【ジーク】「…ルフト、様――」小さく呟きつつ、主が身体を抱き締める。少しでも…安らいでもらえるようにと 【ルフト】「…ん、……」暫くして、うっすらと目を開けぼーっとする 【ジーク】「…っ! ル、ルフト様――」少し慌てたような声を上げ、主の様子を確かめる 【ルフト】「……ジーク……?」ぼーっと名前を呼んで 【ジーク】「…ルフト様、お目覚めですか? 今、タオルをお持ちします」立ち上がり、主のために行動をしようと 【ルフト】「おはようございます……」違和感を感じ自分の頬に手を当てる……そこにはまだ肩の感触が残り 【ジーク】「おはようございます、ルフト様――」少し熱のあるタオルを持って、主が傍に 【ルフト】「……ふむ…ありがとうジーク、迷惑をかけましたね」タオルを受取り寝ぼけた頭を軽くふる 【ジーク】「いいえ…お気になさらず。お疲れですか?」軽く頭を下げて、主に言葉を返す 【ルフト】「ええ少し……ですが…随分とゆったりできた気がします」軽く微笑みながら 【ルフト】「これもジークのお陰ですね、ありがとう」 【ジーク】「…いいえ、私は――何も」それでも、嬉しそうに笑顔を 【ルフト】「充分ですよ、ジークが傍に居てくれると落ち着きますから」その笑顔にうっかり頭を撫でそうになり留まる 【ルフト】(……流石に子供にする扱いですね、自重しましょう 【ジーク】「そうであれるなら、私は幸せです――」 【ルフト】「そうですか……なら僕もそう言う者に為りたいものです」 【ルフト】「如何すれば良いでしょう、悩みますね」ジークを視線に入れたままふむと考え込みながら 【ジーク】「ルフト様…? ルフト様は、ルフト様のままで…居ていただければ」 【ルフト】「人は変わるものです、良くも悪くも……ならば、良い方に変わりたいとは思いませんか?」 【ジーク】「…ええ、確かにそうですが。無理に変わって疲れてしまうようなら――」 【ルフト】「楽になるかもしれませんよ?ですが、ありがとうジーク心配してくれてるんですね」 【ジーク】「…ルフト様のことですから。ご心配はいけませんか?」 【ルフト】「心配してくれるのは心より感謝します……ですが心配はかけたくないですね、できれば笑ってくれる方が良い」 【ジーク】「…はい、ルフト様――」笑顔を、主に向ける。 【ルフト】「……ん…やはりジークには笑顔が似合いますね、良い笑顔です僕が言うんだから間違いありません」 【ジーク】「…あ、う。ルフト様――」面と向かって言われてしまうと、恥ずかしそうに頬を赤らめ 【ルフト】「ん……ええと…ジーク…そんなに照れられては…」むうと唸り 【ジーク】「あ、いえ…あの――嬉しいのです、ルフト様にそう言って頂けるのは…」 【ルフト】「そうですか…安心しました」そう言って微笑み 【ジーク】「はい、ですが…以前お伝えしたとおり。想いを寄せている人にそう言ってもらうと…嬉しいと同時に、どうしても恥ずかしさが…」頬を染めながら小さく俯いて 【ルフト】「……ジーク、一寸今の発言は……ええと…その…素直すぎて卑怯ですよ…そんな表情で言われては勝てません」俯いた頭を抱き寄せて 【ジーク】「ぁ…――」抱き寄せられ、微かに上がる慌てたような声 【ルフト】「……鼓動が聴こえて来そうですね」ジークからは見えないが此方も頬を赤らめ 【ジーク】「…はい、ルフト様――」実際、心臓は相当跳ね上がっている。こんな風に抱き締めてもらったことなど…ほとんどなくって 【ルフト】「……好意も伝えてないのに卑怯なのかもしれません」抱き寄せる手は言葉とは裏腹に離し難くジークを包む 【ジーク】「…いいえ、それはルフト様が気にすることでは――」優しい手。抱き締められた身体は、少しルフトに寄り添うような形になって 【ルフト】「…いいえ、答えたいと思うから気にはします……」だが家族と思ってきた彼女への思いが男女のそれか…それになるのか…真剣な眼差しで告げてくれたジークにできればその気持ちを確かなものとして答えたい為…… 【ジーク】「……あ、はい…」想いは、伝えて欲しい。けれど…そこまでは高望みであると思う。だから、それ以上は何も言えず―― 【ルフト】「……優しいですねジークは…本来なら責めるべき立場でしょうに」腕より伝わる暖かさが自分の心にも流れ込めば良いのにと思いつつ 【ジーク】「…ルフト様…」そっと、主の表情を見ようと顔の角度を変え 【ルフト】「…なんでしょうジーク?」