放課後 〜校舎から寮へと続く道〜 そこに、一人の女せ……男性がたたずんでいた 夕日を受けてもなお黒い、漆黒の髪 それを束ねて首の後ろに垂らし、うす蒼い衣を紫に染めて、長い影を引いて……ただ、佇んで お腹の前に組んだ両手は、何かを期待しているように、じっと、一枚の絵のように、その瞬間を待っている 【トト】「…ふう、授業も終わったし…」 校舎から寮へ向かう虎人の少女。もちろん、彼女…もとい、彼には気づいていない。 【リード】「あ……」 赤く染まった顔……それは夕日のせいなのか分からないが……それでも、少し嬉しそうに、小走りでその影に駆け寄る 【リード】「あ、あのさ、今、帰り……? 偶然、だね?」 髪に引っかかった落ち葉……それは、どう見ても偶然には見えずに 【トト】「このまま、今日は寝るかな…まあ、明日も暇だs…」 ある意味最悪の遭遇。 「…リード?」 ちょっとばかりビックリ 【リード】「……今、明日も暇だって言いました? 言いました……よね?」 少女の手をぎゅっと握って 【トト】「…ま、まあ…な?」 どうしようか迷っている 【リード】「じゃあ、明日、9時。 寮の真ん中の、噴水のところで!」 【トト】「…まあ、暇だしよ…って、いったいなんなんだよっ!?」 【リード】「……デート?」 首をかしげて 【トト】「で、でででデートっ!?」 混乱中 【リード】「……嫌、です?」 じーっと 【トト】「…べ、別に…嫌じゃないけどよ…」 顔赤くしつつ 【リード】「じゃあ、決定です!」 手をぎゅっと握ったまま、ブンブンと上下に振って 【リード】「明日9時、ちゃんと、その服じゃなくて着てきてくださいよ!」 ニコニコと機嫌のよさそうな笑みを浮かべて、そのまま少女に背を向けて走り出す 待ちきれないといった様子にも見えるその髪から……はらりと落ちる木の葉 【トト】「え、あ…わ、分かったよ!明日噴水前だな!」 混乱&ぷすぷすしながらも、寮へ… そして、翌日…… 〜噴水前〜 AM08:17 【リード】「……」 そわそわ AM08:30 とたとたと走ってくる少女。いつもの学ランとは違い、今回は空色のワンピース。 【トト】「…なんだ、俺より早く来てるんじゃないか…」 【リード】「そりゃあ、誘っておいて待たせるわけにもいかないでしょう?」 首をかしげて、にっこり、と 【リード】「でも……来てくれてよかった」 【トト】「サボるわけにもいかねぇしな…」 目逸らし 【リード】「……サボったら御仕置きです」 うん、と妙に可愛いしぐさで頷いて 【トト】「んで…朝食、食べたか?」 【リード】「あ、一緒に食べようと思ってたから、食べてませんよ?」 【リード】「ひょっとして……食べちゃいました?」 【トト】「いや…俺も、まだだからな。で、何処で食べるんだ?」 【リード】「んー」 【リード】「……街に行って、考えましょう?」 【トト】「まあ、街に行って…か。行く準備は整ってるけど、そっちは?」 【リード】「もちろん、準備万端ですよ?」 その場でくるりと回って見せれば、少し薄手の着物がふわりと舞って 【トト】「…じゃ、行こうか…」 てくてく歩き出して 【リード】「」あ、ダメですよー 【リード】「はい、こう!」 手を、ぎゅっと握って、横に並んで 【トト】「え、あ…」 顔真っ赤にしつつも、手を握ったまま街へ… 〜街、商店街〜 【トト】「…」 顔真っ赤にして黙ったまま…ついてしまった。 「で…何にするんだ…?」 【リード】「あー、えっと……」 周りを見回すと……喫茶店ぐらいしか開いてはいないが 【トト】「とりあえず、モーニングセット…にするか、うん、そうしようかっ」 手を引っ張りながら喫茶へごー 【リード】「はい!」 やたら意気込んでいたり…… 〜街、喫茶店〜 【トト】「…俺は…」 メニュー見て… 「トーストセットにするかな」 【リード】「えっと、私は……」 悩んでいると、客が少ないからなのだろう、ウェイターがやってきて…… 【ウェイター】「ご注文はお決まりでしょうか? お嬢さん方?」 ……ぴし 【トト】「お、お嬢…? …こいつ、男なんだが」 【ウェイター】「まさか、ご冗談を……ねぇ? お嬢さん?」 ……ぴしぴし 【トト】「いやだからホントなんだって!?」 【ウェイター】「そんなー、こんなに可愛かったら、男でもオッケーですもん」 ……ぴきぴき、ぷちん 【リード】「……アース……」 【トト】「リード!す、ストップ!詠唱ストーップ!?」 