(tsuku-yom) AAAのギルドハウス内、陽が沈み、薄闇と静寂に包まれた通路。普段はそれなりに人も通るその場所は、今は静かな静寂が横たわっている。 (tsuku-yom) そんな静かな空間に、波紋のように広がる足音……コツ、コツ、と、急ぐでもないゆっくりとした間隔で、足音の主は進んでいる。 (tsuku-yom) 窓から差し込む微かな月明かりに照らされ、高く結わえられた艶やかな黒髪が踊る――東国の着物に身を包んだ、少女の姿。 (tsuku-yom) 彼女は、未だ心の中に潜む疑問を晴らす為、仲間の元を訪ねようとしていた。 (tsuku-yom) 問いに対して答えが返ってくるという保証は無くとも、聞かずのままでいるのも、なんとなく気になって寝覚めが悪い。 (tsuku-yom) ま、答えが返ってくればラッキーかしらね?――そんな、軽い思考と共に。彼女――リンネは足を止める。 (tsuku-yom) 辿り着いた、目的地である部屋のドアを。数度、ゆっくりとノックする。 (tsuku-yom) さて、果たしてこれからの時間は、無駄になるのか有益になるのか――少々、場違いな期待と共に、呼びかけるべく唇を開いた――― (tsuku-yom)   (tsuku-yom) 【リンネ】「――フィア、ふぃーあー、居るー?居留守とかしないで居るなら居ると返事してねー?」コンコンコンコン、とノックの音を立て続けに、一応は軽く小さく響かせながら、室内に居るであろう人物に声を掛ける――そう言えば、相部屋だった気もするが、同居人が居たら居たで何とかすれば良いか、と楽観的に思考しつつ、返答を待って。 (Fake__) 【フィア】「……リンネ――? 居るよ。えっと…少し待って」室内を少し歩き回る軽い足音。しばらくすると…普段着のローブを羽織った銀髪の少女が扉を開け、リンネの前に立つ。「…割と遅い時間だけど、何か用事?」 (Fake__) 小声で、ショートは寝てるから…何かお話があるなら外で。と付け加え (tsuku-yom) 【リンネ】「こんばんは、こんな時間にいきなり訪ねて悪いわね」出てきたフィアに、一応の謝辞の言葉と共に小さく頭を下げて。桜の花弁が意匠された振袖の裾を、靡かせながら、身を反転させ。「そうよ、アンタと黒ゴキブリ……《猛火泉》アイン・ラクティスの関係について、話聞こうと思って」どうせ聞くことならば、ここで言葉を濁す事も無いかと、一切の虚飾なく、簡潔にして核心の問いを、言の葉に乗せ。返答が来るよりも先に、先導するように廊下を歩いていく。 (Fake__) 【フィア】「……関係、か。苗字を見れば一発ではあるしね――」それでも、周囲から問われなかったのは月奈が色々と動いてくれた結果だろう。でも、黙っていることは出来ないと思っていた。なら、少しでも話しておこうと思う――飾らず、核心だけを問うリンネの考え方が少し羨ましくて…小さくため息をつきながら、彼女のあとに続く。 (tsuku-yom) 【リンネ】「名字だけ、って訳でもないけどね。なんか、アイツとアンタ、どことなく似通った雰囲気があるし――まあ、その辺も含めてお訊ねしたいなと思った次第」フィアの心境がどのようなものか等、神ならぬ自分には分かる筈もない。だが、先だって月奈に訪ねた折、彼女はその問いに最後まで答えることは無かった――ならば、それは余人が軽々しく訊ねて良い事でもないのだろうとは、思う。それでも今、真正面から全て聞き出そうとしている自分も、なかなかに意地が悪いものだと。ク、と、喉奥で笑みを噛み殺し。 (tsuku-yom) 月明かりに照らされた、薄闇の廊下を、フィアと共に歩いていく――目的地は、中庭がいいだろう。きっとあそこなら、誰に聞かれることもないだろうから。 (Fake__) 【フィア】「……いいよ、私が知っていること、覚えていること――私の主観からで良いなら話せるだけ。それでどう思うかは、リンネが決めて」着いていきながら、リンネの言葉に返す。いずれ、答える必要はあると思った。