21:38 >utai< 新宿公園に、逃げてきた男が一人。 21:38 >utai<   21:38 >utai< 男は奇声を上げながら、逃げる、逃げる、逃げる。 21:38 >utai<   21:38 >utai< 「空が!空が落ちてくるぞ!空が!空が!」 21:38 >utai<   21:38 >utai< 「新宿に!落ちるぞ!落ちて、落ちて―――ー」 21:38 >utai<   21:38 >utai< 泣き叫びながら、逃げて、逃げて―――そのまま、舞台から退場するかの 21:38 >utai< ごとく、消えて失せた。 21:38 >utai<   21:38 >utai< 杞の人、天の落ちうるを憂う。 21:38 >utai<   21:38 >utai< 後に、杞憂という。 21:38 >utai<   21:38 >utai< 魔都物語 〜Darker than Darkness〜 21:38 >utai<   21:38 >utai< 「杞憂」 21:38 >utai<   21:38 >utai< ダモクレスと、マグリットに捧ぐ。 21:45 >utai<   21:45 >utai< 導入:アリシア・ベルスター 21:45 >utai<   21:46 >utai< この街には空がない、と言ったのは誰だったか。 21:47 >utai< ただ、空が見えなくとも虚空は確かに存在し―――地に立つ限り、蒼穹の檻の中に居る。 21:47 >utai<   21:49 アリシアはふと足を止め夜空を見上げる。 21:50 >utai< 不思議と、この夜は空が――空が、妙に近く、そして広い。 21:51 【アリシア】:故郷のケンタッキーとは違い禍々しい夜空…。 21:51 >utai< 【チンピラ】「………んあ?何だぁ、姉ちゃん。こんなところをうろついてると危ない目に遭うぜ〜?」 21:52 >utai< そんな感慨をぶち壊しにするように、禍々しいというよりはいっそ滑稽な、暴力によって立つ男が、いた。 21:53 【アリシア】「あら、いつもと変わらない新宿の夜道…残念」 21:54 【アリシア】は退屈そうに暴漢の男を見詰める。 21:54 >utai< 【チンピラ】「……あ?何だ?」 21:55 >utai< 【ブラックローズ】「――――先を、急ぐのではなかったか―――?」 21:55 【アリシア】「いえ、今夜は夜空がいつもより狂気を帯びているので、狼男でも出るのかと思って」 21:56 >utai< 【チンピラ】「は!いぃいねえ―――狼か!赤頭巾ちゃん―――食ってやるぜ!」 21:56 【アリシア】「でも、ただのチンピラさんのようですね…実は今夜は野暮用がありますのよ」 21:57 【アリシア】「だから貴方にお付き合いできませんのよ」 21:58 >utai< 【チンピラ】「―――折角楽しくやれるかと思ったんだがよぅ……。こりゃ、しゃあねえな」いきなり、大鉈を高そうなスー ツの下から取り出し、振りかぶる。 21:59 【アリシア】「まあ、怖い。(といいつつサテンのドレスのスカートを捲り上げる) 22:00 >utai< 訝しげに、チンピラの表情が変わる。しかし、その一瞬後に――――。 22:01 /チンピラの両足は弾丸に撃ち抜かれていた。 22:01 /夜空に銃声と暴漢の悲鳴が木霊する。 22:01 >utai< 【チンピラ】「ひ、ひぎぃ、痛ぇ、痛ぇっ!?痛覚は、痛覚は切ってるのによぅ――――!」 22:03 【アリシア】「この弾丸は心に恐怖を植えつけるのですよ」 22:04 >utai< /悲鳴を後に、アリシアは目的地へと向かう―――。 22:05 >utai<   22:05 /アリシアは古ぼけたアトリエと到着した。 22:05 >utai< (演出は通し、DPは入らず) 22:06 >utai< ひどく、不完全なところだった。柱や壁の構造はむき出し、塗装も壁紙もいい加減。 22:06 ブラックローズ「ここがあの道楽者のアトリエか…」 22:06 >utai< 内部に陳列されてあるものといえば、習作用のスケッチや彫刻、書きかけて放置した楽譜にレシピ―――。 22:07 >utai< 【??】