寸前まで唯一つの感情のみを抜かした顔で悩み 【ジーク】「いいえ、ルフト様…これからも、お傍に」主の手を取り、握る 【ジーク】(私の想いは…私が秘めておけば、ルフト様も悩むことはなかったのかもしれません―― 【ルフト】「……ありがとう、ジーク」素直に出る言葉だけでそう答える…偽りはなくただ心より出る言葉 【ジーク】「…あ――はい…」その言葉が、心に染み渡る…もう少しだけ、ルフトのほうへ身体を預け…寄り掛かって。 【ルフト】「……」寄りかかるその背が肩がとても愛しく感じられ…抱きしめる手に自然力が入る 【ジーク】「少し、お願いがあります…ルフト様、もう少し…このまま、抱き締めて――ください」自分の顔は今、どうなっているのだろう。真っ赤になっているのだろうなと思う。恥ずかしいこと、主に願う事ではないと思うが… 【ルフト】「ええ、ジークが望むなら喜んで…こうしてるのは嫌いではありませんから」そっと髪に手をやりつつ 【ジーク】「あ、ルフト様…ぁっ――」思わず、ヘッドドレスを外し…そのまま髪を撫でられる。 【ルフト】「ん……綺麗ですよ、とても」手の中を流れる髪もそしてそれを持つジークもと心の中で付け加えつつ 【ジーク】「…ぁ、ぅ。ルフト様――」髪を撫でられて行くたびに…力が少しずつ抜けて行く。眉根が下がり、身体が…しなだれかかる 【ルフト】「ジーク……」その様子に心は跳ね、自制心は脆く崩れる…そして目に映るのは何時もに増して真近にある唇…… 【ルフト】「ぁ……」それを自然と奪うと…自分の行為に驚いた声を出す 【ジーク】「ぁ――」重なる唇…ただでさえ高鳴っていた鼓動がまた、跳ねた 【ジーク】「ルフト、様…?」潤んだ瞳のまま、主を見上げる。恥ずかしさと嬉しさで、顔は耳の先まで真っ赤に染まって―― 【ルフト】「ジーク……」啄ばむ様に何度か唇を合わせてから…彼女の名前を呼ぶ 【ジーク】「は、い…ルフト、様――」重なる唇に意識が蕩けそうになりながらも、答えて 【ルフト】「僕にはやはり、君が必要です…ジーク…君からの申し出ではなく僕からお願いします…傍に居てください…」 【ジーク】「…はい、ルフト様――ルフト様から、必要とされなくなるその時まで…私は、お傍に。お仕えします…至らないところばかり、ですが――主従の関係を超えてしまうような、至らぬ従者ですが…」目を閉じ、ルフトに寄り添う。言葉ではそう言っていても… 【ルフト】「それは違います、ジーク。主従の気持ちを越えなくて……どうして君を此処まで愛しく感じる事が…」 【ジーク】「ルフト様……私は――やはり、ルフト様を愛しています。以前もお伝えしましたが…私は、ルフト様を――」抱き締められた腕の中、少しだけ体勢を変える。ルフトの胸元に、自らの耳を当てるような形になって 【ルフト】「ええ…僕は難しく考えていたのかも知れませんね…答えは何時も単純な筈なのに…受け入れてくれている事さえ理由にして……」当たる胸より聴こえる鼓動は…同じような高鳴りを伝え 【ジーク】「ルフト様…珍しい、ですね――。鼓動が…早くなって、おられます」目を閉じ、身体を預ける。いつもの侍女としての彼女ではなく…一人の女性として、今は… 【ルフト】「ジークリット、その理由は多分…」目を閉じ…静かに一息飲む… 【ルフト】「僕が君を愛しているからです」 【ジーク】「っ…ルフト様…」ずっと、その言葉を聞きたいと願った。ずっと…その想いが自分に向いたらと願っていた。その願いは…今、この場で叶った―― 【ルフト】「受け入れて頂けますか?」自分がこうやって恋を告げるなど…想像すらしてなかった…だがそれが…そんな人間らしい行為が出来るのは…この腕に収まっている彼女のお陰で… 【ジーク】「……」涙が自然と溢れてくる。止めようと思っても、感極まってしまい…一筋、その涙が頬を伝う)…はい、ルフト様――(その腕の中で、涙を拭い。精一杯の笑顔を浮かべる 【ルフト】「……やはり…ジークには笑顔が似合います」その涙の跡に指をやると再び口付けて 【ジーク】「ん――」重なる唇。叶う想い…幾年の時を経たのだろうか。心が安らぎ、埋まっていく感覚が…心地よく 二人の口付けを見つめるのは、月と、星――それは。どこか、二人を祝福するかのように瞬いていた。