【リード】「ですが……せっかくのデートを……」 【ウェイター】「えー、女の子同士でデートなんてしないでさ、俺とかど……」 何かヤバイ空気が……? 【トト】「…ウェイター。悪いことは言わん、それ以上言うのは…やめとけ…俺の身が持たねぇ!」 【リード】「……オムレツのセットを」 【ウェイター】「はいはい、トーストとオムレツね。 で、俺は昼から暇なんd」 【リード】「……すぐに消えてください」 【トト】「…ホントにそれ以上言うと…色々危険だからやめとけよ…というか本当に俺の身が持たないんだが」 【ウェイター】「は、はい……」 何か危険な迫力を感じて引き下がって…… 【トト】「…ふう。本当に危ないところだった…」 精神的な意味で。 【リード】「……彼、昼から、確か暇だって言ってましたし、私の遊びにちょっと付き合って……」 それはもう、世界中の男性が振り向いてしまいそうなほど不自然にさわやかな笑みで 【トト】「…オムレツごと黒こげにされたい?」 【リード】「……むぅ」 【トト】「まー、どうしても、ってんなら止めないけどよ…」 【リード】「……」 そのまま、無言…… 【トト】「…」 釣られるように無言空間を… (なんか気まずい…) そして、10分ほどすると、違う人が2つのセットを持ってくる…… 【トト】(さっきの奴でなくてよかった…) 【リード】「……」 じーっと、そのセットを見ていて……カタン、小さな音を立てて、椅子から立ち上がる 【トト】「…リード?」 【リード】「……」 そのまま自分の席を離れて…… 【トト】「…トイレ、なのか?」 セットにはまだ手をつけず 【リード】「……」 すたすた……カチャン 少女のすぐ横の椅子に座って 【リード】「……食べさせてくれたら、許す」 ぼそ 【トト】「…し、仕方ないな…っ」 オムレツをリードの口元まで運んで… 「ほら、あーん…だったか?」 顔真っ赤に 【リード】「あーん!」 とたんに口をあけて 【トト】「………」 恥ずかしさで壊れそうだけど、それでも口の中へと運んで 「…どう?」 【リード】「味はともかく……美味しいよ」 そんなことを言いつつ、ほっぺにちゅ、と……頬にケチャップがついちゃったのを舐め取ったりしつつ 【トト】「っ…」 顔真っ赤にしながら、自分もトースト頬張って… 【リード】「あ……待って」 今まで、足の横に置いていた手を上げて 【リード】「そっちは、私が……ね?」 【トト】「…うん…」 【リード】「はい、あーん」 食べやすいように小さく千切られて、折りたたまれたトースト 【トト】「…」 もぐもぐ 「…美味しい、よ」 【リード】「そう? よかったぁ……」 そのとき、トトの歯に、少しだけ、固い感触が当たったような……? 【トト】「…ん?…なんか、当たったような…?」 【リード】「はい、ジュース」 【トト】「…ありがとな」 ごくごく飲む…前に、固い感触のソレを吐き出してみる 【リード】「あ、ダメ!」 口を押さえようとするが……ぽとん どう見ても媚薬です、本当にありがとうございました 【トト】「…リード?」 怒気を放出している 【リード】「……あれ?」 【リード】「……ちっ」 【トト】「ちっ、じゃねえっ!」 本当に怒ってます、ありがとうございました。 「たまには普通のデートかと思ったのに…」 食べ残したまま席を立って 【リード】「だって、あいつが!」 【リード】「綿sダッテコンナにいらいらしてなきゃ普通にデートしようかなって思って、女の子らしい服をうさせて楽しもうかとかいろいろ考えてきたんですよ!」 【トト】「知ったことか!一生ウェイターとやってろ!」 そのままてくてくレジへ向かって、自分の分を支払って 【リード】「むかむかが溜まって、すっきりするかなと思っ……」 【リード】「……」 【リード】「……ごめん」 【トト】「………今日は帰る。こんな気分じゃ、デートも…楽しめないから。」 そのまま、店の外へ。 【リード】「……ん」 【リード】「あー、でも、その……こんなこと言うのも、悪いかもしれないけどさ」 【リード】「私は、したい人としかしてないから……それだけは、本音」 その言葉は、遠くまで行ってしまった彼女には届かずに。 【リード】「例え誰に何て言われても……したいからしてる。 だから……」 【リード】「……やっぱり、あのウェイター……」 ……その数時間後 とある喫茶店のウェイターが何か非常に恐怖に見舞われたとかそうでないとか言う噂があるらしいが、きっと別の話である