「………あら。アリシアさま?」 22:07 【アリシア】「あら?」 22:07 >utai< そして、顔以外、バネやゼンマイが剥き出しの、全裸の球体人形。 22:08 >utai< 【??】「お久しぶりで御座います、アリシアさま」『彼女』は一礼する。そのたびに、ぎしぎしと、音がなる。 22:09 /【アリシア】「こんばんわ。マリー」 22:09 >utai< 【マリー】「こんばんは。お会いできて光栄で御座います。生憎と主は不在で御座いますが」 22:10 【アリシア】「御久し振りね…不在?」 22:10 >utai< 【マリー】「主の肉体は164時間前、生命活動を停止しました」 22:11 【ブラックローズ】「実に自動人形らしい解釈だな」 22:12 【ブラックローズ】「人間の死というものを完全に理解するのは難しいか」 22:13 >utai< 【マリー】「その回答は不完全です、ブラックローズさま。私には主が生のために肉体の生命活動を必要としていたという各 章がありません。そして、主からアリシアさまに伝言がございます」 22:13 【アリシア】「はあ、あの道楽者が死ぬとは到底思えなかったのよね…」 22:14 【アリシア】「伝言は何かしら?」 22:15 >utai< 【マリー】「……『久しぶりに戯曲なぞ書いてみた。お前さんの感想を求む―――』以上です。その脚本は、こちらに」大き く開いた体腔から、一冊の本を取り出す。 22:15 >utai< 丈夫だが、薄い紙で綴じられたその本の題名は、「杞憂戯曲」とあった。 22:17 【アリシア】「杞憂戯曲…ね…」 22:17 アリシアは本の最初のページを開いてみる。 22:18 >utai< そこには、新宿公園で叫びながら逃げる男の姿が記され、そして―――。 22:19 >utai< /故人となった旧友のアトリエを訪ね、そこに備え付けてあった自動人形から一冊の台本を渡された、アリシア・ベルスター の名があった。 22:20 【アリシア】「あっ…私もキャストに入っているのね…面白いわ」 22:22 >utai< 【マリー】「ご健闘を」それを最後に、忠実な自動人形は、その動きを止めた。 22:22 >utai<   22:22 >utai<   22:24 >utai< 導入:アルトゥール・イリヤ・チェルノフ 22:24 >utai<   22:24 >utai<   22:25 >utai< このところ、空気が妙に澄んで、冷たい。 22:26 /凛とした空気、それを感じて笑む少年とも青年ともつかない男性が一人。 22:27 何かに導かれるように歩くその姿は周囲の誰よりも確たる存在感を持ち、誰もが思わず足を止めて見入ってしまう。 22:29 >utai< それは人だけではない。鳥も、獣も、虫も―――否、それどころではない。風は彼の気を引こうと渦を巻いて曲を奏で、大地 は彼の靴音に合わせて妙なる調べを奏でる。 22:31 /視界の端に何か影が見えて彼は足を止めてそちらに視線を向ける。その影は大きな岩、誰も気付かぬ様子に足を止めて首 を傾ける。ただ、それだけの動きにも空気が一瞬止まり。 22:32 >utai< 完膚なきまでに潰された―――おそらくは人間だった、何か。血と肉の欠片は、君の目により長く留まろうとして、美しい幾 何学模様を描いている。 22:34 美しい模様に興味をそそられず、ただ彼の視線は巨大な岩にのみ向けられる。 22:34 >utai<   22:35 >utai< 「これを見たものに、同じ呪いがありますように」 22:35 >utai<   22:35 周囲は突然潰れた人間があるにもかかわらず、それが現実のものには思えないかのように立ち尽くして。 22:35 >utai< (GM権限でDP取得) 22:39 >utai< /ふと、イリヤは上を見上げる――――。頭上に、剣のように尖った、大岩が、ひとつ。 22:39 【イリヤ】「呪い…?」(楽しげに唇から漏れる声音は人々の現実感をより奪うほど耳に心地の良い響きで、小さく笑みを 零せば命ある者ない物関わらずに視線が注がれて) 22:40 影に気付き空を見上げる。瞳に移る大岩に手を伸ばす。