00:50 >utai<   00:50 >utai< 古い木で作られた扉が開く。年代ものの癖に錆び一つない鐘が鳴る。 00:51 >utai< わずかな寒気とともに、僅かな足音が一つ。――――そして、よく拭った血と死の匂い。 00:52 店内には、寡黙なマスターと、カウンター席に客が1人きり。 00:53 ――巨躯の老人、という表現が簡潔だろう。灰色の髪に黒い肌。ダークナイトに身を包み、ミラーシェードがよく似合う。だが、威圧感というより、その雰囲気は……優しい。 00:54 >utai< 【八郎】「お久しぶりです、ミスタ・アッシュ」 00:54 大きな手に、小さなグラス。いや、グラスそのものは普通なのだが……それが小さく見える程に、大きな身体なのか。 00:54 【ギル】「その声は、伏の字かの」 00:55 ギルバートは、軽く、グラスの中の琥珀色の液体を飲む。 00:56 >utai< 【八郎】「はい。――――マスター、私にも同じものを」 00:57 素早く、主人の手が動く。ほぼ無音にも近い状態で、間もなく伏塚の前に、グラスが差し出される。 01:01 >utai< 【八郎】「――――よくない知らせです、ミスタ」 01:01 【ギル】「先に座って飲むとええ。ここはバーじゃからの」 01:02 >utai< 【八郎】「失礼しました」薦めどおりに着席し、一口グラスをあおる。 01:02 【ギル】「……いい音をさせよる。腕は鈍っておらんようじゃな」 伏塚は、数歩を進み、座っただけだ。なのに、ギルバートは平然とそんな台詞を言う。 01:03 >utai< 【八郎】「おかげさまで。―――貴方も、冴えに変わりが無い」 01:04 【ギル】「この店は珍しく本物のスコッチを出しよる。香りがとてもいい」 老人は、己の鼻に軽くグラスを近づけ、軽く手の内で回す。 01:05 >utai< 【八郎】「ええ。いい酒です。正直、私にはいささか勿体無い」まいったな、と苦笑する。そこには社交辞令用の完璧さが無く―――珍しい、彼自身の本音。 01:07 【ギル】「聞こうか。伏塚の」 彼の横顔。ミラーシェードですら隠し切れない、痛々しい拷問の痕跡――彼の両目を奪ったそれ――は、しかし堂々とそこに鎮座している。 01:10 >utai< 【八郎】「ええ。―――バステオファミリー。覚えておられますか?――貴方がかつて叩きのめした一家です」 01:10 店内には、スローテンポのジャズが、耳を汚さない程度の音量で流れている。それが逆に心地よい。 01:11 【ギル】「儂の目がまだ開いておった頃じゃの。よぅく覚えておるよ」 グラスの中の氷が溶け、グラスの中で軽い音を立てた。 01:12 >utai< 【八郎】「――先日、彼らが正式にカーライル・シンジケートの傘下に入りました。条件付で」 01:13 【ギル】「それはまた――如何なる経緯があったのやら」 苦笑。まさしく、にがわらい、だ。 01:15 >utai< 【八郎】「詳細は不明です―――が。“ブリッツレター”を含めた殺し屋数人がマーダー・インクに組み入れられたそうです」 01:16 【ギル】「ハ! 条件とは、儂の命……大方そんな所じゃろうよ。クーゲルの坊主あたりが考えそうな事だ」 01:17 【ギル】「恐らく本当にきゃつらを組み込む気は無いのじゃろうよ……吸えるだけ吸って捨てる。そんな筋書きじゃろうて」 01:17 >utai< 【八郎】「ご明察です」からり、とグラスを鳴らし、一気に酒をあおる。 01:19 >utai< 【八郎】「必要でしたら、我々で入手した殺し屋のリストをご提供できますが」――傷痕と化した目を見据えるように、狗が言う。 01:20 【ギル】「ふむ、面白い。お前さんがその話を持ってきた事がなおさら面白い――」  01:20 【ギル】「この件、どこかでお前さんの主(あるじ)が絡んでおるな?」 01:21 そう言って、ギルは楽しそうに笑う。 01:21 >utai< 【八郎】「――――狗は独自の判断で動きません」 01:22 【ギル】「なぁに、リストはいらんよ。そうさな、さしあたって儂が聞きたいのはただ1つ――」 01:23 >utai< その声に、八郎が居住まいを正す。 01:24 【ギル】「お前さんが敵か、味方か、かの」 ちゃきり、と金属音。 確かに、老人の左手は何も持っていなかった。だが、伏塚のこめかみに当てられているそれは……彼の愛用している、伝説を幾つも持つ銃。(<戦術>で準備) 01:25 店の主人は、片眉をあげる。だが、それだけだった。 01:26 何も見ていない――そこには何もない。そう言わんばかりに、グラスを磨いている。 01:27 >utai< 【八郎】「少なくともこの件について、私と我々が貴方の敵になることはありえない。