからこそ、漏れる…純然たる、愚痴。己が半身、歪な“箒”と共に産まれたからこその乖離、             それで尚生きる、と言う意味は―――などと、沈みかけた思考を軽く頭を振って追いやって行く。             とはいえ普段どおり、とは、行かないけれど            「―――それでも、よ。少なくとも尚也が過ごした世界では魔術は普通のものの様だし、             探せば―――私みたいなヒトだって居るかもしれない。私の“箒”はね、元々私の一部だもの。             ……―――そんなのは少なくとも“この世界の常識”には、無いわ。             アンブラに引き取られて尚、この“箒”は異質なものだ、てのが判っただけ。             調べても良くわからないものが出てくる、とかね。―――私は“外”に行くべきなんだわ。             いつか、手段を見つける―――落ち着かないのよ“人間の中”ってのは。」 00:34 rouge >【シェルファ】「そう。 外、それそのものが燐の希望、か。 なんだ。 ちゃんとやりたいこと、あるんじゃない。」                 聞きなれない単語が、幾つも出てくる。                  それは少女が普通ではないという、ウィザードという枠の中でも、さらに異端であることを示す言葉。                  けれど、それには反応せずに。にこやかに笑う。                「でもね、燐。 何処に至って、どの世界だって。そこにいるのは人間でしかないわ。」                 不意打ちのように、指先を伸ばし、長く細い指で彼女の頬をつい、と撫でる。 00:37 hikami >【燐】「―――手段が判らないなら、迷走でしかないわよ。存在がおぼろげに感じられるだけ」             落ちる視線は…地面。相手の姿を見る事なく、思索に沈む、その中で触れられる感触…思わず            「っ―――……!」             ―――言葉が、詰まる。それもまた事実ではあろう、人間しか、いない、その言葉の方にこそ反応し、指への反応が明らかに、遅れていた            「―――……少なくとも“ここに居る人間”とは違う常識と違う世界があるのは確かよ。             ―――何処かに、あるかもしれないじゃない」                ―――私みたいなのが、居る世界。そんな言葉は外に零れず、睨むような視線だけが相手へと向う 00:45 rouge >【シェルファ】「それじゃ、迷走の中の更なる戯れ。 私に付き合わない?」                 この屋上で燐を視界に収めた時に抱いた感情が、寂しそう、というものであった。                  宝物庫の中での2000年。 思考の迷走と暴走と諦観。 そんな姿が少し交わった。                 「…ありていに言うと、楽しくないのよ、今。 パートナーを春奈がもっていっちゃっているからね?」                  冗談めかして、そんな事を告げる。 00:48 hikami >【燐】「―――は?」             それこそ……予想外の言葉、である。             頓狂な声とも、間抜けな声とも付かぬ響き…ぽかん、と、矢張り珍しく、口を開けっ放しにしてしまった事だろう            「―――って、何、尚也……対象外だとか言って置きながら春奈とデート中?             ――――――全く、本当どういうつもりなのか読めないわね……」             今度も嘆息、だが、今度は先刻までのものとは違い馴染みの響き。それで―――再度虚飾を纏い直す            「……――貴女は、平気なわけ?……“人間”の中に、混ざるの」 00:53 rouge >【シェルファ】「何処にいようと、何をしようと私は私よ。魔人シェルファであり魔剣シェルファであり、三崎尚也の契約者シェルファ。」                 その言葉には、全くのよどみはない。                 「ん…お、紗璃沙、拾ったみたい。 どうなることやらね、ホント。」                 知ろうと思えば契約者同士の現状を把握できる、そんな関係の二人。 まるで他人事のように。 そんな現状を楽しんで。 00:58 hikami >【燐】「―――そう」             …そんな考え方もあるのか、少し…不思議であり、新鮮でもある。             とは言え…真似ができるか、といわれれば難しいだろうけれども。             なんせ…それこそ100倍以上違うのだ、そこまで達観できよう筈も―――ない            「―――……………何処で?」             挙句…此方も興味を持った、のだろう。以前問いただした“二人”の選択、そういうのは娯楽の一つでもあるのだ。             