来るなら来い、そう言うかのように 22:43 >utai<   22:43 >utai<   22:44 >utai< 邂逅 その1 22:44 >utai<   22:44 >utai<   22:47 >utai< /翌日の昼下がり。アリシア・ベルスターは濃いコーヒーを飲んでいる。 22:47 >utai< 【ブラックローズ】「……よくわからん事態になったものだな」 22:48 【アリシア】「さて…感想を述べるには読むしかないんだけど…」 22:49 >utai< ページをめくると、そこにはコーヒーを飲むアリシアと、感想を述べるブラックローズ。 22:49 /【アリシア】「逃げる男の姿男のシーンから先は何も書かれてないのよね」 22:50 >utai< (通し。DPを獲得してください) 22:50 ブラックローズ「コレでは感想なんて述べれんな」 22:50 【アリシア】「そうよね…あら…」 22:51 /アリシアの瞳に、奇怪なものが写る。窓の外には人の領域にはありえない存在感を持つ、闇よりも深い色をした髪を持つ 者とその頭上には尖った大岩が彼を狙うかのように上空にある。 22:51 【アリシア】「凄いファッションね。最近流行してるのかしら?」 22:52 ブラックローズ「そんなわ訳なかろう!おい、本を見ろ!」 22:53 /何か常人と違うものを感じて彼は窓の外からアリシアを見つめる。黒い極上の宝石のような瞳で。 22:53 /白紙のページに、まさにその男と同じ描写が記される。 22:53 >utai< (自己演出と判断。DPは獲得不可、演出は通し→22:53のイリヤの描写) 22:54 /ブラックローズ「キャストが増えたな…」 22:54 /【イリヤ】「まさか、こんなところで魔銃ブラックローズの存在を感じるとはな」(彼の紡ぐ言葉はそのまま本に書き連 ねられていく) 22:55 /【アリシア】「アルトゥール・イリヤ・チェルノフ…」 22:56 アリシアはこちらを見ている男(イリヤ)を見詰め返しにっこり微笑む。 22:58 アリシアの笑みに僅かに笑み返し彼はアリシアのいる喫茶店に入り、静まる周囲に気をとめずにそのまま彼女の席を目指す 。 22:58 【アリシア】「こんにちは。アルトゥール・イリヤ・チェルノフさん?」 22:58 【イリヤ】「……ブラック・ローズか。何故、私の名を知っている?」 22:59 【アリシア】「どうやら…貴方も杞憂戯曲のキャストみたいなの」 23:00 >utai< /イリヤがいぶかしむ。その顔すら―――筆舌に尽くしがたいほど、美しい。 23:01 【イリヤ】「杞憂戯曲…それは、このような建物の中にまで存在できるあの大岩も関係するのか?」 23:01 【アリシア】「これが台本よ…ほら私の名前の横に貴方の名前が追加されてるわ」 23:01 /建物の中でも変わらずに存在している大岩を軽く示して 23:02 【イリヤ】「追加…?それが呪いの元……?」 23:03 >utai< 【??】「………ああ、いやいや。それは真逆というものです」 23:03 【アリシア】「さあ、それは分からないわ…だから…二人で調べない?」 23:03 【アリシア】「あら?」 23:04 【イリヤ】「真逆・・・?」 23:04 【イリヤ】「アリシア、知り合いか…?」(マリーと同じ姿をした少女を示して問う) 23:05 /【アリシア】「外見はね…中身はどうかしら…」 23:06 >utai< 【??】「あ、わたくし、竹中と申します。――――外面はマリーのを借りてますが、本体の姿は違いますよ?」 23:06 >utai< ぺこり、と慇懃な会釈をする。 23:07 【イリヤ】「それで、お前は私達に何のようだ。他者の姿を借りて…」 23:08 【アリシア】「戊統語郎の知り合いなら…この本に用があるのかも」 23:08 >utai< 【竹中】「―――ああ。ちょっとした幕間ですよ」 23:09 >utai< 【竹中】「それ自体はただの脚本であり―――結果であって原因ではない。戊統語郎の狂気の賜物です」 23:12 >utai< 【竹中】「何しろ、あなた方は直に私をご覧になっていない―――。だからまあ、マリーの姿を借りました。