12:18         とたたたたたた 12:18         軽く、元気な足音が、ギルドハウスの廊下に響き渡る 12:19         あまり、走ってはいけないと聞いてはいるが、一部の者は気に掛けていないし。 12:20         何より、吉報を、早くシュヴァルペに伝えたくて 12:20         コン ガチャ 12:20         ノックもそこそこに、扉を大きく開け放つ 12:21【 トロイデ 】「シュヴァルペ! シュヴァルペは在るか!!」 12:24         掃除の手を止める…廊下から聞こえる足音に気がつき… 12:26         聞きなれた音…それが誰かなど解らぬ訳もなく… 12:26         ただその足音は別の少女を思い浮かべさせて…少しだけ悲しくなる 12:28         浮ぶ過去を打ち消すように考える事を止める……少なくとも今の私のやるべき事ではない 12:29         切り替えると同時にドアが大きく開け放たれる 12:29【シュヴァルぺ】「お帰りなさいませお嬢様」主に向い一礼する 12:30【シュヴァルぺ】「今日は何事も無かった筈ですございますが……何か御有りになりましたか?」 12:32【 トロイデ 】「うむ、おまえが辛そうだったのでな。一人、人手を雇うてきた」 12:32         正直に、喜んでもらえると思って。今日の一大事を、言の葉に載せ 12:37【シュヴァルぺ】「雇う…?」意外な言葉に随分と幼げな反し方で反してしまい「あのお嬢様?……何か私の仕事に至らぬ所でも有りましたでしょうか?」気を取り直し真意を知ろうと尋ね 12:39【 トロイデ 】「至らぬ所は無いぞ? ただ、毎日は持たぬゆえ2日置きにとなったじゃろう? それはそれで、おぬしは責を感じておろうと思うてな」 12:40         全ての要求を満たしてきた彼女。その彼女が初めて、辛いと言って、こちらを抑える事を提示してきた。半月も堪えてきた事を考え合わせれば、その内心は知れようと 12:42【シュヴァルぺ】「二日………。お嬢様、それは一体何方に?」トロイデの言葉に今度こそ固まる…… 12:43         その言葉の意味する事を想像するのは簡単で… 12:44【 トロイデ 】「エルオーネじゃ。最初は、渋っておったのじゃが……どうした? シュヴァルペ」 12:44         従者の変化に、その秀麗な彫像のような顔を見上げて。何か、間違った事をしただろうか? 12:46【シュヴァルぺ】「エルオーネ様で御座いますか。いえ、お嬢様のお決めに為られた事でしたら従者たる私に異存は御座いませんが……」 12:47【シュヴァルぺ】「一体どの様な申し込み方をされたので御座いましょうか?」 12:49【 トロイデ 】「ふむ、ならば良いのじゃが。うん? 単に、おぬしが新しい仕事がきついようなので、人員を補充したいとな。その時は、二つ返事じゃったが、その後、妙な事になっての」 12:51         妙な事、というのは微妙に間違っているかも知れないが。妙とは主観、これでも正しくないとは言えぬだろう 12:52【シュヴァルぺ】「新しい仕事で御座いますか?」トロイデの言葉に小首を傾げる…新しい仕事……最近になって何か命じられた事は無い筈だが… 12:55【 トロイデ 】「うむ、女を抱く、で良いのか? おぬしが音を上げたのはそれしかあるまい。もっとも、あやつはそれはメイドの仕事ではない、と言っておったが」 12:55         エルオーネとの会話で、とりあえず暫定的に。その行為を抱くと定め 12:57【シュヴァルぺ】「それはそうで御座いましょう……話の腰を折申し訳御座いません。どうぞお続けくださいお嬢様」 12:57         その妙なことと言うのも気になるのでトロイデの言葉を促す 12:59【 トロイデ 】「いや、丁度そここそが妙な事じゃ。抱かれる事は仕事ではないから、それは、仕事としては承服しかねるとな。それはそうと言うことは、おぬしにとっても、それは仕事ではないのか?」 13:00         今まで、仕事だから抱かれてきたと思っていた。