それが早いか遅いかだけの差だと自分の心を半ば強引に納得させ… (tsuku-yom) 【リンネ】「ま、こっちも手前勝手な好奇心で、アンタの過去…になるんだろうけど、そこに踏み入っていこう、っていうんだから。答えてもらえるだけ僥倖、ってものよ」肩越しに、ひらり、と片手を振りながら。主観がどうのこうの、というのは正直、あまり興味も無い。知りたいのはただ、フィア・ラクティスとアイン・ラクティスの関係だけなのだから……とはいえ、聞ける事は聞いておいても損はない。折角話そうとしてくれているなら、黙って其れを聞くとしよう……中庭への扉を押し開け、冷気を帯びた夜風が、頬を撫でる感触に瞳を細め、夜の世界へ踏み入っていく。 (Fake__) 【フィア】「…別に、隠し続けるつもりはなかったし――構わないよ」目を閉じたまま答え、中庭へと歩き出していく。冷たくなりつつある風に、時期の流れを感じながら。 (tsuku-yom) 【リンネ】「そ、ならこっちとしても遠慮なく聞けて助かるってものね」その言葉に頷きながら、夜の空間を闊歩する。中庭に生えている一本の樹を目指し、その根元まで辿り着くと。ゆっくりと腰を下ろして「悪いわね、行儀悪いけど――この間の、海底神殿の一件からこっち、どうも体調優れなくて」美樹に背を預けるように座り込みながら、フィアの顔を見て苦笑いを微かに浮かべ「さて……じゃ、早速で悪いけど、話してもらえる?」 (tsuku-yom) この冷たさは、長く晒されれば少々身体に毒だろう――身体のみならず、フィアにとっては、その心にもまた、及ぼすものもあろうかと、なんとなく思いながら。彼女の言葉を待つ。 (Fake__) 【フィア】「……」無言でリンネの方へ歩み…傍で立ち止まる。「私も座ってもいいかな、結構長い話にはなると思う――から、上着を持って来た方が良かったかもしれない」 (Fake__) リンネの答えを待ちながら、何を話せば良いのかと悩む。何処から、何を話せば良いのか。 (tsuku-yom) 【リンネ】「そう? ま、冷たい地べたでよければ遠慮なくどうぞ?」己の横の空間を示しながら、くすり、と笑い。「こんな寒さ、どうって事も無いわ…フィアがどうかは知らないけど。何なら、あたしの上だけ着る?」悪戯っぽい表情で、己が着る振袖を示して。 (tsuku-yom) 【リンネ】「ま、そうね――まず、アンタとアイン・ラクティスの関係…間柄から、かしら?」 (Fake__) 【フィア】「それじゃ、隣に座らせてもらう」リンネのものより一回り小さな身体を、そこに座らせ…空を見上げ。リンネの言葉を待ってから、続ける「……私とアインは、同じ故郷を持つ者。魔術を使った暗殺を生業としていた、ヴァーナの部族の出身」月の出ている空、その間をゆっくりと流れる雲を視界に入れつつ言葉を紡いでいく「…ラクティスは、その中での主立って任を受けるものへ与えられる名のような者。アインも、フィアも…名前じゃなく、番号みたいなもの」と、自らの名についてと、アインとの間についてをあっさりと話す。悲壮や、精神的な痛みは感じさせぬ表情で (tsuku-yom) 【リンネ】「ふぅん、魔術を用いた暗殺の一族、ね――そういう連中がいるって聞いた事はあるけど、実際に生き証人の話を聞けるとは思わなかったわ」フィアの言葉に対して、返したのはいつもと何も変わらない……いや、僅かに関心したような響きを帯びた、しかしただそれだけの声。「番号を名前に付けるなんてまあ、安直と言うかなんというか……で、番号、っていうなら、やっぱりどっちが先で後か、みたいなのはある訳?」 (tsuku-yom) 続けて、新たな疑問を投げかける。今はただ、知るべきことの全てを知る為だけに。 (Fake__) 【フィア】「私のほうが後…私は4。アインは、1。私の二つ名は《氷精の槍》。アインの二つ名は《炎精の剣》。後2つの属性の名を関したメンバーが2人、私の前に居たけど…どうなったのかはわからない。アインの方が、先に私よりラクティスの名を貰っているのは事実で…それは年齢もあるけど、力の差を意味することでもある。」