ウェントシーデン家に居た時も…こちらに来てからも――部屋で日記を書く主のためにお茶を用意する…普段の日課まで変わるようなことはなかった。 コンコンとひかやめにノックをし――主の返事を待つ。 【ジーク】「ルフト様、お茶をお届けに参りました。失礼してもよろしいでしょうか?」 【ルフト】「誰ですか?・・・ああ、どうぞ」ノックに応じつつこの孤島に来て2冊目の日記帳を閉じる書いてることは事務的なことばかりで本当に自分らしいとは思うのだが… 【ルフト】「お疲れ様でした、探索に出たばかりなのですから休んでいて良いのですよ?」そう言って向かい入れる 1【ジーク】「…いえ、私の仕事はこちらの方であると考えていますから――それに、自分の身体は自分で管理致します」ルフトの机にカップを置いて――主に返事を返す。 【ルフト】「そうですか…ジークには何時も迷惑ばかりかけます」独自に探索に赴くことを伝えられた時の驚きがまだ残っているのか、彼女の言葉に頼もしさを覚える反面少々不安にもなる 【ルフト】「無理はしてませんか?」だからこそ二度も似た問いを返す 【ジーク】「…いえ、ルフト様の…皆様のために私に出来る事があるから――助けになろうと思ったまでで。無理はしていないです、今のところは」心配してもらっている、と言うのがわかる。そうでなくても、ただでさえ優しい方なのだから 【ジーク】「このような状況では…人手を遊ばせておくわけにはいきませんでしょうから――少しでも、皆様の助けに。ルフト様もそうおっしゃっているではありませんか」笑顔を見せながら、言葉を伝える。 【ルフト】「愚問でした…ね。ですが困ったらちゃんと僕を頼ってください。僕が困ったらちゃんとジークを頼りますから」安心しましたと囁いて、お茶に口を付ける…彼女が入れた物であるのだから問題ないのは判っているのだが習慣から舌で十分に味わってからゆっくり飲む 【ルフト】「…しかし此処に来てまでこのお茶が飲めるとは思ってみませんでした」それは癖であり…遠い昔の痕でもある 【ジーク】「…畏まりました」主と従の関係であるはずなのに、こんな言葉がもらえるのも珍しいのだろうか――小さく息を吐いて「そうでしょうか…? 残っていた荷物の中に茶葉があったのは幸いでしたが――そのおかげで、このお茶をおだし出来るわけですし」」 【ルフト】「……?ああ違いますよジーク、君が入れてくれると言う事がです。茶葉だけが味を決めるものではないでしょう?」 【ルフト】「この探索に参加する事になって心残りはそれ位だったのですが…」そう言って再度飲む…その温かみが口一杯に広がる 【ジーク】「…ああ、そういうことでしたか。ルフト様がそうお決めになった時から…着いて行くつもりではいましたけれども」くすり、と笑って。 【ルフト】「そんなに頼り無さそうに見えましたか?」その笑みに軽く笑みで返し 【ジーク】「いいえ、そういう訳ではありませんよ」本当の理由は、昔から抱いている想い。伝えてはならないと心に決めている想い――もう、何度も隠してきた事で慣れてしまって「私はルフト様の従者ですから――と言う理由では、ダメでしょうか?」僅かに首をかしげながら、答える 【ルフト】「いえジークの出した答えがそうであるなら僕は何も言いません……しかし、その心根に応えられる人間で居続けたい物です」それは…怒りと言う感情を忘れてしまった自分には難しい事なのかもしれないが 【ジーク】「ルフト様はこれからもそういう人であると信じています――」後の言葉は、やはり秘めるべきであろうと思うもの…ルフト様の失ってしまった感情は、私で補えればいいのですがと――心の中で思う。 【ルフト】「ならやはり頑張らないといけませんね、期待には応えるべきですから」この思いに全く気が付かず、言葉に頷いて返す 【ジーク】「……ルフト様も、その頑張りが無理になりませぬように」 【ルフト】「大丈夫です無理をした覚えは一度もありませんよ、『無理は祟るし不慣れはするものじゃない、程よい加減で行け』と良く祖父も言ってましたしね」 【ジーク】「――そうでしたわね。出過ぎた事を申してしまいました」ぺこり、と頭を下げる 【ルフト】「では、僕も出過ぎた真似をしましょう…ジーク手を」 【ジーク】「…ルフト様?」言われるがままに、利き手である左手を差し出す。 【ルフト】「君はお金は受取ってくれませんから、せめて之を受取ってください…本当はもっと良い物が有るのでしょうが」 【ルフト】「先日も之のお陰で命拾いをしました、縁起物ですよ」そう言って自分が付けていた魔力の篭った指輪をジークリットの手の平に乗せる 【ジーク】「…あ」一瞬だけ惚けたような目でルフトの方を見て…すぐに普段の表情に戻る、それでも嬉しさは隠しようが無く――「ありがとうございます、ルフト様…大切にさせて頂きます」 【ルフト】「大事にして欲しいのはジーク自身なんですけどね」その応えに少し困ったような笑みを浮かべて 【ジーク】「私は大丈夫です――絶対とは言えませんけれども」ぎゅ、っと指輪を胸元で握って。 