私の望みは唯一 つ―――この台本の完成と、『杞憂戯曲』の上演です。間都を舞台にした、ね」 23:13 ブラックローズ「なるほど、あの道楽者の考えそうな事だ!」 23:13 【イリヤ】「ブラック・ローズ。それを貸せ」(僅かに笑みながら台本を示して抗いがたい声音を紡ぎ) 23:14 【アリシア】「はい、どうぞ」 23:17 (満足そうな表情を見せてアリシアから台本を受け取り、ポケットからペンを一つ取り出す 23:17 ブラックローズ(おい…この色男気をつけろ…普通の人間ではないぞ) 23:18 【アリシア】(分かってるわ…夜の貴族のようね) 23:18 >utai< ペンを滑らせる音は天上の音楽、動きは黄金と白銀と宝石に彩られた舞踏王の姿。 23:18 【イリヤ】「だが…結果であっても原因にすることは出来るだろう。どちらが先であるということなど、関係ない」(サラ サラと台本に流麗な文字を書き連ねていく。それは竹中の本体が遠からず自分たちの目の前に現れるという内容のもので) 23:20 >utai< 【竹中】「では、また後ほど―――」ぱちん、と指を鳴らすと。 23:20 >utai< 喫茶店にいた、イリヤとアリシア以外の全ての人間が――――。 23:20 >utai<   23:20 >utai< 岩に、潰された。 23:20 >utai<   23:22 >utai< 見よ、見よ、見よ! 23:22 >utai< 墓標のごとく彼らの頭上に突き立った岩を! 23:22 >utai< それらの一切にある―――「呪いあれ」なる言葉を! 23:23 >utai<   23:23 >utai< (運切によるジャッジメント。アリシアは呪いを受ける) 23:24 + 23:24 >utai< * 23:25 + 23:26 >utai< (成立。アリシアは自分の頭上に、砲弾じみた岩が浮遊しているのを見る) 23:28 【イリヤ】「どうやら、お前にも「呪い」がかかったようだな」 23:28 (そう言って僅かな穢れもない指先でアリシアの頭上を示して) 23:29 【アリシア】「…これで私も呪われたという訳ね…」 23:31 (周りの惨劇を見て)【アリシア】「…この惨劇が脚本家の悪夢である事を願うわ」 23:32 >utai<   23:33 >utai< 邂逅 その2 23:33 >utai<   23:37 >utai< /心当たりが無くもない、とイリヤは言った。 23:38 >utai< /そしてその言葉で、【アリシア】も一つの場所を思い出した。 23:40 >utai< 「天球堂」。かつて戊統語郎が属していた、芸術家たちのサロンである。 23:41 /それは明治初期の建造物を思わせるレトロな建物で、アリシアもたまに足を運んでいた。 23:42 【アリシア】「天球堂に行ってみましょう。何か分かるかも知れないわ」 23:44 /【イリヤ】「昔、よく似た話を見た覚えがある。戊統語郎…それか彼の縁者の物語の中にだったような記憶がある。なら 、ここが一番の手がかりになる。そうは思わないか?」 23:45 >utai< そう言いながら、ゆっくりと天球堂の扉をイリヤが押し開く。 23:47 /サロンの中は異様な熱気に満ちている。そこには何かを生み出す者のエネルギーがある。 23:47 /開いた扉の向こう、其処には人々の活気それでもその中にはレトロな建物に相応しい上品さがあり。 23:49 >utai< 【執事】「ようこそ天球堂へ」典型を削りだし、戦乱とそれを越える調和で彩った執事が、恭しく一礼する。 23:50 【イリヤ】「…戊統語郎について話を聞きたい」(ぶしつけに用件を口にして深く笑む) 23:51 【アリシア】「どうも、お久し振りです、セバスチャン」 23:51 イリヤとは正反対に恭しく一礼する。 23:52 >utai< 【セバスチャン】「お久しぶりです……戊氏でございますか?彼のどの分野について?」 23:52 【イリヤ】「彼の交友関係、それと…脚本についてだ」 23:53 >utai< さて、では判定を。あらゆる手段を用いて「情報を引き出せそうな」組み合わせを、可能なら演出込みで上げてください。 