その疑問について、付け加えつつ答え。 (tsuku-yom) 【リンネ】「へー。《猛火泉》なんて名乗ってるからには火が得意なんだろうと思ったけど、昔からの筋金入り、って訳ねー。 アイツが火で、アンタが水なら、残りは地と風、か。まぁ、そっちの方はどうでも良いけど」肩を竦め、しかし直に首を傾げる「でも、今アイツは《庭園》にいるし、それにアンタはこのギルドにいる。どっちもその部族、ってか組織?まぁどっちでもいいけど、そこを抜け出したって事、よね?」 (Fake__) 【フィア】「部族、で良いよ……もう、私たちの居た場所はなくなっている。私が…部族を抜けた後に、壊滅させられたって月奈から聞いた。皆…きっと、殺されたんだと…」淡々と、言葉を紡いでいく。けれど、殺されたと言う言葉を発するときに、一瞬だけ間が出来た。見上げていた顔は、じっと自らの手を見つめていて。 (tsuku-yom) 【リンネ】「あらら。まぁ、暗殺を生業としてる一族、なんて、末路は大概そんなものね。東方じゃ、そういうの、因果応報、っていうんだけど。ご愁傷様、だとはまあ、思わないことも無いけど」隣に座るフィアを横目に、しかし吐き出す言葉は我が事ながら軽いものだと思い。しかし、命を奪うのならば、いつか己の命が奪われたとしても、それを受け入れねばならない。そう思うからこそ、言葉を飾りはしない。「で、アインは《庭園》、アンタはこのギルドに、か。 野暮な事だけど、なんで部族を抜けようと思った訳?」 (Fake__) 【フィア】「私自身、たくさんの命を奪ってきた――けど、その中で……出会った人がいて。その人が私を変えてくれた。その人が教えてくれた言葉、伝えてくれた言葉が…「広い世界を見るといい」だった。だから、私は…部族を抜けた。この理由じゃ、不服かな」少しだけ悲しそうな表情を浮かべながら、リンネの方を向いて答える。「確かに、因果応報って言う言葉はあるけど…私たちは、それしか知らなかったのも、事実だよ」 (tsuku-yom) 【リンネ】「広い世界を、か。いやなかなか気障な言葉ねー。そうそう言えるもんじゃないわよ、そういうの。 それが理由だって言うなら、いいんじゃない?それが不服だって言っても、過去の事に難癖付けるだけで意味なんてありゃしないわ」片手を、パタパタと振りながら。横目でフィアの表情を見つつ、言葉を繋げる。「それしか知らなかった。でも、だから何?って話になるのよね、世の中って。知らなかった、って事は免罪符になんてなりゃしないんだから」ま、言わなくても分かってるとは思うけど、と呟き、くきり、と首を鳴らして (Fake__) 【フィア】「判ってるよ、そんなこと――結局、私はその人の命も狩りとって…でも、今ここにいて。本当は…ここにきたときも、戦うことがこんなにメインになるなんて思わなかったんだ。私はこのギルドが出来たときから居させてもらってるけど…最初は」と、独白をする。リンネに問われてないことを、語っている自覚はある。それでも、少し話したくて――「世界を見るために、ここに来て。それでも、結局戦うことは変わらなくて――後どれだけ、私は手を血に染めるんだろうと思ったことも、あったよ」 (tsuku-yom) 【リンネ】「ああ、最初はこのギルド、世界各地に転送装置を設置する、なんてお題目掲げてたらしいわねー。月奈も愚痴ってたわよ。多分、最初からこのギルドは《魔器》と《病魔》の二つの存在に関わらせるために創設されたんだろう、って。あたしも見事に上っ面のお題目に引っ掛かって入ったクチだしね」けらけらと笑いながら。その裾から取り出したのは、徳利とお猪口。トクトクと注ぎいれた酒を呷りながら、アインの話に耳を傾け。「さあ? まあ、殺さずに収められるならそれに越したこと無いんでしょうけど。世の中ままならないものだしね」 (Fake__) 【フィア】「…結局、クレイルを持つことになって――色々と覚悟は決めた。でも、奪うためじゃなく…護るために私は自分の力を使ってみようと…向かないことだと思うけど、頑張ってみようって」立ち上がり、空に光る星へそっと手を伸ばす。