【ルフト】「そうですね……」孤島はそう言う場所なのだ…渡した指輪はそれに対するささやかな反抗 【ルフト】「手の届く範囲位は護りたい物です」そう…ジークにも聞こえない位の声で呟く 【ジーク】「ありがとうございました――それでは、もう夜も遅いですので…失礼します。ごゆっくりお休みくださいませ」カップを下げ…部屋を後にする。 【ルフト】「おやすみなさいジーク、明日が君にとって今日より良い日でありますように」 7/12 喧騒は遠く―――― 忙しい筈であろう拠点でぼんやりと横になると言う行為は何所か苦痛で―――自分が身を置くその場が随分遠くに感じる それはまるで何所へも行けない『行き止まり』に落ち込んだ様に心に積もり、病んだ体と心を蝕む 【ルフト】「はぁ……」体に篭った熱と一緒にその痛みを吐き出すかのような吐息を吐く。どうやら随分と長い間魘されていたらしくとうの昔に日は中天に昇り…… 【ジーク】「ルフト様、身体の調子はいかがですか? 随分とうなされていたようですけど――」大き目の桶に氷水を張り、潜らせた布を額の上に乗せ――幾度となく繰り返した行為ではあるものの、主への不安な表情は隠せずに。 【ルフト】「そうですね……けほっけほッ!」大丈夫と言おうとした所で迂闊にも咳き込む……正直昔から風邪は苦手なのだ 【ジーク】「主様――」その身体を支え、背中をそっと摩る。心配そうな表情のまま、傍にあった水差しからコップに水を注いで手渡して「水分をしっかりと取って、今はお休みになってくださいませ。ご自愛を」 【ルフト】「ありがとう……っ…ジークも今日は仕事があったでしょうに」ふらりと揺れる手で水を受け取る、その刹那触れた指先の温度が少し心地良い 【ルフト】「……ふぅ」飲んだ水が体に広がっていく感覚に一息付く 【ジーク】「仕事は後でも出来ますが…ルフト様の看病は今の私の重大な問題ですから。ゆっくりと、数日は安静にしてくださいませ」 【ジーク】「その間は私の方で、ルフト様の分まで極力働く事に致します――」 【ルフト】「そうですか?……そうですね、一人だと……取り残された感じがしましたから……そう言ってくれると実は助かります」そう言って何度目かの溜息を付く 【ルフト】「いえ、それは体が治ったら僕が……今は傍に居てください」子供っぽいですよねと笑いつつ 【ジーク】「…不安になる時は誰にでもあるものだと思いますけれど。畏まりました…それをルフト様が望むのであれば――」それをルフト様が望まずとも、お傍に。と言う本心は封じて、答える。主の笑いに、こちらも笑顔を見せて。 【ルフト】「ありがとうジーク」体は熱く重く枷の様に感じるが、その笑顔で少し心が楽になる 【ルフト】「……迷惑序に一つお願いをして宜しいですか?」 【ジーク】「いいえ、お気になさらないで下さいませ――ルフト様」ベッドの傍に置かれた椅子に座りなおして、主の様子を見つつ「出来るなら、もうしばらくお休みになってください。魘されていたなら…はい、なんでしょう?」お願い、と言う言葉に首を傾げて。 【ルフト】「少しの間手を握っていて貰えますか?」流石にこの言葉を出すのは気恥ずかしく…視線を合わせぬようにベッドに沈み込む 【ジーク】「……私などでよろしければ――はい」その言葉にうっすらと頬を染めつつ…そっと、ルフトの手に自らの両手を重ねる。 【ルフト】「こんなことを頼めるのはジークしか居ませんよ……いけませんね、唯でさえ僕は心が弱いというのに」熱に魘された頭はその頬を染める意味に気が付かず……包みこむ両手からジーク存在を感じ取る 【ジーク】「…ルフト様。そう思われるのならお休みになってください――身体を休め、心も」軽く目を閉じ、自分の心を必死に平静に保って 【ルフト】「こんな時ばかり頼ってしまっては……」それでもその手は離しがたく繋がる手に力をこめる 【ジーク】「いえ…こういうときだからこそ、頼ってくださいませ。一人でどうにも出来ない時にこそ…です」 【ルフト】「ふう……そうですね……ありがとうジーク」咳き込みながら目を閉じる少しでも安心させるかのように 何時の間にか……瞼裏の暗闇の痛みは失せ 静かに意識は闇の中に沈んでいく 【ジーク】「ルフト様…」そ、っとその手を離し…氷水に浸したタオルを絞り、額に乗せた後――また、手を重ねる。少しでも、安心して欲しいと思い。 【ルフト】「………………」子供のような笑みを一瞬だけ浮かべ静かに眠りに付く 【ジーク】「ルフト様が無事で居てくださる事が、私にとって一番の報酬ですから――」優しい笑顔を、自らの主に向けて。優しく重ねた手を少しだけ握りしめ。