23:56 魔魅+操作+共感 神域の+2 23:56 紡がれる彼の声音は天上の調べよりも尚耳に心地よく、全ての警戒心それを取り攫ってしまうかのように紡がれる。 23:56 2d6+2 23:56 akeno -> 2D6+2 = [5,3]+2 = 10 23:56 akeno:2d6+2 = [4,6]+2 = 12 23:57 2d6+2 23:57 akeno:2d6+2 = [3,4]+2 = 9 23:57 >utai< はい、ではあらかたのことがわかります。そもそも秘匿もしとらんし。 23:58 >utai<   23:58 >utai< 杞憂戯曲。 23:59 >utai< オリジナルは、彼の弟子の作。名を竹中義春という。 00:00 /杞憂戯曲。 00:00 /それは狂気の産物。 00:02 /読む者をも物語の中へと引き擦り込む呪われし書物。 00:05 >utai< 空が落ちると騒いだ男は、逃げ惑う内に、空を落とさずに済ませようと東奔西走する。 00:06 >utai< しかしてその実―――落ちる、という彼の恐怖は呪いへ転じ、空を支えていた石を、その宿主たる人を押しつぶすことで砕かせ―――空を落とし、街を消してしまう。 00:07 /一人の男の杞憂から始まる大悲劇。 00:09 /それでも、物語の最後には希望があると記されている。 00:10 >utai< それは、あるいは溺れるものが掴もうとする藁かもしれない。先の見えぬことからくる、安堵やもしれない。 00:11 >utai< それでも、―――悲劇を止めうる、力になることだけは、確かだ。 00:14 【イリヤ】「そうか…助かる」(セバスチャンに僅かに笑みを向けて) 00:14 >utai< 【セバスチャン】「戊君も、さぞかし草葉の陰で面白がっていることでしょう」 00:15 【イリヤ】「…おそらく、竹中はこの弟子と同一人物だろうな」(アリシアに軽く視線を向けて) 00:15 【イリヤ】「…戊統語郎という人間はそういう人物なのか」 00:16 【アリシア】「おそらく、同一人物でしょうね」 00:16 >utai< 【セバスチャン】「………ええ。彼にとっては天地陰陽森羅万象全てがオモチャなのでしょう……無論、彼自身も含めて」 00:17 /イリア「しかし、これはキャストミスだな…何故なら私の名前がこのキャストにあるとなな。後悔するがいい」 00:19 ブラックローズ「全く…あの道楽者め…面倒な事に巻き込んでくれたな」 00:21 /【イリヤ】「なら、竹中の元に向かうか?…次の場面では彼に会える……そう、浮かんでいるぞ」(スッと台本を一部分を示して) 00:22 【アリシア】「なるほど…ある意味脚本通りでムカつくわね」 00:23 >utai< 向かう先は。最後の一幕が開く先は。 00:23 >utai< 新宿、コマ劇場。 00:23 >utai<   00:23 >utai< 狂演 00:23 >utai<   00:23 >utai<   00:25 >utai< ぱあん、ぱあん。 00:25 >utai< 舞台の上から客席に向けて、拍手が放たれる。 00:25 >utai< 空が落ちるという異常に相応しき、さかしまの舞台。 00:27 >utai< 【竹中】「―――ようこそ――――!」 00:29 >utai< 彼らが始めて目にする青年は、妙な男であった。 00:29 >utai< 美形には、違いない。身体もよく鍛えられ、動きにも無駄が無い。 00:30 >utai< ただ一つ―――目が、見えない。 00:30 >utai< 彼の眼球を、目視することが、できない。 00:30 その男の前に、漆黒の長髪の美青年と、金髪のグラマラスな女性が姿を現す。 00:33 【イリヤ】「…一つ問う。お前は、存在しているのか?」 00:33 >utai< 【竹中】「つまらん質問だ!私はここに居る!それ以上の価値がどこにあるか!」 00:33 /【イリヤ】「だが…お前はここにいる誰よりも存在が希薄だ」 00:34 >utai< 【竹中】「……なんだと?」 00:35 /【イリヤ】「…見ろ。お前にはあるべき影が希薄だということを・・・。いや、その目では見えないか」 00:37 >utai< 【竹中】「――――現世は夢!