自分には届かない何かを、掴もうとしているようで。 (tsuku-yom) 【リンネ】「ふぅ〜ん、色々苦労してるのねー。まぁその辺りは頑張りなさいねってことで一つ……そんな事しても背は伸びないわよー?」空に浮かぶ星は、決して人の手は届かない場所にある。それでも手を伸ばそうとするならば、それは個人の問題…とりあえず軽い口調でそんな言葉を投げかけながら。「で、話を戻すけど。アインとアンタは同じ部族の元暗殺者仲間だったと……いやいや、あの黒ゴキブリにも歴史アリ、って訳ねー」 (Fake__) 【フィア】「…背が欲しいわけじゃないよ。時々思うんだ――せめて、自分の手の届く範囲で仲間を護りたい。そのために…私は頑張ろうって決めたから」もう一度、リンネの隣へ座り。「黒ゴキブリって…暗殺者時代の私もあの服着てたんだけどな――」変な言われに苦笑しつつ (tsuku-yom) 【リンネ】「そう思うなら、頑張れば良いんじゃない? あたしは自分の気に入った相手しか守りたくないし、守る気も無いけど。それ以上に、自分の命が第一優先だし。人それぞれ、ってヤツよ」再び、酒を注ぎいれ、くい、と呷る。ふと、手品のように取り出した猛一つのお猪口を、フィアに押し付け、問答無用で酒を注ぎながら「あら、だったらそんな悪趣味な部族、抜けて正解じゃない、良かったわねー、あんな趣味の悪いの、着続ける羽目にならなくて」 (Fake__) 【フィア】「……うん、そうだね。人それぞれ――私は私で、リンネはリンネで」いきなり押し付けられたお猪口、注がれるお酒を見て目を丸くして。「私、飲んだことないよ…?」と、リンネに答える (tsuku-yom) 【リンネ】「だったら、今此処で記念すべき第一歩を踏み出せば良いじゃない、良かったわねー、大人の階段を一つ上れるわよ?」片目を閉ざし、唇の端を吊り上げながらにんまりとした笑みを浮かべて見せながら、自らも手にしたお猪口の酒を呷り――喉を冷やし灼く酒精にくぅ、と思わず熱い吐息を零しながら「まぁ、人生は楽しむもの。あんまり小難しい事考えず、今日を、そしてまだ見ぬ明日を目一杯楽しんで生きていくのが一番良いのよ」 (Fake__) 【フィア】「……ん、というか――身体の調子を変調させるようなものには私、耐性があるから…あんまり酔うとか関係ないと思ったり」くい、と一息に飲み干し「苦い…ね。これがお酒なんだ――うん、ありがとう、リンネ」リンネの言葉に、感謝の気持ちを返しつつ (tsuku-yom) 【リンネ】「あっはっは、バッカねー、酔う酔わないは関係ないわよ、お酒を呑む、っていうその行為自体に意味があるの……お子様は飲んじゃいけない大人の味を、嗜めるようになるからいいんじゃない。 まあ、ダメな人はとことんダメな訳だけど」感謝の言葉に、気にするな、と軽く手を振りながら「ま、アンタにはアタシと違ってまだこれから長い人生あるんだし、もうちょっと前向きにポジティブに、図々しいくらいに生きてみたら?多分それくらいが丁度良いと思うわよ?」 (Fake__) 【フィア】「…リンネ? 長い人生って…リンネ、ヒューリンじゃないの?」自分の種と違って、ヒューリンのほうが長命のはず。名のに、何故そのような言葉を発するのか、首を傾げて。「……図々しく、か…」リンネの言葉を、もう一度口にする (tsuku-yom) 【リンネ】「当たり前でしょ、耳も尖ってなければちっこくもないし、尻尾も角も羽根も生えちゃいないわよ。単純に、あたしは20歳を超えては生きられない、ってだけ、今が17だから、最長残り3年の命って訳ね」いやいや、美人薄命よねー、と。何の悲壮感も無ければ、憤りもなく、ただ面白そうに笑うばかり。お猪口に注がれた、酒精の水面に映る星明りを、瞳を細めて見つめ、くぃ、とそれを飲み干し。 (Fake__) 【フィア】「そう……だから、色々と割り切って考えられるのかな?」その表情を見て、自分よりよっぽどこの人は強いんだと思う。