21:17 kitsun___>ゴールデンウィーク中の任務。その時の怪我が元で、しばらく病院へ通うことになった 21:17 kitsun___>検査だけとはいえ、苦手なところには変わりない 21:17 kitsun___>だが、それ以上に暗澹たる気分にさせるのは…… 21:18 kitsun___>【環】「これ、どうしよう……?」 21:19 kitsun___>作戦前に一華に借りたリボン 21:19 kitsun___>血と泥でぼろぼろになったリボンを見つめ、環は重苦しいため息をついた 21:26 hikami >【燐】「―――……ん?」 通うほどの重症ではないのか、もう直ぐ夏だというに長袖を引っ張り出した以外は表面上なんら変らぬ容色を保った少女は… ―――病院に居た。単純な話、退院したとの連絡のすれ違いから春奈の病室へと向い損ねたというだけではある。 無駄足もまぁ、リハビリか…そんな方向に考えひとまずは携帯の使える院外へと向う途中に見える見覚えのある姿。 …そういえば、頭を怪我していたか…? 「―――入院、じゃないわよね、私服だし。…―――頭をやった怪我、ダメージが残ってるの?」 21:28 kitsun___>【環】「一華!?」  リボンをダメにしてしまったことをどう謝ろうか考えていたところに、当の本人から声をかけられて驚く。 で、手に持っていたリボンを隠すこともできずわたわたと 「どうしてここに!?」 21:32 hikami >【燐】「人の見舞い。 ま、入れ違いだったけど……考えてみれば横着しないで携帯を使えばよかっただけなのだけど入院中だと思っていたし、 面倒だから直接来たら入れ違い」 院内では電源を切りましょう、なんてもの、きちんと守っているだろうとの予測からそもそも使わなかったのだが… 連絡の入れ違いは如何ともし難く結局は無駄足、表情に浮かぶのはその不機嫌である 「―――で、それよりなんで人の顔を見て、慌てるわけ?」 21:38 kitsun___>【環】「ああ、その……」  不機嫌そうな顔を見て、下手に誤魔化したら火に油だろうなと予想する。 「すまん」  ボロボロのリボンを差し出して、頭を下げる。結局ストレートに謝ることにしたらしい 「お前から借りていたリボン、結局ダメにした」  とリボンを差し出す。綺麗にしようと努力した形跡は見えるが、血の跡が残っている 21:40 hikami >【燐】「―――なんだ、そんな事」 その様子見れば盛大に嘆息、差し出された布をひょいと摘み上げて 「戦場で、フロントアタッカーに“防具”を貸して無事に戻ってくるとは思っていないわ。 “当たらないで済む雑魚”ならば兎も角今回の標的は面倒な相手、頭蓋が吹き飛ばないで済んだのなら問題ないんじゃない?」 21:43 kitsun___>【環】「いや、だが……いい素材で作られているものだし、なにより、使い込まれてる跡があった。愛着のあるものなんじゃないのか?」  綺麗にしようと四苦八苦している過程で気付いたこと。 だからこそ余計に、そういったものを不用意に借りてダメにしてしまったという後悔がある。 21:48 hikami >【燐】「生地の安さを選ぶならそもそもこんな格好、しないわ?」 こんな、と示すのは…ビスクドールめいた装束であり、大量のレースやシルクで構成されたドレス、である。 ゴシック趣味と言うよりも、白、と言う事を優先させた結果ロリータファッションに近い 「使い込まれている、も正解だけれどそれは“防具”―――そもそも換えるためのもの、 何時寿命になるかも判らないものだし、そもそもが今は新しいものを使っているわ? ―――つまり“予備”それが多少傷が入った所で所詮その程度、物、だもの。 何もせずにただ漫然と殴られるがままに任せて破損させた訳じゃないのは見ているし、だったら問題ないわ。 寧ろ………“コレを庇う為に被弾する”方が愚かだもの。