夜の夢こそ真!ならば影無きこの身こそ、至上の実在なり!」 00:37 >utai< 見よ。目の無いその貌を。 00:38 >utai< 影のない、その姿を。 00:38 >utai< 見よ、見よ―――汝らの上にある、大岩を! 00:39 >utai< 【竹中】「落ちろ!落ちろ!空が落ちる前に!空が落ちると共に!潰れろ!潰れろ!運命地獄の大からくり!」 00:39 >utai< (運切によるジャッジメント。二人の即死) 00:39 + 00:40 * 00:41 >utai< * 00:42 >utai< (成立。運切による対処を行わない限り、二人は頭上の岩に押しつぶされて死ぬ) 00:42 だが、見よ! 00:44 二人の頭上に落下しようとする呪いの岩の周りに生じた不可思議な亀裂を! 00:46 全ての観客が、全てのキャストが、全ての者がそれに気が付いた時には、既にアリシアの魔銃は引き抜かれ天高く掲げられていた。 00:48 その亀裂はペンタグラムの形に並んでいた、まるで夜空に輝く光のように! 00:48 【イリヤ】「ブラックローズ……伝え聞く以上の威力だな」 00:49 人々の心描く夜空の星座のように! 00:51 /粉々に砕かれた大岩はまるで星屑のようにキラキラと光りながら降り注ぐ 00:51 その星座に呪われし岩が触れたとたん、岩は砕け散り星屑となった。 00:52 >utai< (ジャッジメント。先ほどの運切の無効化……で、よろしい?) 00:52 運切返し(呪いの岩の無効化) 00:54 >utai< + 00:54 + 00:55 + 00:55 >utai< 成立。 00:55 >utai< 【竹中】「――――ふ、は、はははははは!何故だ!?何故こんな大岩を砕いて空が落ちてこない!?」 00:56 【アリシア】「運命とは自分で切り開くものよ。誰かが決めるものではないわ] 00:57 【イリヤ】「…そうだな。だから…これも消えよう」 00:58 (懐から取り出すの1冊の本。彼が言葉を囁く、本に向かって。消えろと…その瞬間本は悲しみに震えて) 00:58 (ジャッジメント:脚本の[破壊] 00:58 + 00:59 >utai< + 00:59 + 01:00 (震えた本は哀しみに震えながら自己崩壊を起こしていく。万物に愛され死存在から否定された己に存在価値を認められなくなって) 01:01 /脚本とは誰かに読まれて初めて存在価値を成すのである。 01:01 /それを否定されてしまったら…。 01:02 【イリヤ】「……さぁ、脚本は無くなった。後は私たち自身で動くだけだ」(ひらりひらりと破れた紙の破片は彼に纏わりつくようにしながら地に落ち、彼はそれに見向きもせずに一歩前に出て) 01:02 /ただ、消えるしかない―― 01:03 >utai< 【竹中】「――――――ぁ」 01:04 /ブラックローズ「竹中…空が落ちるというのは…ただのお前の杞憂だ」 01:04 >utai< 【竹中」「あ、あああ―――あ、あーぅ、うう―――」泣いている。 01:06 >utai< 存在意義が根本から崩されて、ただそうするしかないから、震えて居る。 01:07 >utai< 既に語るべき言葉は失せ、動くべき形もなく。 01:08 >utai< ただ不在ではないという意味だけにおいて、“ある”存在は、この世界に何を為せるというのか。 01:08 【イリヤ】「…お前は、自身で動けない?自身で語るべき言葉もない?ならば、疾くと失せろ。それでは、書き手としての存在する意味はない」 01:10 >utai< 【竹中】「――――――先生に、よろしくお伝えください――――」ばらばらと、本が破れるように、インクが流れて落ちるように、「竹中」の姿が、消えていく。 01:10 /全てはやがて覚める夢の終わりが如し。 01:11 >utai< ――――空は落ちず、杞憂は、杞憂のまま。 01:13 >utai<   01:13 >utai<   01:15 >utai< 終幕:イリヤ 01:15 >utai<   01:15 >utai<   01:16 >utai< 竹中義春。戊統語郎の弟子。杞憂戯曲を書き上げるも、気鬱が昂じて自らの命を絶つ。 