仕事だから、遠慮も何も無く命じてきた。それが、仕事ではないのならば何なのだろう、と 13:04【シュヴァルぺ】「従者の仕事では御座いませんね。お嬢様がお望みなったからと言う答えでは駄目で御座いましょうか?」その表情からは内心を伺う事は難しく 13:05         毎夜抱かれた意味など自分にも良くワカラナイ…… 13:06【 トロイデ 】「おぬしがそれで良いならば、構わぬ。ただ、それで断られたと思った時には、どうしようかと肝を冷やしたぞ」その時の自分を見ているように、からからと笑い 13:07         ただ少なくとも焼け付く様な村での記憶…組織での行為に比べなら……少しだけ自分が何かを欲しがったのだろうとは思う…… 13:08【シュヴァルぺ】「それほど我慢できませんでしたか?……それであればご相談いただければ…いえ、過ぎた事で御座いますね。」 13:10【 トロイデ 】「相談をすれば、壊れるまで無理をしたであろう? もっとも、秘密裏に進めて、驚かせようと思ってもおったが」 13:11         もっとも、それは裏目に出たようで。それは、一度も従者の表情が晴れぬことからも察せて 13:11【シュヴァルぺ】「ですがお嬢様、抱く為に雇うなどと言う行為は相手によっては快く思われませんので、声を掛ける時は一言ご相談下さいます事話お願い致したく思います」 13:13         純然とした好意…である事は理解できる…ならば微笑んで反すべきなのだろうか? 13:14【シュヴァルぺ】「驚くというならば確かに驚きはしましたが」 13:15【 トロイデ 】「うむ。それは今回の件でも分かった。相済まぬ」素直に頭を下げる 13:17【シュヴァルぺ】「ご配慮に感謝致します。ですが…エルオーネ様はお引き受けになられたのですね、仕事ではなく」 13:17         自身が快く。シュヴァルペもまた受け容れているようなので、不快に思う者が居るとは思わなかったが。よくよく考えれば、恥ずべき事であるという言。トマトの3人の反応といい、察するべき事はあったわけで 13:18【 トロイデ 】「うむ。従者としてでなく、友の苦しみを和らげるためならば良い、とな。我の初めての友となった」宝物を得た子供のように、顔を輝かせて 13:28【シュヴァルぺ】「友達ですか……それは、よき者を得られましたね。心よりお喜び差し上げます」その言葉に先ほどから心中に掛かる靄が少しだけ薄れて 13:29         少しだけ主に対して微笑む…… 13:31【 トロイデ 】「シュヴァルペも、喜んでくれるか!」ようやくほころんだ顔を、もっと近くで見たくて。体当たりのように、シュヴァルペの胸に飛びついて 13:33         シュヴァルペの顔は好きだ。あまり、表情を見せてはくれないが。笑顔と、喘ぐ顔は、とてもとても、魅力的で 13:34【シュヴァルぺ】「ええ勿論でございます、お嬢様に友ができる事を喜ばないはずが有りましょうか」トロイデを抱きとめて頭を撫でるそれは姉が妹にするに似た行為で 13:36         トロイデの成長を見る喜びと手を離れるような寂しさが同時に訪れて…それでも主に微笑む… 13:37【 トロイデ 】「うむっ!」目を細め、気持ち良さそうに撫でられ。それはやはり、歳相応の妹のようで 13:38【シュヴァルぺ】「では、今度ちゃんと紹介してくださいませ…お嬢様のお友達を」 13:40【 トロイデ 】「明日から働ける、と言っておったから。それからじゃな」それは無論と、大きく腕の中で頷く 13:41         2人の生活は、快い物であった。これが3人に増えれば、どれ程になるかと。期待に小さな胸を膨らませて 13:46           13:47         それは、浅はかで幼い夢でしかないけれど。その中の人物は、本当に楽しそうで 13:48         母、姉、妹。まるで、ひとつの家族を描いたように…… 13:49         今はもう、一人しか残っていない家族を。 13:49         いつか、幼子の想像のように。笑える日は来るのだろうか? 13:49         それは、誰もまだ、知らない