神殿…護るべき場所が増えて、以前とは同じ様には動けない。戦力を正しく扱う、それはとても正しい理由…そう理性で納得しても重なる擦違いに感じるのは寂しさで せめて明日は一緒に居れれば良いと…今日の気持ちを日記に示す。それは…僅ばかりの願い 【ルフト】「前にはなかった感情…これもやはり我侭なんでしょうかね?」そう1人呟くと冷めた残りの紅茶でも啜ろうとカップに手を伸ばし… 【ジーク】「ルフト様、まだ起きていらっしゃいますか?」コンコン、と扉を軽く叩く音。そのすぐ後に聞こえてくるのは抑え目の声。もう時間が遅いため、周囲に配慮してのことだろう。 【ルフト】「ええ…起きてますよ?」冷めた紅茶で心が温もる錯覚を感じながら、その声に答え「どうぞ、丁度ジークのことを考えていた所です、奇遇ですね」言葉に柔らかな物が混ざる…これも、此処に来るまで無かった事で 【ジーク】「…お部屋に入っても、よろしいでしょうか?」扉越しにかけられる声。その声がいつもと違い、少し沈んだように聞こえるのは気のせいだろうか。 【ルフト】「勿論、その申し出を断ることは無いですよ?僕もジークに会いたかったですからね…?」僅かにその声の音に眉を顰めると椅子から立ち、扉を開ける「どうかしましたか、疲れて居るなら…?」そう、彼女の顔を覗き込んで 【ジーク】「あ、いえ…疲れているわけではありません」小さ目のお盆に焼き菓子を載せ、失礼しますと部屋へ入りつつ…主へ返す。「そういうわけでは、ないのですが…」テーブルへと盆を置き 【ルフト】「…では何か他に気がかりが?」神妙な顔でジークを見る、語尾を濁すのは珍しく思えて「僕でよければ相談に乗りますよ、尤も話によっては対した意見は言え無いかもしれませんが」 【ジーク】「…ええ、今の状況を考えるに対したことではない、と思いますし――我侭ではあると思うんですけど…」かちゃかちゃと紅茶の準備をしつつ、声を出す。歯切れない言葉ではあるが、続け… 【ルフト】「ああ、そう言えば久し振りな気がしますね、こうやって寝る前の紅茶を入れて貰うのも…」そう、目を細めてジークの言葉を待つ。 【ジーク】「そう、ですね。ここしばらくは忙しさもありましたし…」二つのカップを準備し、琥珀色の液体を注ぐ。それを持ち、テーブルへと戻って「…ええ、私もこの時間にルフト様のお世話をするのはしばらくぶりだと思っています」 【ルフト】「以前の自分が贅沢に思えていけませんね。無いもの強請りばかりが得意に為りそうですよ」冗談めかして笑うとそのカップを手にとって「良い匂いですね……心まで温まりそうですよ、自分で入れるだけでは味気ないですからね」 【ジーク】「ルフト様はもう少し我侭になっていいと思いますけれども…そう言っていただけるなら、幸いです――」くすりと笑って、主のほうを見直す。少しだけ寂しそうな表情を見せるも、すぐにそれを戻して 【ルフト】「慣れてないことは失敗ばかりしますからねそう言う意味では少し臆病なのかもしれません…」そして僅かに翳った表情に「ジーク?」只もの問いたそうに名前を呼ぶ、それは親愛の篭った声 【ジーク】「は、い?」突然呼ばれた名前。きょとんとした表情を浮かべ、返して。 【ルフト】「そうですね今我侭と言うなら…」そっと手をジークの頬に当てて「その表情が翳る原因を消し去りたいものです」 【ジーク】「あっ……」頬に触れる手。どきりと心臓が高鳴り…抑えていたはずの願望が零れそうになる。でも、それはダメだと…。何とか自制しようと。 【ルフト】「僕では解決できないことでしょうか?折角…そう、ひさしぶりにと言えるような時間なのだから、そんな顔をされては心配しますよ」手から伝わるものはとても久しく…それは心地よいぬくもりで 【ジーク】「いえ…ルフト様…。しばらくの間、御一緒出来なかった事が…」その言葉に、小さく返す。続けて「…我侭だということは判っているのです、ですが…ルフト様の傍に居られないことが…寂しくて――」俯き、言葉を終える。 【ルフト】「………」その言葉に暫し沈黙してジークの顔を見つめる「……それは…うん。ジーク、告白せねば為りません僕もですよ。傍らに居てくれるのが自然なのに、傍に居ないと言うのは多少堪えます」そう言うと今日の日記のページを捲ってみせる…其処に書かれて居るのはその言葉と同じ我侭で 【ジーク】「…ルフト様――」そのページを見た後、対面だった椅子を傍らへ寄せる。そのまま、彼の方へと身体を預け…「しばらく、こうさせてください……ルフト様…」そのまま、目を閉じる 【ルフト】「…ええ、良いですよジークの気が済むまで…ああ、でもきっと…」これは自分でもやりたかった事なのだろう同じ我侭なのだから…そう思い、ジークの手を握ると同じように目を閉じる 【ジーク】「はい……」僅かに瞳を開いて、主に言葉を返した後。身体の全てを預けるように寄りかかって…「…温かいです、ルフト様――」 【ルフト】「そうですね…この暖かさは忘れたく無いと思います…」それは傍にジークが居ると言う事なのだからと言葉には出さずに 【ジーク】「ルフト様、もし良いのであれば…このまま、抱きしめて頂けますか? 私の我侭ですけど…」すぐ傍にある主の顔を見上げつつ、少しだけ恥ずかしそうに 【ルフト】「愛してる相手を抱きしめるのは我侭では無いと思いますけどね…」優しく笑みを浮かべると軽く頭を撫でてから抱き寄せる…壊れそうな自分を繋ぎとめてくれた…大切な…そして愛しい者を 【ジーク】「…あ…っ…」抱きしめられるその感覚。温かなその感覚に微かに吐息を漏らす。このまま、ずっとこうして居たいと思う。とても心が温かいから… 【ルフト】「何時までも傍にいれれば良いのですけどね……」それは今は望めない望みではあるが「今こうして伝わる温もりを忘れないように…」軽く唇を頬に当てながら願い 【ジーク】「…はい…ルフト様――いつか、そうなれるように…」唇が触れる頬。顔を赤らめつつ…そっと口付けを返す。いつか、その願いを叶えたいと思う。今は無理でも、いつか… 【ルフト】「そうですね、ジーク。君がそう思ってくれているのならきっとなれます」それだけは間違いないと力強く言い、抱きしめながら口付けを交わす 【ジーク】「ん、ぅ…ぁ…ふ」唇を重ねた後、離して…「ルフト様、このまま…お傍で眠らせていただけますか? 今日は…そうしたい気分、です」 【ルフト】「…んっ……。はい、それでは…」離れた唇を名残惜しそうに見ながら答えると抱き上げて… 【ジーク】「ぁ……」抱き上げられ、声を上げるも…表情には嬉しさがあって。 【ルフト】「………愛してますよジーク」その表情に増す愛しさを素直に言葉に乗せて 【ジーク】「…はい、私も愛しています――ルフト…」主と従ではなく、今だけは…愛するもの同士で。 【ルフト】「…うん、ちゃんと知ってます」それが…この孤島で得た一番大切な思い 【ジーク】「…はい――」思いが、伝えられたこの場で。主の、愛しい人の温かさを感じながら…目を閉じる。きっと、明日はいい日になる。目を覚ましたとき、傍に彼が居るから。