という訳で気にする必要、無いわ」 21:54 kitsun___>【環】「そうか……。ありがとう」  意外な言葉もらって、ちょっときょとんとした後で礼を言う 21:55 hikami >【燐】「…何?」 その姿こそが違和感でもあったのだろう、眉を潜めてしまうのであった。破損したリボンはポケットに仕舞うでもなく、手に握ったままである 21:58 kitsun___>【環】「いや……」  ちょっとあっけなさ過ぎたので、次の言葉が続かない。どう言おうか視線を中に彷徨わせる 22:02 hikami >【燐】「そう」 ならば恐らく問題ない、肩を竦めて見せつつ…… 「―――ま、怪我はさっさと治す事ね。私もあまりヒトの事は言えないけれど、 事態はかなり厄介だもの。これで2例…―――連中がこれで引く事はまずあり得ない訳だし。 おかしな小細工さえなければもう少し押し込めただろうけれど…―――ダメージを残して戦うのは面倒だわ」 22:05 kitsun___>【環】「……ああ、そのつもりだ。もっとも俺はまだ平気だが、お前は? ステンノーのカバーがあったとはいえ、ひどい怪我してたろ?」 22:08 hikami >【燐】「多少、歩行に支障がある程度ね。日常生活での段差が鬼門な程度……どうせ月匣内では飛翔するから影響はないわね。 最も、真下からの打撃だったからこそ避け切れなかった訳なのだけど。」 それ以外と言えばむき出しであった肩口から先のそれなりに深い切り傷程度、 絆創膏、と言うわけにもいかず包帯での固定の所為、美しくない、なんて理屈での長袖着用である 「見た目が酷いだけ、別に問題はないもの、それに、生憎先刻の出撃直後だから“養生しろ”って事で出撃も禁止、 待機状態だから余計に影響なし、ね」 22:12 kitsun___>【環】「そうか。……って歩くの、辛いのか?」  歩行に支障が出ていると聞いて、思わず尋ね返す 22:14 hikami >【燐】「“億劫”程度ね。だから当面はフィールドワークを避けて資料整理、 あれだけの事をやらかせるウィザードだもの、どこかの資料に残ってたとしても不思議じゃないわ。 最も、そんなのすら掻い潜っている可能性すらあるけど、 その時はその時ね。幸いゴールデンウィークだから調べる時間も、脚を治す時間も幾らでもあるもの」 22:18 kitsun___>【環】「だが、いまここまで来るのも辛かったんじゃないか?」 22:20 hikami >【燐】「―――そこまで重症じゃないわ。バスだって出ているのだもの。 此処は病院よ?だったら“怪我人が来る”事に何か、違和感でもある? …ま、私の用事は流石に医務室じゃないと不味いから此処には用事がない、と言うより…なくなったから無駄足、だけど。 つらいほどの負傷だったら尚更、とっとと治してるわ。―――私は癒手、負傷を“痛い”と言うのは我侭か自虐でしかないわ」 22:22 kitsun___>【環】「そうか……。強いな、一華は」  目の前の小さな少女に、半ば羨望をこめた口調で呟く 22:24 hikami >【燐】「……じゃあ、貴方が弱いだけね。私は何かを強いと思ってやっているわけじゃないわ」 嘆息を零し…くるりと、身を翻す。以前の舞う様な足取りでは流石になく、何処か雑である 「―――仕事だもの」 22:26 kitsun___>【環】「仕事……か」  自分より年下、いうなれば幼い彼女が、何故ここまで冷徹に戦いへ身を投じることができるのか。 その疑問は、自然と口をついて出た。 「じゃあ、そうやって仕事をこなす意義はなんなんだ?」 22:30 hikami >【燐】「“ウィザードだから”よ。世界結界の存在を知覚し、紅い月と渡り合う資格がある。 ただそれだけね、おなかが減って、食事をする事と同じようなもの。“ウィザードだから”“戦う”」 来るとは思わなかった問いかけに脚を止め、半身で振り向くのみ 「それとも“どこかのだれかの未来のために、地に希望を、天に勇気を取り戻す”なんてユメでも掲げる方が好み?」 