ジークと今までとは違う関係で一緒に居る事が多くなって……ただ一つだけ不満に思う事が有る長年…そう長年一緒に居た所為か彼女は中々…『様』と言うのを止めてはくれない無論彼女にとっては今までそれがとても自然なものだったのだから仕方ないとは思う…だからこれは単なる我侭 我侭を単に言い出すのも躊躇われて自分が必要としている形を現そうと考え……その結論がこの薄紫のドレス職人に頼む時には気恥ずかしい物があった……無論ジークと約束をしたときに比べれば他愛の無いものだが… 【ルフト】「気に入ってもらえれば良いのですが…」そんな自分が少し可笑しくて笑みを零す 【ルフト】「ジーク、居ますか?」軽くノックして彼女が部屋に居るのを確かめる……一寸した返事を待つのも楽しい時間… 【ジーク】「はい、ルフト様?」部屋の中から聞こえてくるのは彼女の声。ぱたぱた、と部屋の中を歩く音と共に扉が開かれ…顔を見せた。 【ルフト】「今よろしいですか?少しお話したいと思ったのですが?」軽く笑んで問いかける、作り笑顔出などではなく静かに自然な笑み 【ジーク】「…あ、はい。今は特にお仕事もありませんし。部屋で休んでいたところですから」いつもの侍女服とは違い、簡素な衣服に身を包んで。 【ルフト】「成る程…それは丁度良かった。しかし、良く似合ってますが…うん、そうですね少し中に失礼させてもらって良いですか?」 簡素な服さえ彩っている様に見えるのはきっと贔屓目なのだろうが……少しだけじっくり見つめ 【ジーク】「お部屋に、ですか? ええ…少し服を入れ替えたので――片付いていませんけれども。すぐにお片付けを致しますね」部屋に招き入れた後、急いでベッドにおいてあった服を片付けて。 【ルフト】「……ん…あまり私服姿は見ませんでしたが…」と片付けられて行く服を見て「気の回し過ぎでしたか、これは…ああこれは見た事が無い、きっとジークに似合うでしょうね」 【ジーク】「いえ、私服で居ることは基本的に部屋でだけですし…ルフト様と一緒に居るときは、こちらがありますしね。」と、何着か予備のある侍女服を抱え…棚へと歩いて 【ルフト】「ですが…着飾ったジークと言うのも見て見たいと思いますよ?」棚に歩む彼女についていくように動き「……それに僕は侍女としてだけでは無く必要としていますから」 【ジーク】「着飾った、ですか――? ですが、私にそのような服は…あまり似つかわしくは無いと思います。それならば、もっとお似合いになる方がいらっしゃいますよ」と、ルフトのほうを見て…微笑み返す。次の言葉には、嬉しそうに笑って 【ルフト】「そうかもしれませんが、僕が着飾った所を見たいのはジークなので」くすくすと笑いながら「ですから今日は策を弄してみました」と言って持って来た箱をジークに手渡す 【ジーク】「これは…?」と、箱を受け取り…ルフトのほうを見る。「私に、ですか…開けても、よろしいのですか?」 【ルフト】「勿論、ジーク以外の受け取り手は居ませんから。ええ開けて見て下さい。自信作だそうですよ、気に入って貰えれば良いのですが」 【ジーク】「はい――」と、ルフトに答え…箱を開く。中身は一体何なのだろう、と…楽しみに 少しだけ言葉が早まる…やはり彼女の反応を見るまで一寸落ち着かない それは彼女に一番に合うと思った色… 【ジーク】「これ、は…?」箱の中にあったドレスを取り出し――抱えて。ルフトのほうとドレスを交互に見る。 【ルフト】「是非ジークに着て欲しい。今までのだけでなく之からの意味を込めて…」薄く淡い紫色のドレス…この島で着るには不釣合いなぐらいの出来で 【ジーク】「ルフト様…いえ、ルフト――これは…?」薄紫のドレス。本土でもなかなかお目にかかることが出来ないほどの出来。思わず、ルフトを見つめて… 【ルフト】「…ずっと一緒に居てくれるのでしょう?なら一緒に歩こうと言う相手を着飾らせて自慢したいと言う気持ぐらい叶えさせて下さい…それに」 【ルフト】「侍女服のときのジークは中々『様』を取ってくれません。」少しだけ拗ねた風に 【ジーク】「ですが…それは、あの…私の癖のようなものですし――」拗ねてしまったルフトを見…きょと、とした表情を浮かべる。「ですけれど…少しだけお待ちください。着てみてもよろしいのでしたら…ここで、来てみます」 【ルフト】「冗談です、気長に待ちます。ジークがずっと待ってくれていた位には…」と微笑み直し「ええ、一番に見せてくれると嬉しいです」 【ルフト】「ああ…火を象った装飾品も入ってますから」と言って背を向け 【ルフト】「それでは待ってます、着終わったら呼んでください」部屋か出るためドアに向かう 【ジーク】「はい。あの…後ろさえ向いていれば…部屋から出なくてもいい、かと」ドレスを抱えたまま、ルフトに声をかけ…自らは上着に手をかけて 【ルフト】「ん…ああ…いえ…そうですか?」少しだけ考えてから「……それではお言葉に甘えます」ドアの前で立ち止まり目を瞑る…多少振り返りたい誘惑に駆られるが 【ジーク】「すぐに着替えますね――」聞こえるのは、服を脱ぐ衣擦れの音。