ライトノベルやら、漫画やら…そんなもので幾度も起こった事実でもある。             だから、と言うわけでもない。胸の辺りをもう一度握り……            「―――良いわ、付き合ってあげる。」             ソレだけを言うはずなのに、深呼吸。背後、下方で響く歓声は…またも不快にさせる響きを己に届けては、いたが。 01:06 rouge >【シェルファ】「それは、このガクエンサイの敷地内に決まっているじゃない。」                 階下を指差すように、地面を指して。                 「決まったわね、さて、どうする? 中を巡るもよし、私としては、燐とここで楽しむのも悪くないわよ。                  あなたの在り方は好みだし、ね。」                  制服の背中をつい、と指先でなぞり、ちろり、と自らの唇を軽く舐め。                  冗談とも本気とも取れないような発言。 どちらでも楽しめる、というのは、本当なのだろうが。 01:11 hikami >【燐】「っ―――…!?」             ―――今度は……背筋が跳ねた。くすぐったさ、ではあろう。その感触に慌てて立ち上がり、半眼            「―――……くすぐったい触り方、しないで」             先刻まで拗ねに拗ねてしまった所為だろうか、傲岸な物言いは少しだけ潜められていた。             おまけに、立ってしまった、のだ。だったら―――            「―――……面白そうな光景だし、探しに行くのも一興、かしら。此処は退屈で何も無い、のでしょう?             だったら、外を見て回れば良いわ。本、読み終わってしまったし」             言うも…その本の中ほどには栞が挟まったまま、であったりする。             ブックカバーに包まれたそれを乱暴にブレザーのポケットへと押し込み、ペットボトルはそのまま手持ち、             片腕を腰へと添え……元通り、とも言えぬものだが、類似する、まではもっていけただろう 01:18 rouge >【シェルファ】「ふふ、やっぱり好みだわ。」                 そんな軽口を叩きながら。栞に目聡く気付き、目を細めて忍び笑い。                「それじゃ、先ずは手始めに甘いものでも貰いに行きましょうか。 好きでしょう、甘いの?」                 シェルファもまた立ち上がり、燐の隣に並ぶ。 「それじゃ、ガクエンサイ、再開、って所かしらね。」 01:21 hikami >【燐】「―――……何がよ」             その笑みが矢張り引っかかるもの、ではあるか。眉を潜めたままで半眼、それでも尚也へ向けるような追撃は無いまま、である            「―――…出来は期待できないわよ、本当。昨日引っ張りまわされたけれど、これってものは無かったし。             ま、良いわ。甘ければ大抵どんなものでもそれなりにはなるもの」             その感想もどうか、ではあろう。隣に在る女性と共に…階下、喧騒の中へと向う、ある意味では覚悟、を、決めていた            「ほら、行きましょう?」             故に、一歩。先んじる格好で屋上の扉へと、向う 01:28 rouge >【シェルファ】「生徒会喫茶が図抜けている。 らしいわよ。 昨日は半日学園歩き回ったからね…要らない情報も覚えたわ。」                 燐の後ろについていく形で。 昨日の記憶を思い出しながら、彼女は彼女なりにこの時間を楽しんで。                「…どの世界でだって、楽しいことは楽しいのよね。 …それでも。」                 そして、その後ろ姿を見つめながら、呟く。 異世界を捨てたものと、異世界を望むもの。違うようで似ている。                「…ま、これも人生よ。」                 深く考えるのは自分の役割ではない。 悩んで袋小路に陥るのは、尚也だけで十分だ。                  燐に歩調を合わせるために、長い足をゆっくりと動かし始めた。 01:32 hikami >【燐】「生徒会?……部活だけでなく委員会も出店してると思ったらそんな所まで、か……―――」             半日…戦闘に関して、だろうか。己の怠惰な無為とはまた違うその内容―――嘆息、本日何度めか、なんて数えるのも馬鹿らしい            「―――……どうかしら。」             それでも尚…己は望むのだろう―――“外”を。重く、己を“護って”くれていた扉を開き、それなりに長い階段を一歩づつ降りてゆく。             ――――――その先に待つのは確実に喧騒、己の嫌う、モノ。             ―――――――――それでも尚今は進む、どんな気の間違いなのだろう、結局答えなぞ、出ないまま―――……