01:16 街の中、立ち止まって彼は空を見上げる。 01:17 >utai< 摩天楼の故か。大気の濁りか。それとも、誰も見ていないが故か。彼に絶対の愛を寄せる空ですら―――よく、見えない。 01:18 【イリヤ】「弱いな…。だが、何故空が落ちると思う。空はこんなに高く…遠い」 01:18 そう言って彼は僅かに表情を曇らせる。 01:20 良く見えない空にそう言葉を紡ぎ、それでも誰かの喪に服しているかのような空に蒼い明るい色を見せて欲しいとは願えず。 01:21 【イリヤ】「……今度は、もっと強くなってもどれ。私は、お前の才能だけは認めるのだから…」 01:22 見よ!彼の言葉と時を同じくしてこの世界のどこかに一つの命が宿る 01:22 それは竹中と同一の魂を持ったものか、それとも… 01:22 (ジャッジメント:竹中の転生) 01:22 >utai< + 01:22 + 01:23 + 01:23 >utai< 成立。 01:23 恐らく、彼と同じ…否それ以上の才能を持った書き手が現れるだろう。 01:24 人の時間にしては長くとも人でなき者たちにとっては刹那に等しい時間。 01:25 だが、いつかは必ず表れて永く語られる物語は生まれる。 01:25 人間が、その美を物語を知っているもの達が無くならない限り語り継がれていくものが。 01:27 >utai<   01:27 >utai<   01:27 >utai< 終幕:アリシア・ベルスター 01:27 >utai<   01:27 >utai<   01:28 >utai< 【マリー】「―――ようこそ、アリシアさま」アトリエを再び訪れた君に、相変わらず慇懃な態度を示す、未完成の自動人形。 01:29 【アリシア】「はい、マリー。こんばんわ」 01:29 >utai< 【マリー】「今日はどういったご用件でしょうか」 01:31 【アリシア】「杞憂戯曲の感想を言いに来たのよ」 01:31 >utai< 【マリー】「はい、いかがでしたか?」 01:32 /【アリシア】「その前に、アトリエに入れてくれる?誰もいないでしょうけど」 01:32 >utai< 【マリー】「かしこまりました」 01:33 【アリシア】とマリーは戊統語郎のアトリエへと入る。 01:34 >utai< 面白いほど、未完成品と中途半端の揃い踏みする、奇妙なアトリエ。 01:35 /そこには誰もいない…当然だ戊統語郎はいないのだから。 01:35 【アリシア】は奇妙な形の椅子に腰掛け、バーボンを煽る。 01:36 【アリシア】「…杞憂戯曲…読んだわ」 01:37 【アリシア】「感想は………………駄作ね…」 01:38 >utai< 【マリー】「そうでしたか」 01:38 【アリシア】「勘違いしないでね…一つだけ足りないものがあるの」 01:39 >utai< 【マリー】「と、いいますと?」 01:39 【アリシア】「それは…ヒロインの涙よ…」 01:39 【アリシア】「今回だけは、私が泣いてあげるわ、貴方のために」 01:42 アリシアは愛すべき道楽者の親友の死に涙した。 01:43 【アリシア】「マリー、次からは貴方が主の為に涙しなさい」 01:44 見よ! 01:44 機械仕掛けのマリーの瞳から流れる涙を! 01:45 それは何かの奇蹟か、それとも戊統語郎を愛する何者かの魂が宿ったのか! 01:46 運切(マリーたんが主の死に涙したなり) 01:46 + 01:46 >utai< + 01:47 + 01:47 >utai< 成立。 01:48 >utai< 【マリー】「これが、涙ですか。……悪く、ありませんね」滂沱をわずかに拭い、微かに―――笑う。 01:49 /アリシアはマリーのおでこにキスするとアトリエを後にした。 01:50 見上げると新宿の夜空が浮かんでいた。 01:50 どうやら、魔都の空は落ちて来そうになかった。 01:51 >utai<   01:51 >utai<   01:51 >utai<   01:51 >utai< 魔都物語 Darker than Darkness 「杞憂」 01:51 >utai<   01:51 >utai< 終幕。 01:51 >utai<