22:34 kitsun___>【環】「……哂われるかもしれないが、俺は後者のほうがいい」  肩越しの視線をまっすぐ受け止め 「戦うことが嫌いでも、誰かのためにって言って戦うやつを知ってるからな」  左手の羽飾りに触れながら答える 22:37 hikami >【燐】「“誰かの為に”と言う事そのものは否定しないわ。 実際ウィザードが世界結界を守るのは自己保身以上に世界秩序の為と言うものがあるのだもの。 でもそんなお題目を唱えるつもり、ないわ。“誰かの所為で戦う”事は必要ない、“どこかの誰か”なんてものに頼る気も勿論無いわ。 ―――私はヒロインぶるつもりも、救世主ぶるつもりもない。自分の為に“殺し”をするだけよ」 22:40 kitsun___>【環】「……」  苛烈な宣言に息を呑む。 「……お前は、独りになるのが怖くないのか?」  浮かぶ疑問をぶつける。 22:43 hikami >【燐】「全く?」 躊躇いも無く、あっさりとした反応。表情一つ変えずに居て 「孤軍奮闘する不利は知っていても“誰かが居なければ戦えない”と言う程弱音を吐くつもり、無いわね。 負けるつもりも元々有り得ない、味方勢力に損害を出さない様にするのが努めである以上、死人を出すツモリもない。 ただ目の前に敵の躯が転がるのみ、ね。―――今回の場合は比喩でなくまさしくそうなるのだし」 22:46 kitsun___>【環】「……そうか」  彼女の強さ、その理由の一端を垣間見て、ため息をつく。その強さは、かつて自分が求めたもの。 だが、決して手に入れることはできないもの 「じゃあ……お前にとって、『仲間』は何だ?」  ポツリと、囁くように問う 22:51 hikami >【燐】「仲間?“同僚”ね。同じ仕事、同じ任務、同じ標的―――それを効率よく叩く為の“同志”  振われない剣も、矛の無い盾も、護られぬ癒し手も、それぞれに意味があるようで無いわ。 効率よく異界の存在に対抗する為には必須のモノ。 任地が変れば顔も変るわ?実際私と貴方、元の出身も違えば所属も違う、実際、私は移籍はしては居るけれど兼務みたいなものだもの?」 22:54 kitsun___>【環】「……ああ、やっぱりお前は強いな。いや、"お前がお前だから"強いのかもな」  その答えを聞き、予想が確信にかわる。一華燐は強い。だがその強さは、誰も必要としていないからこその強さだと 22:57 hikami >【燐】「別に」 賛辞ですらも一蹴、肩を竦め…嘆息 「―――“強い”つもりでは、居ないわ。それが当然、ウィザードとしての、エージェントしての必要要件だからだもの」 再度、視線を外し、背を向けてみせる。そのまま、一歩前へ 「―――もう行くわ、公共施設であまり不穏な会話をすると目立つもの」 23:00 kitsun___>【環】「……それもそうだな」  同意して見送る。怪我して歩きづらそうにしている彼女に、手を差し伸べるようなことはしない。 彼女はそれを望まないだろう。たとえ、それが今以上に大きな怪我を負っている時でさえ。  「お大事に……な。次は万全の体調で戦うのだろう?」 23:03 hikami >【燐】「“次も”ね。―――不利は排除するわ。癒し手が脚を引っ張るようじゃお終いだもの」 別れの言葉は先刻の一言なのだろう、それだけを告げると何処か不安定な靴音を響かせ廊下を歩む。 歩調のリズムが整わず、それが不快―――それだけ、のはずだ。イラついた思考を抱えつつ、少女は再び非現実へと消えいく――― 23:05 kitsun___>【環】「……」  彼女の立ち去る姿を目の端で追いながら、その在りように思いを馳せる。 自分と決定的に違う、その在りように。 「『独り』でいるからこその強さ……か」 その呟きは、病院の白い壁へ吸い込まれて消えた。