同じ立場に居たら、その運命を恨んでしまいそうな自分がいるから。空になったお猪口を見つめて…いろいろなことを考える (tsuku-yom) 【リンネ】「割り切ってる、っていうか、単に世の中幾らだって面白い事があるのに、一々くらーい方に物事考えてたら損するだけだからよ。何せ15年間も薄暗くて寒くて埃っぽい地下のおんぼろ納屋に閉じ込められて過ごしてきたのよ? やっとこさ抜け出してきたんだから、残りの人生くらい、太く短く楽しく生きて、未練なく笑って逝きたいじゃない」空になったお猪口二つに、再び酒を注ぎいれる。飲んでも酔うことは無いのは、フィアと一緒ではあるが。まぁ、一緒に飲み明かすこの時間さえ、楽しいものだと思い。 (Fake__) 【フィア】「そうだね…うん、色々話せてよかった」そのお猪口に注がれた新たな酒を飲む。こうやって話せる機会を貴重なものだと思いながら (tsuku-yom) 【リンネ】「まぁ、あたしが一方的にあれこれ聞きまくってただけではあるけどねー。いや、あの黒ゴキブリの事も色々分かったし――次は当の本人に突撃インタビューかしらねー」からからと笑いながら、酒精を呷る。生気の無い白い肌を、薄い朱色に火照らせながら。不意に、フィアを片腕のばし、その頭をぽんぽん、と撫ぜる (Fake__) 【フィア】「アインは、色々と話はしたがらないと思う…けど、何とか私も話をする機会を作らないと、な…きゃっ」不意に撫でられ、微かに声を上げて (tsuku-yom) 【リンネ】「その辺はなんとかするのよ。とりあえず食べ物で釣る辺りの基本的なところから順繰りに試していけば、そのうち話すでしょ。何事もやってみなくっちゃねー。頑張りなさい、若人よ。あっはっはっは」そのまま何度も頭を撫で、ついでに耳も撫でて、夜空を仰ぐ。無数に煌く星星の光に、瞳を細め――果たして何を思うのか。 (Fake__) 【フィア】「…うん、頑張る――ふぁ、リンネ。くすぐったいってば…」微かに身体を震わせ、非難の声を上げつつ…同じ様に夜空を仰いで。 (tsuku-yom) 【リンネ】「お、フィアは耳の後ろが弱い、と……今度アインにも試してみますか」一頻頭を撫でた後、そのまま地面に寝転がる。星明りを反射し、煌く黒髪を大地の上に広げながら、広大な星海を視界に据えて「ま、生きて行くって事は、結構波乱万丈だって事…だから、面白いのよ」 (Fake__) 【フィア】「……むう、なんか。出汁にされた気がする――」非難めいた目線を向けるも、そのまま地面に一緒に寝転がり…星の海を見つめる「…波乱万丈か、その通りだね――面白いかは判らないけど、楽しんでみるよ」 (tsuku-yom)   (tsuku-yom) 夜の中庭、冷気を帯びた優しい風がそよぐ、満天の星空の下で。 (tsuku-yom) 二人して、その煌く天空を見続ける……死すれば人は、夜空に浮かぶ星となるのだと、以前、どこかで誰かが言ってた。 (tsuku-yom) ……フィアには言わなかったが、力を使えば使うほど、死期は早まる。きっと残りの余生は、2年とは生きられないだろう。 (tsuku-yom) だが、それでもいい。2年しか生きられない、のではない。二年も、生きられる。 (tsuku-yom) その、残された時間を、目一杯楽しんでやろうと思う。 (tsuku-yom) フィアも、なかなかハードな人生を送ってきているようだが、だからこそ、これからをもっと楽しんで生きてほしいものだと。その横顔を眺めながら思う。 (tsuku-yom) ――例えどれだけ手を伸ばしても、届かないものが在る。夜空に浮かぶ星を、掴む事が出来ないように。 (tsuku-yom) それでも、手を伸ばし続けることに、意味があるのだと思うから……未練なく生きていく事が出来るかどうか、それが、大切。 (tsuku-yom) だから、今は――小難しいことは考えず、この煌く夜空の下で。暫しの時間を、楽しむ事にしようと。 (tsuku-yom) とりあえず、袖の中に隠し持っていた、もう一つの徳利に、そっと手を伸ばした―――