振り返られても、自分はきっと怒らないだろうなと思いつつ…受け取ったドレスを着付けていく。 【ルフト】「……ああ、これは落ち着かないな。」小さく呟き首を振る…目を瞑ると余計に音に意識が集中して…それが何とも落ち着かない…後ろに居るのが誰かと思えば尚更で 【ジーク】「…でも、このような服を着れるとは思いませんでしたけれど…ルフト、ありがとう。」そう呟き…服を整え、髪を整えていく。「終わりましたよ、これで…いかがですか?」 【ルフト】「どういたしまして、ジーク。ですが………」言葉に答えながら振り返る 【ジーク】「どう、でしょうか…?」ドレスの裾を僅かに持ち上げ、ルフトに一礼を。 【ルフト】「…………」魅入って言葉につまり、掛けられた声に我を取り戻し「……ああ、うん…似合うとは思いましたが……」 【ルフト】「陳腐な言葉です申し訳ないですが……とても綺麗です…ええと…うん…こんな事ならもっと早くに贈って置くのでした」 【ジーク】「そう、ですか? あの…このような服は初めてで…少し、気恥ずかしいですよ。私は」 【ルフト】「ですが掛け値無しで似合ってます…見蕩れる位には……」掛け値なしの賞賛の溜息を付き 【ジーク】「…ありがとうございます。ですが、このような立派なドレスは…今、この島で作って平気だったのでしょうか? とても、嬉しい贈り物なのですけれども…」と、ルフトのほうへと歩む。すぐ傍に立ち、見上げて。 【ルフト】「心にゆとりは必要ですから…多少は我侭かとは思いはしましたが。ですが本当に駄目であれば作れはしませんよ」見上げてくるジークの顔を見つめる…それは掌中に収めた宝石のような輝きで 【ルフト】「ですからそれは気にする必要は有りません」無論払った対価は結構な額だがその事は億尾にも出さず 【ジーク】「そう、ですか…。ありがとう、ルフト――大切にしますね」自らの身体を軽く抱き…ルフトに笑顔を見せて。 【ルフト】「そう言ってもらえると嬉しいです。ですが忘れないでくださいジーク、僕が大切なのは君ですから」ジークの様子に嬉しそうに顔を綻ばせて 【ルフト】「……一番大切にして欲しいのは君自身です」 【ジーク】「…はい――」嬉しそうに微笑み、そのままルフトの腕に自らの腕を絡める。 【ルフト】「……まいりました、その顔は…うん、凄く素敵でした」絡められた腕に暖かな繋がりを感じ 【ジーク】「ルフト……ありがとう、本当に――」目を閉じ、彼の方へと寄り添う。温かな感触が、凄く…心地よくて。 【ルフト】「さっきからそればかりですよ、ジーク。感謝しても足りないのは此方なのに…」その言葉に微笑んで彼女に寄り添う、そうしてるだけで欠けた心が取り戻せそうな気がして 【ジーク】「嬉しいのは、変わりませんもの…本当に、ありがとう…」顔を上げ、ルフトの頬に口付ける。お礼を返せる、のは…自分ではこれくらいじゃないか、と思って。 【ルフト】「光栄ですジーク」頬に当たる柔らかな口付けに心は緩み「では今度ダンスにでも誘わねば」そう言ってお返しと手を取り其処に口付けて 【ルフト】「それとも今踊りましょうか?」 【ジーク】「…ダンス、ですか? 私にそのようなことが出来るとは思えないのですけれども…」見上げるような表情のまま、手への口付けに軽く目を閉じる。 【ルフト】「出来ますよ、僕でもできる位だから簡単です」手を取ったまま寄せて 【ルフト】「先ず足はこう…」充分とは言えない部屋の中、密着しながらジークを促し 【ジーク】「あ、はい」促されるまま、足を動かす。ルフトの足を踏まぬよう、気をつけながら 【ルフト】「少し楽しいですね…ジークには色々教えてもらった事が有りますが僕から教えるのは…中々良い経験です」ジークの動きをエスコートしながらゆっくりとした動きで「うん、そうです」 【ジーク】「…まさか、私がこのようなことをするとは思っていませんでした、し――」微笑みながら、ルフトの動きに少しずつ足運びをあわせていく。まだ多少ぎこちなさはあるものの…形にはなっていって。 【ルフト】「……それは僕も同じです。こんなに人が大切になるとは思っても見ませんでした」ぎこちなくとも少しずつ形に為って行く、それはまるで二人の関係を表しているようで 【ジーク】「ですが…ゆっくりと進んでいけるといいですね。ルフト」踊っていた足を止め、微笑み…ルフトへもう一度口付ける。頬ではなく、唇へと自分から。 【ルフト】「……ん。ええ、君が居てくれるなら」その不意打ちに止まり…そしてジーク言葉に頷いて 願いは、かなった。そして…これから、どうやって二人で歩んでいこうかと思う。前は、主を護るための剣であり、盾にと思っていた…けど、今は違う。共に歩むために…剣になり、盾になろうと。 【ジーク】「私も…ルフトが居てくれるなら」心からの笑顔をうかべたまま、そっとルフトの身体を抱き締める。 【ルフト】「愛してますよ」抱き締め返しながらこちらから口付けて 【ジーク】「私も、愛しています…」重なる唇。お互いの思いが交わり…一つになっていく。いつまでも、こうであって欲しいと…小さく願って。