ご安心ください」ちらり、と、そのあまりに圧倒的な殺傷力の塊を視界に捉え―――路傍の石でも見るように、意に介していない。 01:28 【ギル】「よかろう。お前さんの言――引いてはお前さんの主(あるじ)の言、信じよう」 まるで手品か何かのようだ。くるりと銃が一回転したと思いきや――手の内から消失した。 01:28 >utai< 【八郎】「恐縮です」 01:31 ふと、老人が顔をあげる。慎重に、何かに集中しているようだ。 01:32 【ギル】「――お前さん、おまけを連れてきよったか。否、お前さんの技量でそれは無い……ただの偶然か」 01:33 >utai< 【八郎】「………そのようですね。一人……か」空になったグラスを置く。 01:34 【ギル】「足音は微妙に乱れておる。……軍隊経験は無く、近接派でも無い……マシンガンで蜂の巣、それでXYZと考えておるようなヤツじゃろうて」 01:35 ギルバートは立ち上がり、シルバーチップを放る。それはカウンターを滑り、主人の前で回って……やがて回転は止まる。 01:36 >utai< 【八郎】「………ああ。“イディオット・ライオット”リチャード・マクマホン………」 01:36 【ギル】「ここは儂が奢ってやろう――年上としてな」 楽しそうに巨躯の老人が笑う。 01:39 >utai< 【八郎】「恐縮です」 01:40 まさに刹那。扉が開くや否や、間髪入れずに1マガジン分の鉛玉が店内に向けて放たれる。それはカウンターをめがけ……ターゲットどころか、目撃者全てを消す意志を込めて、凶悪な速度で駆け抜けた。 01:40 だが。着弾の音は無い。 01:42 一歩、老人が前に進み。大きな手を一閃させた。たったそれだけの動作なのに、全ての銃弾は彼の手の内に吸い込まれた。(ブランチ:ソルジャーによる仁王立ちを使用した上で白兵+運動+ディフレクション+八面六臂+無敵防御) 01:43 パラパラと音を立てて、彼の手の内から銃弾が床にこぼれ落ちる。 01:44 >utai< 【八郎】「………お見事です」ぱちぱちと、静かに拍手の音がする。 01:44 【ギル】「まだ"そこ"におるのか」 殺した、と思っているその隙。本来なら撃ってすぐに移動すべきである。だが、刺客は一瞬の隙を見せてしまった。 01:44 先ほどの手品の再現。 01:45 いつの間にか手の内に現れていた銃は、いつの間にか銃弾を放ち―― 01:45 いつの間にか、刺客……リチャード・マクマホンの脳天を撃ち抜いていた。(《クーデグラ》) 01:46 わずかに2秒。たった、それだけ。 01:47 【ギル】「ふ、お前さん――儂を試しおったな?偶然ではない。"必然"じゃろ」 くっくっく、と笑う。――本当に、楽しそうに。 01:48 >utai< 【八郎】「解釈はご自由に―――後始末はこちらで行いますので。リチャード・マクマホンは何処かのサイバーサイコに絡まれて殺された……そうなります」(《完全偽装》。この店での殺人行為そのものを“なかったこと”にする) 01:49 【ギル】「そういう事にしておこうかの。……さて。“弾丸宅配人(ブリッツレター)”に挨拶に出向いてやるとしよう」 01:50 >utai< 【八郎】「ご武運をお祈りします―――ミスタ・アッシュ」 01:51 【ギル】「ふ、……つかず離れずのバックアップか。確かに、敵でもないが味方でも無さそうじゃの。悪くない」 01:51 後ろでに、主人に手を振る。店の主人は、寡黙に一礼をする。 01:52 【ギル】「なんにしても――」 店の入り口で、立ち止まって。 01:53 【ギル】「――儂の目は誤魔化せんよ。その事だけは肝に銘じておくとええ」 01:54 >utai< 【八郎】「ええ――――“王禽の眼”ギルバート・アッシュ」 01:56 ニヤリ、とギルバートは笑って――店を後にした。すぐに夜の街に消え、溶け込んでいく。 01:57 >utai< 【八郎】「――――ふぅ。ご馳走さまでした」 01:59 >utai< ポケットロンにデータを送信し、返信を確認する。 01:59 店の主人は、新しい酒を伏塚の前に置いた。硝煙の香り漂う店内で、静かに告げる。 01:59 【主人】「私からの奢りです。どうぞ」 02:00 グラスの中の液体は、血の色をしていた。――ブラッディマリー。 02:00 >utai< 【八郎】「ありがとうございます……ああ、いい香りだ」 02:02 店内には、変わらぬジャズの音が、静かに鳴り響ていた。 02:02 まだまだ、長い夜は続きそうである。 02:02   02:02   02:02   02:14 *** New Mode for #どーる・はうす by rap: +o utai